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7話 怖い言葉と「ごめんね」さん

夜、みんなが寝静まった頃。言霊園の空気が、これまでにないほど冷たく張り詰めました。


いつもとは様子の違う、地響きのような激しい声が降り注ぎます。


『なんで、そんなこと言うのよ!』


『君が、俺だってやってるのにそんな言い方するからだろ!』


外の世界からパパとママの言葉が、

黒い影のような「顔の見えない言葉たち」となって園に押し寄せてきました。


影たちは荒々しく園の扉や窓をガタガタと叩き、激しく音を立てます。


ひなたくんが不安そうに目を覚まし、おっぱいちゃんもあーうーくんも、震えながら部屋の隅へ隠れました。

外にいた猫も部屋に入ってきて、影たちを「シャー!」と威嚇します。


「大丈夫だよ! 怖くない、怖くない……」


コトハおねえさんが、泣き出しそうなみんなを必死に抱き寄せます。


「僕たちがついているよ。きっと、すぐにいなくなるから……!」


ゲンジおにいさんも皆の前に立ち、影からひなたくんを遮るように守りました。


さらに影たちの叩く音が大きくなった、その時です。


震えていたオギャーくんが、すっ……とゲンジおにいさんの前に出ました。


そして、顔の見えない言葉たちに向かって、今までで一番大きな声で叫びました。


「オギャーーー!! オギャーーー!!!」


地を這うような影たちを吹き飛ばすような、必死な叫びです。


『……っ!?』


影たちはその純粋な響きに驚いたようにひるみ、霧が晴れるようにスッと消えていきました。


園が静寂を取り戻した直後、街の向こうから慌てて駆け込んできた人がいます。


しっとりと柔らかな水色のベールをまとった「ごめんね」さんです。


『ひなた、ごめんね。起こしちゃったね……!』


空から降ってくる声は、もう刺々しくありません。


「ごめんね」さんは、怯えていた言葉たちを一人ずつ優しく抱きしめて回ります。


『……言い過ぎたよ、ママ。ごめん。』


『私こそ……ごめんなさい。……ひなたも、怖がらせちゃったね…ごめんね』


パパとママのお互いへの「ごめんね」が、園内に温かい光となって満ちていきます。


その光に包まれながら、「ごめんね」さんはひなたくんのそばに寄り添いました。


「……もう、大丈夫だね」


ゲンジおにいさんが、安堵して肩の力を抜きます。


「オギャーくん、ありがとう。」


コトハおねえさんが優しく頭を撫でると、オギャーくんは照れくさそうに笑いました。


おねえさん、おにいさん、そして「ごめんね」さんに抱かれながら、言霊園にまた穏やかな夜が訪れました。

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