5話 涙と幸せの「まんま」ちゃん
しんと静まりかえった夜の言霊園。
その静寂を破るように、オギャーくんが火がついたような声を上げ、ひなたくんも一緒に泣き出しました。
「あらあら、どうしたの? 怖い夢でも見ちゃったかしら」
コトハおねえさんが、ひなたくんを優しく抱き上げます。
「きっと、お腹が空いたんだね」
ゲンジおにいさんが時計を見上げていると、園に泊まっているおっぱいちゃんが、パジャマ姿で飛び出してきました。
「私の出番ね! 任せて!」
その時、空から眠りから覚めたばかりの、ママの少し掠れた声が降ってきました。
『……ひなた、お腹空いたの? はいはい、おっぱいですよ……』
ひなたくんはママの温もりを感じながら、涙で顔を濡らし、小さな唇を震わせてポツリと言いました。
「……まんま!」
その瞬間、真っ暗だった園の空から、温かくてキラキラした「涙の雨」が降り注ぎました。
『……っ! ひなた、今、ママって言ったの? ……そうだよ、ママだよ。ひなたのママだよ……』
ママの涙と、ひなたくんの涙。二つの涙が重なり、光り輝く水溜まりの中から、おっとりとした女の子がゆっくりと立ち上がりました。
「まんま……」
ご飯も、ママも大好きな、「まんま」ちゃんです。
「よかったね、ひなたくん。ママにちゃんと届いたわよ」
コトハおねえさんの胸の中で、ひなたくんは安心したように小さく息を吐きました。
おっぱいちゃんがひなたくんとオギャーくんの頭を優しくなでなですると、その心地よさに誘われて、ひなたくんは幸せそうに深い眠りへと落ちていきました。
まんまちゃんも、静かに眠るひなたくんの横で、温もりを感じながら眠りました。
言霊園に、またひとつ、心と心をつなぐ言葉が生まれました。




