1話 はじめての友達「オギャー」くん
ここは、心のなかの小さな幼稚園、言霊園。
外の世界はまだ深い闇に包まれていて、園にいるのは「ひなた」ただ一人です。
けれど、ひなたはちっとも寂しくありません。
優しく見守るコトハおねえさんと、頼もしいゲンジおにいさんがそばにいます。
そして何より、姿は見えなくても、あたたかな「音の光」たちが空から降り注いでいたからです。
『ひなた、早く会いたいな……』
『待ってるぞ、ひなた。おっ!今お腹を蹴った!』
ママとパパの愛おしそうな声。
その響きが届くたび、ひなたの胸の奥がぽかぽかと温かくなるのでした。
そんなある日のことです。
静かだった言霊園が、地響きのような大きな揺れに包まれました。
「おっと、始まったみたいだね!」
ゲンジおにいさんが、ひなたの肩をしっかりと支えます。
「見て、ゲンジおにいさん! 外の世界が……!」
コトハおねえさんが指差す先で、真っ暗だった闇がまばゆい光に切り裂かれました。
光の向こうには、いろんな言葉たちが暮らす広大な「街」が、産声とともに姿を現したのです。
あまりの眩しさと、外の世界の冷たい空気に驚いて、ひなたが大きく口を開けました。
「オギャー! オギャー!」
力強い声が園内に響き渡った瞬間――。
ひなたの足元で光がポンッとはじけ、元気いっぱいの男の子が飛び出してきました。
「オギャー! オギャー!」
赤い顔をして、精一杯の力で泣き叫ぶその子の名前は、「オギャー」くん。
言霊園に、初めてやってきたお友達。
「ようこそ、言霊園へ! オギャーくん」
コトハおねえさんが、生まれたての小さな彼を優しく抱き上げました。
「すっごい大きな声!元気な男の子ね!」
「ははは、これから賑やかになりそうだ」
ゲンジおにいさんも、眩しそうに目を細めて微笑みます。
その時、空からひときわ大きな涙とともに、幸せそうな声が降ってきました。
『生まれてきてくれて、ありがとう。ひなた』




