10話 元気に手を振る「バイバイ」ちゃん
言霊園には毎日、色んな言葉がやってきます。
毎日欠かさず顔を出す馴染みの言葉もいれば、たまにしか来ない特別な言葉もいます。
ここ数日は、街から「ばあば」さんと「じいじ」さんがずっと遊びに来て、ひなたくんを一生懸命にあやしていました。
「ばあばさんとじいじさんは、本当にひなたくんのことが大好きなのね」
コトハおねえさんが微笑みます。
「たまにしか来られないから、
きっと少しでも一緒にいられるように、
張り切ってくれてるんだね」
ゲンジおにいさんも、賑やかな園の様子を温かく見守っていました。
そこへ、空からママの優しい声が降ってきました。
『ひなたー。そろそろおばあちゃんとおじいちゃん帰るって。二人にバイバイして』
ひなたくんはその声を聞いて、ほんの少しだけ考えた後、パッと顔を輝かせました。
「バイバイ!」
その瞬間、ひなたくんの笑顔からひらひらと光の蝶が舞い出し、元気な女の子が生まれました。
水玉模様のワンピースを着た、「バイバイ」ちゃんです。
ひなたくんとバイバイちゃんは、街へと帰っていく二人に向かって、ちぎれるほど大きく手を振りました。
「バイバイ! バイバーイ!」
「……しばらく、ばあばさんとじいじさんには会えないわね。なんだか私の方が寂しくなっちゃったわ」
コトハおねえさんが少し切なそうに呟くと、ゲンジおにいさんは笑って首を振りました。
「大丈夫。今のこの子たちにとって、バイバイは悲しい別れの挨拶じゃないんだ。また会えるって思ってるからね」
その言葉通り、次の日の朝。空からパパの元気な声が響きました。
『ひなたー! パパ、お仕事行ってくるからねー!』
ひなたくんとバイバイちゃんは、声のする方へ向かって、昨日と同じ満面の笑みで大きく手を振りました。
「バイバーイ!」
だって、パパは夜にはまた会えるから。
「バイバイ」は、しばらく会えなくなっても、顔を見たら嬉しくなれる魔法の言葉。




