プロローグ はじまりの光「ひなた」
そこは、まだ何の色もついていない、静かな、真っ暗な世界。
その中心に、ぽつんと灯りがともる小さな建物がありました。
「さあ、ゲンジおにいさん。これからやってくる子たちのために、園内をピカピカにしておかないと!」
コトハおねえさんが、パタパタと楽しそうに箒を動かします。
「わかっているよ、コトハおねえさん。言葉たちは繊細だからね。」
ゲンジおにいさんも、真面目な顔で窓を拭きあげていました。
その時でした。
何もないはずの空から、あたたかな「音」が降ってきました。
『あなた。私、この子の名前……考えたの』
ふたりの手が止まります。それは、外の世界から届いた、優しいママの声。
『ははは、ちょっと気が早いんじゃないかな?』
今度は、少し照れたようなパパの声。
園全体が、その幸せな響きに包まれて、淡い桃色に染まっていきます。
『いいじゃない。この子の名前はね……』
――「ひなた」――
その瞬間、おねえさんとおにいさんの目の前に、まばゆい光の粒が集まりました。
光は優しく弾け、そこには、まだ何も知らない、無垢な瞳をしたひとりの子が立っていました。
「ようこそ、言霊園へ!」
コトハおねえさんが、こぼれるような笑顔で駆け寄ります。
「ひなた、くんかな? ちゃんかな? どっちにしても、とっても素敵な名前ね!」
「……ああ、本当に。いい響きだ」
ゲンジおにいさんが、そっと「ひなた」を抱き上げました。
ひなたはまだ、声は出せません。けれど、おにいさんの腕の中で、嬉しそうに小さな手を動かしました。
「これから忙しくなるわよ、ゲンジおにいさん!」
「そうだね。園がたくさんの言葉で満たされるように。」
ここは、言葉たちが集い、育ち、旅立つ場所。
言霊園。
不定期更新。最後は決めてます。




