第11話 思い出せない約束
少年は、森に通うようになった。
理由は分からない。
だが、足が向く。
剣を振り、
木陰で休み、
時折、涙が出る。
「……変ですよね」
彼は笑う。
「あなたの前だと、
泣きたくなる」
メリーナは、答えない。
教えない。
思い出させない。
(選ぶのは、あなた)
それが、彼女の覚悟だった。
森の奥。
最初に出会った場所。
「……俺」
青年は、立ち止まった。
「ここで、
誰かを待っていた気がする」
メリーナは、一歩前に出る。
「それは、過去です」
「それでも」
青年は、震える声で言う。
「あなたを見ていると、
胸が、苦しくて……」
メリーナは、彼の手を取った。
「それで、いいのです」
青年の目から、涙が溢れる。
「……それでも、
あなたは俺を?」
迷いはなかった。
「はい」
静かに、確かに。
「私は、
あなたが誰であっても、
何度生まれ変わっても――」
森が、風を送る。
「あなたを愛すると、
もう決めているのです」
青年は、泣きながら笑った。
「……名前を、教えてください」
「メリーナです」
「俺は……」
一瞬、空を見上げる。
「ダニエル、だった気がします」
その瞬間、
森がざわめいた。
メリーナは、初めて涙を流した。
-エピローグ-
森は、奇跡を起こさない。
ただ、選び続ける者を、見守るだけだ。
エルフの王女と、
幾度生まれ変わる騎士。
永遠ではない。
だからこそ。
この愛は、
何度でも、始まる
-完-




