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第10話 森に残された者


年月が流れた。


人々は世代を重ね、

城の顔ぶれも変わった。


だが、森の奥で

王女メリーナは一人、歩き続けていた。


祈らなかった。

奇跡も、願わなかった。


(会えなくても、いい)


それが、彼女の答えだった。


愛した時間は、確かにあった。

それで十分だった。


――はず、だった。


ある日、森の入口で

一人の少年が転んでいた。


「……すみません」


十五歳ほど。

簡素な装備。

Fランク冒険者。


「大丈夫ですか?」


手を差し伸べた瞬間、

メリーナの胸が、あの日と同じ音を立てた。


(……まさか)


少年は顔を上げる。


その瞳。


「……あ」


理由はない。

確信もない。


それでも。


(同じだ)


名前を聞くと、

少年は首を振った。


「覚えていません。

 ただ……剣を握ると、

 胸が落ち着くんです」


メリーナは、何も言わなかった。



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