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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

未定

作者: はいぼーる
掲載日:2026/01/21

全12章くらいで書こうと思ってる小説の1部です。途中なのですが、評価をお願い致します。

プロローグ 陽炎

 九月というのにいまだに暑い。地球温暖化の影響だろうか。アスファルトのうえは未だ陽炎が揺れている。


「あの、高井先輩、、、」


 名を呼ばれ振り返る。だが、振り返る前から誰が呼んだかわかる。この呼ばれ方をするときにはいつも彼女がいる。

 緑川 真美は高井 海の生徒会の後輩である。真美はスカートの端を握りしめ、視線は少し下がっていた。いつもは少し上を見てやっと目が合うのに。

 うなじが隠れるほどの長い髪が風で揺れ、そして止まる。真美は普段と違って見えた。


 「どうしたの?生徒会のこと?それとも勉強のこと?」


 海は予測して真美に聞く。


 「好きです。私と付き合ってください。」


 海はあっけに取られる。真美と目があう。

 陽炎はまだ揺れているのに時間は止まっていた。


 好き。

 その二文字は小魚の骨のようであった。海はその言葉と関わらないと思っていた。


「急なのは承知の上です。夏休み前に言おうと思ってたんですけど、えっと、ずっと言えなくて。先輩が優しいとかかっこいいとか、あ、えっと、つまり先輩としてとかじゃなくて_ちゃんと、恋です。」


 一方的だった。だが、不思議と嫌じゃなかった。真美は照れていたが、海を見つめる目は真っ直ぐで揺れは一切なかった。真美は自分の気持ちを、そのまま差し出している。


 _どうして、私は。

その問いが喉の奥に刺さっている。

 嬉しい、のかもしれない。

 嫌では、なかった。

 だが、かつての一言が頭をよぎる。


「_少し、考えてもいいかな。」


 そう絞り出すと、真美の視線はわずかに下がるが、またすぐに目が合った。


「はい。待ちます。」


 笑っていた。即答だった。そのことが,海の心の碇をより深く沈めさせた。

 __優しい人にならねばいけない。

 __包んだものが溢れてしまうから。

 真美は頭を下げ,「失礼します」と言って走り去っていった。

 気づけば陽炎はもう揺れていなかった。


第一章 街


 1人廊下に取り残された。海は、子供がおもちゃを隠しただけで片付けた気になるように、さっきの出来事を心で包み隠した。


 「今日は少し遅かったわね。」


 一年生のころから,玄関の横にある自動販売機は海達が帰る前に集まる場所となっている。そこにいる少女,綾式 れいは海の小学校からの幼馴染である。

そんな零は少しだけ不機嫌そうだ。


「ごめんごめん。真美ちゃんが話したいって。__遥は?」


 桃谷 遥は海と零の高校一年からの親友である。


 「あいつなら助っ人としてバスケ部に行ってるわ。やりたいことはやらなくちゃ損だとか抜かしていたわ。これだから馬鹿なのよ、あいつは。」


 零と遥は馬が合わないのか犬猿の仲である。


「相変わらずだね、遥は。運動ならなんでもできちゃうよね。いつも全力で,自分に正直で。」


 いつの日か優しくなると決め少女には輝かしかった。包み隠していたものが、少しだけその輝きを欲した。


「待たせちゃったし何か買うよ。何飲む?」


 夕日はだんだんと沈んできている。海は少し散らかったかばんを漁り財布をとり出す。

 零は慣れたように答える。


「いつもので。」


 零が答えた頃には海は買い終えていた。海の手には無糖のブラックコーヒーと水とサイダーがあった。零はコーヒーを受け取る。


「ありがとう。それより緑川さんとは何を話したの?」


 妙な間があく。海が視線を逸らす。だが、それた視線はすぐに戻る。


 「告白されたの_真美ちゃんに。」


 ゴト、っと落ちる。コーヒーが地面を濡らす。零はどこも見ていない。缶を拾うが上下は逆だった。


「って、零?コーヒーこぼれてる。」


 零は冷たくなったかのようにかたまった。海は不安そうだが、目からは信頼が伝わる。


 「何でも無いわ。海から恋愛の話なんて、初めてだから。恋愛のことはあいつがきてから話しましょう。そろそろ来るころよ。残念ながら。」


 零は静かに、少し気だるげに答えた。零の手には、コーヒーの冷たさが、もはや熱く感じた。


 「そうだね。遥ちょっと前まで彼氏いたし。」


 海が答えると横から声が聞こえた。


 「おーい。海ちぃー、零しゃーん。」


 そこには走ってこちらに向かってくる遥がいた。


 「遥ー、お疲れ。_ほいっ。」


 海は手に残っていたサイダーを遥になげた。「チッ」と零は嫌な顔をしている。


 「とっとっと、しょっ。投げないでよー、炭酸抜けるよー。」


 遥はサイダーを受け取る。三人は校門を抜け帰路へ向かう。遥は駅から、家が隣同士の海と零はそこから、徒歩で通学している。

 

「相変わらずやっさしいなー。助っ人きてよー。いつもなんでも手伝ってくれるじゃーん。」


 遥は海に抱きついてそういった。


 「ごめんねー、運動だけは苦手なの。知ってるでしょ。」


 「えーーーー、ざーんねん。」


 「毎度毎度あなたは。それよりあだ名で呼ばないでっていってるわよね、そして早く海から離れて。」

 

 零の目には殺意に近いものがこもっている。気づけば海は苦笑いしながら口を開いた。


 「遥に聞きたいんだけどさ、実は告白されてさ。それで_」


 「えーーー。海ちぃがー。」


 「落ち着きなさい。」


 海の話を聞かずに、驚く遥はおよそ高校生とは思えない。遥を宥める零は親のようだ。

 遥は落ち着かないまま海に聞く。


 「誰に告白されたの?オッケーするの?」


 「真美ちゃんに、、それで_」


 「わー、先輩と後輩同士の禁断の恋だー。」


「黙りなさい。」


 再び騒ぐ遥の頭を零が軽く叩く。遥は「いてて」と頭をさする。タイミングをうかがっていた海が口を開く。

 

「それでね、真美ちゃんを傷つけないようにしたくて、遥に色々聞きたくて。」


 「なるほどねー。海ちぃはその子のことどー思ってるの?女の子同士だけど。」


 その問いは唐突だった。いや、少し考えれば予測できた。だが、相手が女の子である_そのことが海の頭に強く当たった。何かがくすんだ。

 どう思っているか、真美のことは好きだ。でもそれは、恋ではない。恋をしたことはないが、そのことは分かった。

 一年半ほど通った道なのに、知らない街を歩いていた。空は暗く、見覚えのない自動販売機がたっていた。心の碇はさらに沈んだ。


 「女の子同士だからだなんて、そんなことは関係ないわ。愛の前では。」


 雫が落ちたようだった。零の言葉は鋭かった。零の頭にかつての光景が広がる。



 「どうして、どうしてだめなの。」


 あの時、弱々しく、ただひたすらに泣いていた少女は見当たらない_いや、包み隠されていた。

 

 零の言葉は海に向けられていたが、海は知らない道を歩いている。お構いなしに遥の口は開く。


 「一回付き合ってみれば。そっちの方が手っ取り早いよ。」


 「いいえ。だめよ。軽すぎるわ。」


 遥の言葉は即座に零に否定された。

 

 「軽いっていうのは分かってるよ。付き合った方がもっと相手のことを知れるじゃん。」


 「幼稚な考えね。」


 遥と零はお互いの意見を言い合っている。だが、海の鼓膜は揺れていない。海はまだ知らない街を歩いている。

 気づけば遥と別れる交差点まできていた。その道が海を通学路に戻す。


 「2人とも落ち着いて。」

 

遥と零の声がやむ。2人ともぷいっと視線をそらす。


 「遥は電車大丈夫なの?」

 

「あっ、ほんとだ。じゃあね海ちぃ、零しゃん。」

 

「あだ名やめなさい。」


 遥は手を振りながら勢い良く右に曲がり走っていく。海も遥が見えなくなるまで手を振った。

 海と零は沈みかけの夕日を背にして、家に向かう。夜の虫が鳴き始めた。


 「返事、どうするの?」


 珍しく零が先に口を開いた。


 「付き合おうと思ってる。」


 「考えた上の答えなら、何も言わないけれど。優しさで返事をしてはだめよ。あなた、生徒会も優しさで入ったじゃない。人前は苦手なのに。_あなたは優しすぎるわ。」


 「決めたことだからね。」


 「何故、優しくあろうとするの。聞く気はないけれど。緑川さんと付き合えば、変われるかもしれないわね。」


 質問をしたのに、答えは待っていなかった。当たり前のことを聞いたから。

 朝来た道を戻る。家に近づくごとに、一日の終わりを感じた。


 「さようなら。」


 「また明日。」

 

 「ええ。」

 

 意味を考える必要のないあいさつを済ませ、家に入った。

 

「ただいま。」

 

 扉の閉まる音がやけに響く。放課後を思い出す。鏡の中の制服は色褪せていた。

海は家にいるはずなのに、また知らない街に踏み入れていた。


お読みいただいてありがとうございました

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