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また明日! ~転校生の彼女は私と同じ炎使いでした~  作者: ヅレツレ愚者
第一章:灯された恋の火

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12月5日、買い物の予定!

 環さんが転校してきて、数日が経った。


「灯花、最近転校生とよく一緒にいるよね」


 お昼休み、いつもの4人でお弁当を食べている時に早紀が言った。


「え、そうかな」

「そうだよ。昨日も一昨日も、放課後一緒に帰ってたじゃん」


 言われてみれば、確かにそうかもしれない。環さんはまだこの辺りの地理に詳しくないみたいで、駅前のコンビニとか、通学路の近道とか、いろいろ教えていたらなんとなく一緒に帰るのが習慣になっていた。


「なんか放っておけなくて」

「灯花にしては珍しいよね、自分から誰かに関わるの」


 早紀が箸を止めて私を見た。


「そうかな。環さん、話してみると意外と面白いよ。無口だけど、ちゃんと聞いてくれるし」

「へぇ」


 早紀は短く相槌を打って、また弁当に視線を落とした。なんだろう、いつもの早紀と少し違う気がする。


「ねぇねぇ、花輪さんってどんな子なの? 灯花、いっぱい話してるんでしょ?」


 彩羽ちゃんが身を乗り出してきた。


「うーん、不思議な子、かな。あんまり自分のこと話さないんだよね。質問しても『遠くから来た』とか『特にない』とかしか言わないの」

「ミステリアス~」

「でも、すごくその通りだな、ってことも言うよ。あと私の火についても褒めてくれた」

「灯花、なんかにやけてない?」


 彩羽ちゃんがじっと私の顔を覗き込んできた。


「え、にやけてないよ」

「にやけてるって。ねぇ詩織ねぇ、灯花にやけてるよね?」

「あらぁ、そうかしら?」


 詩織さんはいつものようににこにこ笑っている。でも、その笑顔がいつもより少しだけ薄い気がする。早紀といいどうかしたのかな。


「灯花ちゃんが楽しそうなのはいいことよね」


 詩織さんがそう言って、お茶を一口飲んだ。


「そうだよね! 灯花が新しい友達作るのいいことだよね!」


 彩羽ちゃんが元気よく言う。


「別に友達作ったっていうか……」

「でも仲良くなってきてるんでしょ?」


 早紀が言った。


「まぁ、うん。少しずつ、かな」

「ふーん」


 早紀はそれだけ言って、黙々とお弁当を食べ始めた。

 なんだかいつもと同じような会話なはずなのに、ぎこちなく感じる。


「あ、そうだ」


 詩織さんが思い出したように言った。


「今度の日曜日、みんなでお買い物に行かない? クリスマスも近いし、プレゼント見に行きたいなって」

「行く行く!」


 彩羽ちゃんがすぐに手を挙げた。


「私も行く」


 早紀も頷いた。


「灯花ちゃんは?」

「うん、私も行きたい」

「じゃあ決まりね。日曜日、駅前に10時集合でいいかしら?」


 詩織さんがにっこり笑う。その笑顔は、さっきより少しだけ嬉しそうに見えた。


「花輪さんも誘う?」


 彩羽ちゃんが言った。みんなの視線が私に集まる。


「え、環さん?」


 どうだろう。環さんは休日に出かけたりするタイプなんだろうか。いつも一人で静かにしているから、あんまり想像がつかない。


「聞いてみようか?」

「うん、聞いてみて! 仲良くなりたいし!」


 彩羽ちゃんは相変わらず元気だ。早紀と詩織さんは何も言わなかったけど、反対もしなかった。


 ◇◇◇


 放課後、私は環さんの席に向かった。


「環さん」

「灯花」

「今度の日曜日、みんなで買い物に行くんだけど、環さんも来ない?」


 環さんは少しだけ目を見開いた。


「私も?」

「うん。彩羽ちゃんが環さんと仲良くなりたいって。早紀と詩織さんも一緒だよ」

「いいの?」

「もちろん」


 環さんは少しの間、黙っていた。何かを考えているような顔だった。


「行こうかな」


 短く、でもはっきりと環さんは言った。


「ほんと? よかった」


 私が笑うと、環さんも少しだけ口元を緩めた。笑顔、というにはあまりにも微かだったけど、でも確かにそこには何かがあった。


「じゃあ日曜日、駅前に10時ね」

「わかった」


 環さんが頷く。


「今日も一緒に帰る?」

「うん」


 二人で教室を出る。廊下を歩きながら、ふと後ろを振り返った。

 教室の入り口に、早紀が立っていた。こっちを見ている。目が合うと、早紀はすぐに視線を逸らして、彩羽ちゃんの方に歩いていった。

 いや、なに怖い怖い。なんかやっちゃいました、私?


「灯花?」

「あ、ごめん。なんでもない」


 早紀の様子も気になるけど、環さんに促されて、私はまた歩き出した。


 ◇◇◇


 下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声をかけられた。


「灯花ちゃん」


 振り返ると、詩織さんが立っていた。


「あ、詩織さん。どうしたの?」

「ううん、なんでもないわ。ただ……」


 詩織さんは一瞬言葉を切って、それから微笑んだ。


「花輪さんと仲良くなれてよかったわね」

「う、うん。ありがとう」

「灯花ちゃんが楽しそうで、私も嬉しいわ」


 詩織さんはそう言って、私の頭を撫でた。いつもの詩織さんだ。でも、その手が少しだけ冷たい気がした。


「詩織さん、手冷たい?」

「あら、ほんと? 冬だものね」


 詩織さんは笑って、手を引っ込めた。


「じゃあね、灯花ちゃん。また明日」

「うん、また明日」


 詩織さんが去っていく。私は環さんと一緒に校門を出た。


「詩織」


 環さんが言った。


「うん?」

「優しい人だね」

「うん、詩織さんはお姉さんみたいな人だよ。いつもみんなを見守ってくれてる」

「そう」


 環さんは少しの間、何か考えるように黙っていた。


「早紀も彩羽も」

「うん?」

「灯花のこと、大切に思ってる」

「え、そうかな。まぁ、友達だし」

「そう。友達」


 環さんの声が、少しだけ寂しそうに聞こえた。気のせいかもしれないけど。


「環さんも友達だよ」


 私がそう言うと、環さんは足を止めた。


「ありがとう」


 環さんが小さく言った。


「日曜日、楽しみだね」

「うん」


 駅、電車、最寄り駅。この間はだいたい無言だけど、やはりそれも苦じゃない。不思議だった。


「じゃあ、また明日」


 分かれ道で私が言うと、環さんも同じ言葉を返してくれた。


「また明日」


 環さんの背中が遠ざかっていく。私は手を振って、自分の家の方向に漕ぎ出した。

 なんだろう、今日は少し変な日だった。早紀も詩織さんも、いつもと少し違う気がした。彩羽ちゃんはいつも通りに思えたけど。

 でも、日曜日にみんなで出かけるのは楽しみだ。環さんも来てくれることになったし、5人で買い物なんて初めてだ。

 家に着いて、自分の部屋に入る。窓の外はもう暗くなり始めていた。

 スマホを見ると、グループLINEに通知が来ていた。


『日曜日楽しみ~!! 楽しみだからもう日曜まで寝てていい? zzZ』


 彩羽ちゃんからだ。


『私も』


 早紀からの返信。え、それスルーするの? 彩羽ちゃん泣いちゃわない?


『みんなで行くの久しぶりよね』


 詩織さんからも。


 私も『楽しみ!』とスタンプを送った。ついでに『おはよう!』スタンプを3連打。

 5人で出かける日曜日。きっと楽しくなる。


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