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また明日! ~転校生の彼女は私と同じ炎使いでした~  作者: ヅレツレ愚者
第二章:バレンタイン戦線!

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2月14日、それぞれの気持ち!

 2月14日。夜。

 部屋で宿題をしていたらスマホに通知があった。

 灯花からのメッセージ。


 『今日はみんな、ありがとう』

 『ちゃんと応えるから、待っててね』


「……みんな、か」


 思わず呟いた。

 みんな。グループチャットに送っているのだから、私だけじゃなくて、彩羽と詩織にも言っている。

 当たり前だ。今日は3人ともチョコを渡したんだから。

 でも、ちょっとだけ——ほんのちょっとだけ、寂しい。

 私だけに送ってくれたメッセージだったら、もっと嬉しかったのに。


「……何言ってんだ、私」


 首を振った。

 そんなの、分かってたことだ。灯花は優しいから、3人に平等に接してくれる。それが灯花のいいところだ。

 今日のことを思い出す。

 公園で、灯花にチョコを渡した。

 「美味しい」って言ってくれた時の、灯花の笑顔。

 あの笑顔を見た時、心臓が跳ねた。

 1月からずっと練習してきてよかった。

 何度も失敗して、何度も作り直して。

 でも、灯花が喜んでくれたなら、全部報われた。


 『いつまでも伝えるから。灯花のことが好きだって』


 自分で言った言葉を思い出す。

 本気だ。灯花が答えを出すまで、何度でも伝える。

 私は灯花のことが好きだって。

 でも。


「灯花が幸せになってくれるなら、それでいい」


 小さく呟いた。

 正直なところ、私は灯花に選ばれたい。

 6年間、ずっとそばにいた。誰よりも長く、灯花と一緒にいた。

 だから、選ばれたい。選ばれるべきだとすら思ってしまう。

 灯花を2回も傷つけてなお、いまだに思ってしまう。

 でも、それは私のエゴだ。

 灯花が誰を選ぶかは、灯花が決めること。

 私にできるのは、自分の気持ちを伝え続けることだけ。

 そして、もし灯花が彩羽や詩織を選んだとしても。

 灯花が幸せなら、それでいい。

 そう思える自分でいたい。


「……難しいな」


 苦笑した。

 口で言うのは簡単だけど、実際にそうなったら、私は笑っていられるだろうか。

 分からない。でも、そうありたいと思う。

 灯花の笑顔が、一番大事だから。

 スマホを見つめる。

 返事を打とうとして、やめた。

 灯花がやってるスマホゲームのキャラクターがサムズアップしてるスタンプだけ返した。

 明後日、学校で会った時にちゃんと笑顔で話そう。

 いつも通りに。灯花のそばにいられることを、嬉しく思いながら。


 ◇◇◇


 私は自分の部屋で、いろいろと道具を整理していた。

 通知が来たからスマホを見てみたら、灯花からのメッセージが入っていた。


 『今日はみんな、ありがとう』

 『ちゃんと応えるから、待っててね』


「みんな、ねぇ」


 グループチャットに送られたメッセージを見てくすっと笑った。

 私だけじゃない。

 今日の灯花の反応を思い出す。

 耳元で好きになってと囁いた時、灯花はドキドキしてた。

 あの時の灯花の顔、すっごく可愛かった。真っ赤になって、目もちょっと潤んでて。

 あれはきっと、恋をした顔。私のことを意識してる顔だ。

 間違いない。


「でもなぁ」


 天井を見上げながら呟いた。

 灯花は「みんな」に送った。

 ということは、さきっちと詩織ねぇにも同じように感謝してるってこと。

 つまり——私だけじゃなくて、2人にも心を動かされてるんだろう。


「灯花って、そういうとこあるよね」


 苦笑した。

 優しくて、素直で、みんなのことを大切にする。

 だから、3人全員に心を動かされてても、おかしくない。

 正直、ちょっと複雑。

 私だけを見てほしい、って思う気持ちもある。

 でも、灯花が灯花らしくあるから、私は灯花のことが好きになったわけで。


「まぁ、いいか」


 灯花が私に恋し始めてる。それは間違いない。

 でも、他の2人にも恋し始めてるかもしれない。

 だったら——私がもっとドキドキさせればいい。

 灯花が灯花自身の意思で、私以外を見る必要がないと思えるくらいに、ドキドキさせればいい。

 何度だって、手を変え品を変え、顔を変えて。誰よりも灯花をドキドキさせてみせる。


「待っててね、灯花」


 にやりと笑った。


「もっともっと、ドキドキさせてあげるから」


 スマホを持ち上げて、返事を打った。


 『こちらこそありがとね! また明後日~』


 送信してベッドに飛び込んだ。バレンタインデー、私はたしかに一歩進んだ感覚を抱いていた。


 ◇◇◇


 家に帰ってから少し経ったころ。

 私は自分の部屋で、机に向かっていた。

 スマホの画面に、灯花ちゃんからのメッセージが表示されている。


 『今日はみんな、ありがとう』

 『ちゃんと応えるから、待っててね』


「……ちゃんと応える」


 その言葉を、何度も読み返した。

 灯花ちゃんは、ちゃんと考えてくれている。

 私たちの気持ちを、真剣に受け止めてくれている。嬉しい。

 それだけで、今日チョコを渡してよかったと思える。

 今日のことを思い出す。

 喫茶店で、灯花ちゃんに大好きだと告げた。


 『日向灯花ちゃん。私はあなたのことが、大好きです』


 恥ずかしかった。

 あんなシンプルな言葉を書くのに、どれだけ悩んだことか。

 詩を書こうとして、何度も書き直して。結局、詩にはならなかった。

 でも——これでよかったんだと思う。

 私の気持ちを表す言葉は、「大好き」だった。

 それを越える言葉でも、下回る言葉でもない。シンプルで、だからこそ本当の言葉。


「伝わらなくても、それでも伝える」


 自分で言った言葉を呟いた。

 これから、灯花ちゃんに伝え続けよう。

 詩かもしれない。散文かもしれない。たった一言かもしれない。

 それでも、伝え続ける。

 そして、いつか、灯花ちゃんが私を好きになってくれたら。


「……それは、何て嬉しいことだろう」


 想像するだけで、胸が熱くなる。

 灯花ちゃんが、私を選んでくれる。私のことを、好きだと言ってくれる。

 その嬉しさを表す言葉は——きっと、ない。

 どんな言葉を尽くしても、足りないくらいの嬉しさだろう。

 でも、それでも言葉にしようとするだろう。

 私は言葉が好きだから。

 どんなに足りなくても、言葉で伝えようとする。

 それが、私のやり方だから。

 スマホを手に取って、返事を打った。


 『こちらこそ、ありがとう。今日は素敵な時間だったわ』

 『待っているわね、灯花ちゃん』


 送信。

 灯花ちゃんの答えが、どんなものであれ、私は受け止めよう。

 そして、伝え続けよう。

 私の言葉が、いつか届くまで。


 ◇◇◇


 通知が来たため、スマートフォンを見る。


 『今日はみんな、ありがとう』

 『ちゃんと応えるから、待っててね』


 今日はバレンタインデーだ。3人が灯花にチョコレートを渡したのだろう。

 グループチャットじゃなくてそれぞれ伝えたほうが3人とも喜びそうなものだけど、灯花はきっとみんなに想いを伝えたかったのだろうと結論付けてスマートフォンを置く。

 部屋の中には5つに増えた座布団のうち、4つが誰にも座られることなく置かれている。

 そしておそらく、今後使われることはない。

 一見、無駄な買い物だったように思えるが、今の自分にとって意味のあることは彼女たちが幸せに過ごせるかどうかだけなわけで、一時(いっとき)でも彼女たちの気分が良かったのであれば、この座布団にも意味があったと言えるだろう。

 その座布団の一つに座って夜を過ごす。

 人を部屋に呼んだときに布団もないとなると不自然だから用意したけれど、別に睡眠の必要はないわけで、まばたきよりも長い感覚で目を開けたり閉じたりしながら朝を待つ。

 特に予定がなければ、今夜と同じように、また明日もただ座って、月曜日が来るのを待つのだろう。

 あぁ、でもそういえば。灯花の火はどうなっただろう。

 心と結びつく火の異才。

 メッセージから察するに、バレンタインデーに灯花の心を動かす何らかはあったはず。

 そんな日を経て、灯花の心はどう変わったのだろうか。

 まぁ灯花のほうから聞いてくるかもしれない。必要なら月曜にでも聞けばいい。


 私はいつまでも続けられるのだから。何度でも。何が起ころうと、それでも。

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