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また明日! ~転校生の彼女は私と同じ炎使いでした~  作者: ヅレツレ愚者
第二章:バレンタイン戦線!

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1月26日、ごめんなさいのあと

 1月25日。日曜日。

 あの日から数日が経った。

 彩羽ちゃんは約束通り、早紀と詩織さんに謝った。

 私はその場にいなかったけど、彩羽ちゃんから「ちゃんと謝ったよ」とメッセージが来た。早紀からも詩織さんからも「仲直りした」と聞いた。

 でも——。


 ◇◇◇


 1月26日。月曜日。昼休み。

 いつものように、5人で屋上に集まった。

 私が火を灯して、みんながその周りに集まる。いつもの光景だ。


「……」


 でも、会話が弾まない。


「今日、寒いね」


 私が言った。


「うん」


 早紀が短く答えた。


「……」


 沈黙。


「お弁当、おいしい?」


 私がまた話題を振った。


「うん、まあ」


 彩羽ちゃんが答えた。いつもなら「見て見て、今日のお弁当!」とか言って見せてくるのに。


「……」


 また沈黙。

 詩織さんは黙って本を読んでいる。いつもなら、みんなの会話に微笑んでいるのに、今はただ本を読んでいる。

 環さんだけが、いつも通り静かにお弁当を食べていた。

 空気が重い。

 仲直りしたはずなのに、全然前みたいじゃない。


「ねぇ、今度の日曜日、みんなで遊びに行かない?」


 私は提案してみた。


「……ごめん、その日は予定あるんだ」


 早紀が目を逸らしながら言った。


「私も、ちょっと」


 彩羽ちゃんも曖昧に笑いながら答えた。


「私は……そうね、考えておくわ」


 詩織さんも煮え切らない返事だった。


「……そっか」


 私は笑顔を作った。でも、心の中はざわざわしていた。

 仲直りしたはずなのに。謝ったはずなのに。

 なんで、こんなにぎこちないんだろう。

 昼休みが終わるまで、会話らしい会話はほとんどなかった。


 ◇◇◇


 放課後。

 早紀は「用事がある」と言って先に帰った。

 彩羽ちゃんは「部活寄っていくね」と言って別のクラスの子と一緒に去っていった。

 詩織さんは「図書室に寄っていくわ」と言って図書室に向かった。

 でもそのあと、早紀からも彩羽ちゃんからも詩織さんからも連絡がきた。

 早紀からは「一緒に帰ろう」と。彩羽ちゃんからは「部活見ていかない?」。詩織さんからは「図書室で一緒に過ごさないかしら」と。

 みんな、避けてるのだ。

 私を、じゃなくて——お互いを。


「どうするの?」


 私が悲しみとも寂しさともつかない顔をしていたのを見て察したのだろう。環さんが聞いてきた。


「……一緒に帰ろ、環さん」

「わかった」


 環さんは私に何も聞かずに頷いてくれた。私は極力いつも通りを装いながら、3人に断りの連絡を入れた。


 ◇◇◇


 2人で学校を出て、駅に向かって歩いた。

 もう冬至は過ぎてこれからは日が長くなる一方なわけだけど、1月下旬の夕暮れはまだ早い。もう空は大部分がオレンジ色に染まっている。


「……環さん」

「なに?」

「昼休みの空気、どう思う?」


 私は言葉を濁さず、素直に聞いた。


「良くなかったけど、どんな事情?」

「あ、そっか、えっとね」


 環さんはなんとなく全部知ってそうな気がして、知ってる前提で会話を振ってしまった。

 私をめぐって3人が喧嘩してしまったこと、そして3人とも仲直りしたと聞いたこと。


「みんな、仲直りしたって言ってるのに」


 環さんは黙って聞いていた。


「昼休みも、全然会話続かないし。放課後も、みんなバラバラに私のこと誘って」


 それを聞いて環さんは少し考えているようだった。


「たぶんそれは、思うことと思えることは違うから」

「……と、いうと」

「たとえば、灯花がバンジージャンプをするとして」

「うん」


 なんとなく想像する。紐に繋がれて高いところから落っこちる私。尻込みしそうだ。


「事故が起きたことはない。重力操作の異才を持った人も安全対策で配備してる。絶対安全だっていう理由を理路整然と説明されたとして」


 あ。なんとなくわかったかも。


「安全なんだって思ったとしても実際飛ぶときは怖い……ってこと?」


 私の質問に環さんは静かに頷いた。


「どんなに安全だと思ったとしても、結局は何かあったら死ぬんじゃないかと思えてしまう」


 仲直りの件も同じ、と環さんは静かに続けた。


「どんなに仲直りしよう、仲直りしたと思っても結局はそうじゃないと思えてしまう心の澱みたいなものが残っている限り、元通りにはならない」


 分かっていたはずだ。謝れば全部元通り、なんて簡単にいかないって。

 でも、どこかで期待していたのだろう。仲直りしたら、また前みたいに戻れるって。


「……どうすればいいんだろう」

「時間に解決を任せるか、仲直りできると思えるようになる何かがあるか」

「そう……だよね」


 その答えもたぶんわかっていた。


「私に何かできることはないかな」


 思わず口をついて言葉が出ていた。


「みんなの関係を、元に戻すために」

「時間に解決を任せないなら、灯花が動くしかない」

「……私が?」

「こうなってる原因は灯花にある。灯花が悪いわけじゃないけど、灯花が原因」


 私が原因。悪いわけじゃないけど、と付け加えられたけど、ちょっとズシンと来た。

 そう。私のせいで、みんなの仲が悪くなってしまった。


「でも、どうすればいいんだろう」

「私には分からない。でも、灯花なら大丈夫」


 環さんが淡々と言った。


「大丈夫って……?」

「灯花は人たらし。だから思う通りに動けばいい」


 人たらし? 周りの人が優しいだけでそんなことないと思うけどな……。

 私の遺憾の意をうかがったのか、環さんが少しだけ表情を緩めた。


「普通は同性の同級生3人から恋なんてされない」

「…………」


 そうかな……。そうかも……。


「でもちょっといい子すぎる。もう少しわがままになってもいい」

「わがままになってもいい……」


 じゃあ私が五体投地でお願いしたら仲直りしてくれたりとか。


「でもただ駄々をこねたり頼んだりするだけじゃダメ。また仲直りしようと思うだけ」


 やっぱり環さん、心読んでる?

 でもそうなると、どうしよう。


「灯花が考えて、決めて、動く」


 私が考える。私が決める。私が動く。

 誰かに任せるんじゃなくて、自分で。


「もし悩んだら私に相談してくれてもいい」

「……ありがとう、環さん」

「うん」


 環さんって、なんでこんなに優しいんだろう? 自意識過剰っぽくて嫌だけどもしかして私のこと。

 いや、ないか。

 余計な考えを被りを振ってかき消した。

 駅について、電車に乗る。

 電車の中ではいつも通り無言だったから、窓の外を見ながら考えた。

 私にできること。私がすべきこと。

 みんなといつものように笑い合いたい。

 早紀と彩羽ちゃんと詩織さん。3人とも、大切な友達だ。

 私のせいで、3人の関係がぎくしゃくしている。

 なら、私が何とかしなきゃ。

 でも、何を?

 みんなを集めて、話し合う?

 でも、何を話せばいいんだろう。

 私の気持ちを伝える?

 でも、それじゃあダメだって話だった。

 じゃあ、何を——。


「…………」


 ちょっと思いついたことがあるけど、本当にこんなことをしてもいいのだろうか。


「環さん」

「どうしたの?」

「さっき、もう少しわがままになってもいいって言ってたよね?」

「うん」

「ならさ――」


 私は環さんに考えを話す。電車の中で環さんと話すのは、たぶんはじめてだった。


「……どうかな?」

「そうしたいなら協力する」

「ありがとう。お願いします」


 隣に座っている環さんに小さく頭を下げた。近くの人に迷惑をかけないように。

 環さんは小さく頷いて、それからはまた無言の時間だった。

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