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また明日! ~転校生の彼女は私と同じ炎使いでした~  作者: ヅレツレ愚者
第二章:バレンタイン戦線!

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24/29

1月15日、バレンタイン戦線!

 放課後、私は家のキッチンに立っていた。


「……よし」


 エプロンをつけて、材料を並べる。チョコレート、生クリーム、バター、砂糖。

 バレンタインまで、あと1ヶ月。

 今年は本気だ。

 スマホでレシピを確認しながら、チョコレートを刻み始めた。

 去年までは、市販のチョコを渡すだけだった。友チョコとして、みんなに配って終わり。

 でも、今年は違う。

 灯花に、想いを込めたチョコを渡したい。

 湯煎でチョコレートを溶かす。ゆっくり、丁寧に。

 ……こういうの、苦手なんだよね。せっかちだから、つい早くやりたくなる。

 でも、チョコレートは急いだらダメだって、レシピに書いてあった。


「ゆっくり、ゆっくり……」


 自分に言い聞かせながら、チョコレートをかき混ぜる。

 灯花のことを考える。

 6年間、ずっと一緒にいた。小学3年生の時に出会って、それからずっと。

 いつから好きになったのか、正確には分からない。気づいたら、好きだった。

 中学2年生の冬。川に落ちた私を、灯花が助けてくれた。

 あの時、灯花は火を使った。自分の火が怖かったはずなのに、私のために使ってくれた。

 あの時から、「好き」がはっきりした。

 6年間の想い。それを、このチョコに込めたい。


「……あっ」


 考え事をしていたら、チョコレートが少し焦げた。


「もう……集中しなきゃ」


 焦げた部分を異才で巻き戻して、やり直す。

 時間がかかる。でも、急いだらダメだ。

 灯花は今、私だけじゃなくて、彩羽と詩織のことも考えている。

 3人に告白されて、誰を選ぶか考えている。

 それは分かってる。分かってるけど——。

 負けたくない。

 私は6年間、灯花のそばにいた。誰よりも長く、灯花と一緒にいた。

 その時間は、嘘じゃない。

 チョコレートを型に流し込む。ちょっと形がいびつになったけど、初めてにしては上出来だと思う。

 冷蔵庫に入れて、固まるのを待つ。


「……バレンタインまでに、ちゃんと作れるようになるかな」


 不安はある。料理は得意じゃないし、お菓子作りなんてほとんどしたことない。

 でも、やるしかない。

 灯花の笑顔を思い浮かべる。

 私のチョコを食べて、笑ってくれたら——それだけで、幸せだ。


「よし、明日も練習しよう」


 私は決意を新たにした。


 ◇◇◇


 私は自分の部屋で、ベッドに寝転がっていた。


「んー……」


 天井を見つめながら、考える。

 バレンタイン。灯花に渡すチョコ。

 普通のチョコじゃ、つまらない。

 私は灯花をドキドキさせたい。

 いつもみたいに、驚かせて、ドキドキさせて、私のことを意識させたい。


「じゃあ手品かなぁ……」


 手品。私の得意分野。

 チョコを渡す時、手品を使ったら面白いかも。

 起き上がって、机の引き出しを開けた。

 中には、手品の道具がいくつか入っている。カード、コイン、シルクハンカチ。


「チョコが出てくる手品……」


 考える。

 箱を開けたら空だと思った箱の中からチョコが出てくる、とか。

 カードを選ばせて、そのカードの数だけチョコが出てくる、とか。

 どれも若干ちょっと違うかも。


「あ、そうだ」


 ちょっと複雑だけど、驚きはある。やる価値はありそう。


 最初は、ただの友達だった。明るくて、優しくて、一緒にいると楽しい子。

 でも、1年の文化祭の一件以来――灯花といると胸がドキドキするようになった。

 灯花をドキドキさせたい。私がドキドキしてるみたいに、灯花もドキドキさせたい。

 だから、いつもからかったり、驚かせたりする。

 灯花の反応が見たい。灯花が私を見てくれるのが、嬉しい。

 さきっちも詩織ねぇも、灯花のことが好き。

 分かってる。みんな、本気だって。

 負けたくない。

 私は、灯花の特別になりたい。

 友達じゃなくて、もっと特別な存在に。


「よし、こんなシナリオで行こうかな」


 シナリオができたら次は練習だ。

 バレンタインまで、あと1ヶ月。

 それまでに、完璧にしておこう。

 灯花を驚かせて、ドキドキさせて——私のことを、好きにさせる。


 ◇◇◇


 私は自分の部屋で、ノートを開いていた。

 白いページ。そこに、書こうとしている。

 灯花ちゃんに渡した詩。あれは、まだ完成していない。

 最後のページは白紙のまま。灯花ちゃんへの気持ちを表す言葉が、まだ見つからない。


「……」


 ペンを持って、考える。

 何を書けばいいんだろう。

 「好き」では足りないと思う。「愛してる」でも違うだろう。

 もっと、もっと——灯花ちゃんへの気持ちにぴったりの言葉。

 灯花ちゃんは、自分のことを「普通」だと思っている。

 火の異才も、自分自身も、「普通」で「役に立たない」と思っている。

 でも、私にはそう見えない。

 灯花ちゃんの火は、暖かい。

 灯花ちゃん自身も、暖かい。

 そばにいるだけで、心が穏やかになる。

 そんな灯花ちゃんに、何を伝えればいいんだろう。

 どんな言葉なら、私の気持ちが伝わるんだろう。


「……見つからない」


 ペンを置いた。

 何時間考えても、言葉が出てこない。

 私は本が好きだ。言葉が好きだ。

 たくさんの本を読んで、たくさんの言葉を知っている。

 でも、灯花ちゃんへの気持ちを表す言葉だけは、見つからない。

 もどかしい。

 こんなにも言葉を知っているのに、一番大切な気持ちを表す言葉が見つからないなんて。

 バレンタインには、チョコと一緒に詩を渡したい。

 完成した詩を。灯花ちゃんへの気持ちを、ちゃんと言葉にした詩を。

 でも、間に合うか。

 バレンタインまで、あと1ヶ月。それまでに、言葉は見つかるか。


「……諦めない」


 私は再びペンを取った。

 諦めたくない。灯花ちゃんに、ちゃんと伝えたい。

 早紀ちゃんも彩羽ちゃんも、灯花ちゃんのことが好き。

 みんな、本気で灯花ちゃんを想っている。

 負けたくない。

 私は言葉で、灯花ちゃんに想いを伝えたい。

 誰よりも深く、誰よりも正確に、私の気持ちを伝えたい。

 ノートに、言葉を書き始めた。

 まだ完成しない。まだ足りない。

 でも、書き続ける。いつか、ぴったりの言葉が見つかると信じて。


 ◇◇◇


 その夜。

 3人は、それぞれの場所で、それぞれのやり方で、灯花への想いと向き合っていた。

 早紀は、チョコレートを作る練習をしながら。

 彩羽は、手品の練習をしながら。

 詩織は、詩を書きながら。

 3人とも、同じことを考えていた。

 ——負けたくない。

 灯花の答えがどうなるか、分からないけれど。

 それでも、自分の想いは本物だ。

 それを、ちゃんと伝えたい。

 バレンタインまで、あと1ヶ月。

 3人の想いは、少しずつ形になっていく。

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