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また明日! ~転校生の彼女は私と同じ炎使いでした~  作者: ヅレツレ愚者
第一章:灯された恋の火

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16/28

12月24日、告白されちゃった!

 当日。

 環さんの家は、駅から少し歩いたところにあるマンションの一室だった。

 途中、スーパーに寄ってお菓子と飲み物を買った。彩羽ちゃんが暴走していろいろ買い物かごに入れてたけど、今日くらいはいいかというお許しが詩織さんと早紀から出たため、買い物袋はパンパンだ。

 インターホンを押すと、すぐに環さんが出てきた。


「いらっしゃい」

「お邪魔しまーす!」


 彩羽ちゃんを先頭に、私たちは中に入った。

 そして――。


「……本当に何もないね」


 早紀が呟いた。

 環さんの部屋は、1LDKくらいの広さだった。でも、本当に何もない。

 背の低いテーブルが一つ。小さな冷蔵庫。電子レンジ。調理器具。布団。

 座布団は5つあった。今日のために用意してくれたのだろう。

 でもそれだけだった。

 テレビもない。本棚もない。カーテンすらシンプルな白いものが1枚だけ。

 生活感が、全くない。


「環さん、ここで一人で暮らしてるの?」


 私は思わず聞いてしまった。


「うん」


 環さんはあっさり頷いた。


「……寂しくない?」

「別に。必要なものはあるから」


 環さんはそう言って、キッチンの方を指さした。


「料理、できてる。温めればすぐ食べられるから」


 見ると、キッチンのコンロの上に鍋とフライパンが置いてあった。いい匂いがする。


「わー、ビーフシチュー?」


 彩羽ちゃんが覗き込んだ。


「そう。チキンはフライパンの中、サラダは冷蔵庫」

「すごい! 花輪さん、料理上手なんだね!」

「簡単なものしか作れないけど」


 環さんは淡々と言った。私の中では2、3日かけて作るシチューって簡単なものの範疇には入らないんだけど、環さんの中だとそうじゃないのだろうか。

 あとチキンってフライパンでいけるんだ。オーブンとか絶対にいるんだと思ってた。


「ありがとう、環さん」

「どういたしまして」


 環さんが小さく頷いた。


「じゃあ、飾り付けしよう!」


 彩羽ちゃんが買い物袋からガーランドを取り出した。

 私たちは飾り付けの準備を始めた。


 ◇◇◇


「あ、忘れてた。灯花、ケーキ買いに行ってきてくれない?」


 飾り付けがある程度進んだところで、早紀が言った。


「え、私?」

「さっき近くにケーキ屋があるの見たでしょ。私たちは飾り付け続けるから」

「あ、うん。分かった」


 私は財布を持って、部屋を出た。

 ケーキ屋は、マンションから歩いて5分くらいのところにあった。クリスマス前だからか、結構混んでいる。

 ホールケーキを一つ注文して、待っている間、私はスマホをいじっていた。

 ……みんな、何してるかな。


 ◇◇◇


 灯花が出ていった後、私たち3人と転校生だけが残った。


「ねぇ、花輪さん」


 彩羽が声をかけた。


「なに?」

「この前はありがとね。屋上で話してくれて」


 紙飾りを飾っていた転校生が振り返った。


「別に。お礼を言われることじゃない」

「でも、おかげで目が覚めたっていうか」


 彩羽がガーランドを持ったまま、転校生を見た。


「灯花のこと、ちゃんと考えられるようになった気がする」

「そう」


 転校生は短く答えた。


「告白まではしなかったんだ?」


 転校生が聞いた。

 私と彩羽と詩織が、一瞬固まった。


「なんか、ズルいでしょ」


 彩羽が苦笑した。


「あのタイミングでそんなこと言ったら」

「灯花が泣いてる時に告白なんて、できないよ」


 私も言った。


「灯花ちゃんが弱ってる時に付け込むみたいで、嫌だったの」


 詩織も頷いた。

 転校生は私たちを見て、少しだけ口角を上げた。


「そっか。ちゃんと考えてるんだ」

「当然でしょ」

「でも恋も愛も一歩踏み出す強引さはきっと許される」

「強引さ……?」


 彩羽が首を傾げた。


「伝えないと灯花は誰にも恋なんてしてくれない。考えてもいないはずだから」


 転校生の言葉に、私は黙った。

 確かにそうだ。灯花は鈍い。私たちが好意を向けていることにすら気づいていない。


「いつ言うの?」


 転校生が聞く。


「……」


 3人とも黙った。

 いつ言うか。そんなの、考えてなかった。


「今日言えば?」


 私たちが考えていると転校生があっさり言った。


「今日?」

「クリスマスパーティーでしょ。ちょうどいいんじゃない」

「ちょうどいいって……」


 彩羽が困惑した顔をした。


「3人同時に告白するの? それってなんか……」

「灯花も一度で3人の気持ちが分かるし。後でバラバラに言われるより、たぶん楽」


 転校生の言葉に、私は考え込んだ。

 確かに、バラバラに告白されるより、一度に全員の気持ちを知った方が灯花も整理しやすいかもしれない。


「でも、灯花ちゃんが困るんじゃ……」


 詩織が心配そうに言った。


「でも、いつかは言わなきゃいけない」


 転校生が言った。


「ずっと隠してても、灯花は気づかない。灯花は鈍いから」

「……それはそうかも」


 彩羽が苦笑した。

 転校生が紙飾りを壁に貼る。


「みんなが灯花を好きなのは分かった。でも、灯花がどう思うかは、灯花にしか分からない。灯花にもわからないかも」

「……そうだね」


 私は頷いた。


「誰に恋するかは灯花次第。あなたたちの中の誰かかもしれないし、そうじゃない可能性もある」


 転校生が続けた。


「結局みんなは灯花に恋することしかできない。灯花が恋してくれるかどうかはみんなには決められない」


 その言葉が、胸に落ちてきた。

 私は灯花に恋している。でも、灯花が私を選ぶかどうかは、私には決められない。

 できるのは、自分の気持ちを伝えることだけ。


「……じゃあ、今日言う?」


 彩羽が私と詩織を見た。


「……言おう」


 私は覚悟を決めた。


「私も」


 詩織も頷いた。


「決まりだね」


 彩羽が深呼吸した。


「よし。腹くくった」


 転校生が少しだけ笑った気がした。


「頑張って」

「あんたは高みの見物?」

「私は別に灯花に恋してないから」


 転校生があっさり言った。


「今は、ね」

「……それ、プレッシャーなんだけど」


 彩羽がぼやいた。

 その時、玄関のドアが開く。


「ただいまー。ケーキ買ってきたよー」


 灯花の声がした。

 私たちは一瞬顔を見合わせて、何事もなかったかのように飾り付けに戻った。


「お帰り、灯花」

「ケーキ、どんなの買ったの?」

「見て見て、いちごがいっぱい乗ってるやつ!」


 灯花が嬉しそうにケーキの箱を見せる。

 その笑顔を見て、私は胸が苦しくなった。

 今日、この子に告白する。

 振られるかもしれない。今まで通りの関係じゃいられないかもしれない。

 でも、言わなきゃいけない。

 ちゃんと、向き合わなきゃいけない。

 灯花と。自分の気持ちと。

 転校生の言葉が、頭の中で繰り返されている。


「結局、灯花に恋することしかできない」。


◇◇◇


「ただいまー。ケーキ買ってきたよー」


 私はケーキの箱を持って、環さんの部屋に戻った。


「お帰り、灯花」

「ケーキ、どんなの買ったの?」


 彩羽ちゃんが駆け寄ってきて、箱を覗き込んだ。


「見て見て、いちごがいっぱい乗ってるやつ!」


 ケーキのいちごなんて多ければ多いほどいいんだから。


「いいね~! クリスマスって感じ!」


 飾り付けは、私がいない間にほとんど終わっていた。

 殺風景だった環さんの部屋が、ガーランドや小さなツリーで彩られている。窓際には、サンタの置物。テーブルの上には、キャンドル型のLEDライト。


「わぁ、すごい。かわいくなってる」

「でしょでしょ? 私のセンス!」


 彩羽ちゃんが胸を張った。


「彩羽だけじゃないでしょ」


 早紀がツッコむ。


「みんなで飾り付けたのよ」


 詩織さんも微笑んだ。


「環さんも手伝ってくれたわ」


 環さんはキッチンでシチューとチキンを温めていた。いい匂いが部屋に漂っている。


「もうすぐ温まるよ」

「ありがとう、環さん」


 私は買ってきたケーキをテーブルに置いた。


「じゃあ、準備できたら始めよっか」


 ◇◇◇


「かんぱーい!」


 彩羽ちゃんの音頭で、私たちはグラスを合わせた。中身はジュースだけど、なんだか特別な気分になる。


「メリークリスマス!」

「メリークリスマス」


 環さんの作ったシチューは、とても美味しかった。具がたくさん入っていて、味付けもちょうどいい。


「環さん、これすごく美味しい!」

「ほんとだ、花輪さん料理上手だね!」


 彩羽ちゃんも目を輝かせている。


「ありがとう」


 環さんは相変わらず淡々としているけど、少しだけ嬉しそうに見えた。

 チキンも美味しかった。クリスマスといえばチキン。定番だけど、美味しい。定番って外さないし美味しいから定番なんだなぁ。


「ねぇねぇ、プレゼント交換しようよ!」


 彩羽ちゃんが提案した。


「まだ食べてる途中じゃない」


 早紀がツッコむ。


「えー、でも気になるじゃん!」

「食べ終わってからでいいでしょ」

「ぶー」


 彩羽ちゃんが頬を膨らませた。でも、すぐにチキンを食べ始める。現金だ。


「彩羽ちゃんは何を買ったの?」

「それは秘密~。開けてからのお楽しみ!」


 プレゼント交換だから、誰に当たるか分からない。自分のプレゼントが誰に渡るのか、ちょっとドキドキする。

 食事が終わって、ケーキを切り分けた。いちごがたくさん乗った、ホールケーキ。


「わぁ、美味しそう……」

「灯花、よだれ出てるよ」

「出てないよ!」


 早紀にからかわれた。出てない。たぶん。私は確認しないぞ、観測するまでは私がよだれを出しているとは限らないんだから。

 ケーキも美味しかった。生クリームがふわふわで、スポンジがしっとりしていて。いちごも甘くて。


「幸せ……」

「灯花、顔がとろけてる」

「いいじゃん、美味しいんだもん」


 みんなで笑った。

 こうやって、5人でクリスマスを過ごせるなんて、思ってなかった。

 数日前まで、私はみんなを傷つけたと思って、学校を休んで、布団の中で泣いていた。

 でも今、こうしてみんなと一緒にいる。

 ケーキを食べて、笑って、楽しい時間を過ごしている。

 嬉しい。本当に嬉しい。


「じゃあ、プレゼント交換しよっか!」


 ケーキを食べ終わって、彩羽ちゃんが立ち上がった。


「どうやって交換する?」


 早紀が聞いた。


「くじ引きにしよう! 番号書いた紙を引いて、同じ番号の人同士で交換!」

「うちに紙はない。誰か紙なんて買ってきた?」


 あ、たしかに。


「……詩織ねぇ、紙ない!?」

「うーん、ないわね。異才で出すことはできるけど触れないし……」

「えっ、詩織ねぇの異才ってそんなことできるの!?」


 あ、彩羽ちゃんって詩織さんの異才の読んだ本具現化できるやつ知らなかったんだ。


「紙じゃなくていいなら私の異才でくじは作れる」

「えっ、花輪さんの異才ってそんなことできるの!?」


 それは私も初耳です。


「じゃあ環さん、お願いしていい?」

「うん」


 そういって5つの蒼い火が正方形になり、それぞれ1と2が2つ、3がひとつ刻まれ、硬質化した。

 言葉にすると簡単だけど最近火の練習をしているからわかる、すごく高度な異才制御だ。


「これでみんなも触れる」

「へぇ~――あっつ!」


 くじに触れた彩羽ちゃんがくじを取り落とした。


「ちょ!」

「彩羽ちゃん、大丈夫!?」


 早紀と私が彩羽ちゃんに駆け寄る。


「ごめん、ウソ☆」


 どうしてくれよう、このいたずら娘。


「10分くらい外に放り出しておこうか」


 早紀、ナイスアイディア。


「そうだね、上着は着せてあげる」

「え、そしたら私はちっちゃい子に変身してお姉ちゃんごめんなさい、許してって泣き叫んじゃうもんね~」


 それはちょっとまずいか。ダメだ、この子の異才と演技力、人を社会的に殺める力が強すぎる。現代社会において私たちは基本的に彩羽ちゃんに勝てない。


「彩羽、そのときは時間干渉であんたを巻き戻してこのクリスマスパーティーの記憶を消し去るからね」

「こわ!」


 こわ! 現代社会において彩羽ちゃんに勝てる人いたわ。


「くじ完成してる。引かないの?」


 私たちが異才バトル(仮)できゃっきゃしてる間に環さんと詩織さんによってくじは折りたたまれて小さくなっていた。折りたたみまで出来るんだ、その火。


「あ、引く引く~」


 私たちは順番にくじを引いた。

 私が引いたのは、2番。


「2番の人って?」

「私」


 環さんが手を挙げた。


「じゃあ、灯花と環さんで交換だね」


 私と環さんは、プレゼントを交換した。


「開けていい?」

「どうぞ」


 私は環さんからもらったプレゼントを開けた。

 中に入っていたのは、小さなスノードーム。振ると、雪が舞う。中には小さな家と木が入っていて、とても綺麗だった。


「わ、これって」

「気に入った?」

「うん、すごく」


 たぶん買い物のときに見てたスノードームをあとで買ってたんだろう。

 環さんも私のプレゼントを開けた。マグカップ。シンプルな白地に、小さな花の模様が描いてある。


「ありがとう」

「誰でも使えるようにシンプルなデザインにしたんだ」

「使う」


 環さんがそう言って、小さく微笑んだ。

 ほかのみんなも、プレゼントを交換していた。

 早紀は詩織さんから本のしおりをもらっていた。詩織さんは早紀からハンドクリームをもらっていた。彩羽ちゃんは3を引いて、つまりは自分で自分のプレゼントを引き当てて「えー!」と叫んでいた。


「彩羽、何買ったの?」

「……ヘアゴム」

「自分で使えばいいじゃん」

「そうだけどさぁ! なんか悔しい!」


 諦めて彩羽ちゃん。転校生は2人いなかったから私たちは奇数なんだ。

 みんなで笑った。

 楽しい。本当に楽しい。

 こんな時間がずっと続けばいいのに。


 ◇◇◇


 パーティーも終盤に差し掛かった頃。

 彩羽ちゃんが、ふと口を開いた。


「ねぇ、灯花」

「ん?」

「ちょっと、話があるんだけど」


 彩羽ちゃんの声が、いつもと違った。

 いつもの明るい声じゃない。真剣な、緊張したような声。


「話……?」


 私は彩羽ちゃんを見た。彩羽ちゃんは、なぜか早紀と詩織さんを見ている。

 早紀と詩織さんも、何か覚悟を決めたような顔をしていた。


「私からも、話がある」


 早紀が言った。


「私も、あるわ」


 詩織さんも言った。

 な、なに? 3人とも、様子がおかしい。

 助けを求めて環さんを見ると、環さんは窓際に立って外を見ていた。環さんは私に何も言ってはくれない。何か教えてくれ環さん!


「えっと……何の話?」


 私は戸惑いながら聞いた。

 3人が顔を見合わせた。誰が先に言うか、決めているみたいだった。


「……私から言う」


 早紀が一歩前に出た。


「灯花」


 早紀が私を真っ直ぐに見た。その目が、いつもより真剣だった。


「私、灯花のことが好き」


 え。

 え?


「友達として、じゃなくて。灯花に恋してる」


 早紀の声が、少し震えていた。


「中学の頃から、ずっと」


 頭が真っ白になった。

 早紀が、私のことを?

 恋?


「私も」


 彩羽ちゃんが言った。


「私も、灯花に恋してる。灯花が好き」


 彩羽ちゃんも、真剣な顔をしていた。いつもの明るさがない。


「1年の文化祭の時からずっと」

「私も、灯花ちゃんに恋してるの」


 詩織さんも言った。


「伝えられなかったけど」


 3人が、私を見ていた。

 3人とも、私のことが好き?

 恋してる?


「え、えっと……」


 言葉が出てこない。

 何を言えばいいか分からない。


「返事は、今じゃなくていい」


 早紀が言った。


「というか、今返事されても困る」

「え……?」

「だって灯花、私たちの誰にも恋してないでしょ」


 早紀の言葉に、私は黙った。

 恋。私が、誰かに恋してるか。

 ……分からない。考えたこともなかった。


「だから、これから頑張る」


 早紀が言った。


「灯花に、私を好きになってもらえるように」

「私も頑張る」


 彩羽ちゃんが言った。


「灯花に振り向いてもらえるように。負けないから」

「私も、頑張るわ」


 詩織さんも頷いた。


「灯花ちゃんの心を射止められるように」


 3人の目が、真剣だった。


「ちょ、ちょっと待って」


 私は慌てて言った。


「頑張るって、何を……」

「灯花をオトす」


 早紀があっさり言った。


「オ、オトす……?」

「そ。私たち3人で、灯花に自分を好きになってもらうために頑張る。公平に」

「公平って……」

「抜け駆けなし。灯花が誰かを好きになったら、それで決まり」


 早紀が私を見た。


「だから灯花は、好きになった人を選べばいい。選ばなくてもいい。私たちは、選んでもらえるように頑張るだけ」

「私は絶対負けないからね、灯花!」


 彩羽ちゃんが拳を握った。


「灯花ちゃん、覚悟しておいてね」


 詩織さんも微笑んだ。でも、その目は本気だった。


「え、えぇ……?」


 何が起きているのか、全然分からない。

 3人に告白されて、3人に「オトす」って言われて。

 私は、どうすればいいの?


「灯花」


 環さんの声がした。振り返ると、環さんが窓際からこちらを見ていた。


「難しく考えなくていい。普通にしてればいい」

「普通に……?」

「うん。みんなが頑張るって言ってるんだから、灯花は普通にしてて、好きになった人を好きになればいい」


 環さんの言葉が、少しだけ頭を整理してくれた。


「……そっか」


 私は深呼吸した。

 好きになった人を、好きになればいい。

 それだけのこと。


「……分かった」


 私は3人を見た。


「私、みんなのこと大好きだよ。友達として」

「うん、ありがと」


 早紀が頷いた。


「でも、恋かどうかは……正直、分からない」

「だから、これから考えればいいんだよ」


 彩羽ちゃんが笑った。いつもの明るい笑顔だった。


「私たちが頑張るから。灯花は、ドキドキさせられる準備だけしといて」

「ド、ドキドキ……」


 なんだか恥ずかしくなってきた。


「負けないわよ、2人とも」


 詩織さんが早紀と彩羽ちゃんを見た。


「私だって」


 早紀も負けじと言い返す。


「私も負けないもんね!」


 彩羽ちゃんも。

 3人が火花を散らしている。

 私を巡って。

 なんだか、すごいことになってきた。そんなどこか他人事のような印象を、この時の私は抱いていた。

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