12月22日、クリスマスパーティーを忘れてた!
あの日から数日が経って、いつもの日常が戻ってきた。
早紀も彩羽ちゃんも詩織さんも、前と同じように接してくれる。いや、前より少しだけ距離が近くなった気がする。
環さんとの火の練習も再開した。複数の火を同時に出す練習は、まだ上手くいかないけど。
そして今日は終業式。せっかくだからみんなでお昼ご飯を食べようとなり、終業式が終わった後にお弁当を食べている最中――。
「やばい!」
彩羽ちゃんが叫んだ。
「どしたの、彩羽ちゃん」
「クリスマスパーティー明後日じゃん!」
あ。
「完全に忘れてた……」
私も頭を抱えた。ここ数日、いろいろありすぎて、クリスマスパーティーのことがすっかり頭から抜けていた。
「プレゼント交換するって言ってたよね。プレゼント、誰も用意してないでしょ」
早紀が冷静に言った。
「私は用意してないわ」
詩織さんも首を振る。
「私も……」
私も用意してない。
「環さんは?」
彩羽ちゃんが環さんを見た。
「私はもう買ってある」
環さんがあっさり言った。
「え、もう買ってあるの!?」
彩羽ちゃんが驚いた声を上げた。
「この前の買い物のあとに」
あの時に下見してたってことか。抜け目ない。
「さすが花輪さん……私たちが浮かれてる間に……」
彩羽ちゃんが感心したような、悔しそうな声を出した。
「やばいやばいやばい! 今日の放課後、買いに行かなきゃ!」
彩羽ちゃんが慌てている。
「場所もどうする? 誰かの家?」
早紀が聞いた。
「うちは親がいるから、ちょっと……」
私が言うと、彩羽ちゃんも詩織さんも同じように首を振った。
「みんな無理なら私のところでいい」
環さんが言った。
「え、花輪さんの家?」
「うん。一人だから、気にしなくていい」
一人?
「一人暮らしなの?」
彩羽ちゃんが驚いた声を上げた。
「うん」
環さんはあっさり頷いた。
高校生で一人暮らし。転校してきたばかりなのに。いろいろ事情があるのかもしれない。でも、環さんが話さないなら、聞かない方がいいんだろう。
「じゃあ、花輪さんの家でやろう!」
彩羽ちゃんがあっさり決めた。
「いいの? 環さん」
「いい。でも、何もない」
「何もないって?」
「家具とか。必要最低限しかない」
環さんが淡々と言った。
「大丈夫大丈夫! 飾り付けとかは私たちで持っていくから!」
彩羽ちゃんが張り切っている。
「じゃあ今日の放課後、プレゼントと飾り付けの買い出しね」
早紀がまとめた。
「環さんも一緒に来る?」
「私は先に帰る。料理の準備したい」
「料理? 花輪さん、料理できるの?」
彩羽ちゃんが目を輝かせた。
「簡単なものなら」
「わー、楽しみ!」
「でもパーティーは明後日だよね? 今から準備するの?」
2日ちょっともかけて何を作る気なんだろう?
「ちゃんとしたシチューには時間がかかる」
さっき簡単なものならって言ってませんでした?
「ほかにも食べたいものがあったら当日に買ってきて。お菓子とかケーキとか。チキンはまだしもさすがにそこまでは作れない」
あ、チキンは問題ないんだ……。
「了解! じゃあ買い出し終わって……明後日夕方!」
彩羽ちゃんがスマホを振った。
◇◇◇
放課後。
私たち4人は駅前のショッピングモールに来ていた。この前、みんなで来た場所だ。
「プレゼント、予算いくらにする?」
早紀が聞いた。
「1000円くらい?」
彩羽ちゃんが提案する。
「そのくらいが無難ね」
詩織さんも頷いた。
「じゃあ、ここで一旦別れて、30分後に集合ってことで」
早紀が仕切る。
「プレゼント何買うか見られたくないもんね」
彩羽ちゃんが笑った。
「30分後、ここで」
私たちは散らばった。
さて、何を買おう。
プレゼント交換だから、誰に当たるか分からない。誰がもらっても嬉しいもの……。
雑貨屋を覗いたり、アクセサリーショップを覗いたり。
結局、かわいいマグカップを買った。冬だし、暖かい飲み物を飲む時に使えるかなって。
30分後、集合場所に戻ると、みんなもう揃っていた。それぞれ小さな紙袋を持っている。
「よし、プレゼントはOK。次は飾り付けだね」
彩羽ちゃんが先導して、100円ショップに向かった。
クリスマスの飾り付け、結構種類がある。ガーランドとか、小さなツリーとか、サンタの置物とか。
「これとこれと……あ、これもかわいい!」
彩羽ちゃんがどんどんカゴに入れていく。
「彩羽、買いすぎ」
早紀がツッコんだ。
「えー、だってかわいいんだもん」
「花輪さんの部屋、何もないって言ってたでしょ。飾り付けすぎたら逆に変になるよ」
「そっか……じゃあ、厳選する」
彩羽ちゃんが渋々カゴから戻し始めた。
私と詩織さんは、お菓子コーナーを見ていた。
「ケーキとお菓子はどうしようか」
「さすがに当日でしょ」
たしかに。「恐怖!ケーキとお菓子大量持ち運び女子高生」が1人誕生することになる。
「それもそっか持ち運ぶの大変だし」
「あ、でも結局チキンどうするのかは聞いておかないとダメか」
買い出しが終わって、私たちは環さんに連絡を入れた。
『環さん、チキンってどうしよう?』
『こっちで用意するから大丈夫』
さっそく環さんから返事が来た。メッセージも簡潔だな~。
「じゃあ、いったん解散で、明後日かな」
「そうだね。楽しみ~」
一時はクリスマスパーティーどころじゃなかったけど、ちゃんと開催できそうでよかった。
「飾りはいったん私のほうで持ちかえって検討させていただきます」
彩羽ちゃんがいつの間にか眼鏡をかけてビジネスウーマンみたいなことを言ってる。その眼鏡って異才? それとも持ち歩いてる?




