一番星になり得る人
昨日の君が
僕の知らない誰かになっている
そんなありもしない恐怖が
心臓の奥に張り付いて
まだ青くも白くもない
薄暗い街に低音がこだまする
一番星がまるで忘れ物のようだった
世界のどこかで誰かが今日を諦める
声が聞こえた気がして耳を塞いだ
窓の向こう
始発列車が軋む音
僕の部屋だけ
一歩針を跳ね上げてるみたいだ
君が、街灯が
一つずつ消えていく
新しい光が照らし始める頃
錆び付いた自転車の鍵を回すだろう
重たいペダルを漕ぎ出して
君を探し始める
昨日の君が
僕の知らない誰かになっている
そんなありもしない恐怖が
心臓の奥に張り付いて
まだ青くも白くもない
薄暗い街に低音がこだまする
君がもしも君が
なにもかも忘れてしまっていたら
それは十分一番星になり得る
 




