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第76話 臣下の礼

領主就任の儀式を終え、男爵館の一室で休息を取っていたタクミたちの元へ、従士たちが一人ずつ挨拶に訪れた。ジェーンの夫、すなわち新たな男爵家の当主となるタクミに対し、彼らは皆、恭しい態度で臣下の礼を取った。


最初に現れたのは、古参の従士カトスだった。彼は深々と頭を下げ、落ち着いた声で言った。


「タクミ様、この度はジェーン様とのご結婚、誠におめでとうございます。微力ながら、男爵領のために尽力させていただきます。」


続いて、屈強なブルトスが、その巨体を折り曲げて挨拶した。


「タクミ様、おめでとうございます!何かとご不慣れなこともあるかと存じますが、何なりとお申し付けください!」


知的なカラミスも、穏やかな笑みを浮かべて頭を下げた。


「タクミ様、ジェーン様、末永くお幸せにお過ごしください。わたくしも、微力ながらお二人の支えとなれますよう努めます。」


最後に、見習い従士のナルタニアンが、緊張した面持ちで一歩前に進み出た。


「タクミ様、ジェーン様、おめでとうございます!一日も早く皆様のお役に立てるよう、精一杯努力いたします!」


従士たちの丁寧な挨拶に、タクミは少し照れながらも、「ありがとうございます」と一人ひとりに応じた。ジェーンは、隣で静かに微笑んでいた。


そこへ、筆頭執事のスバスチャンが少し険しい表情で入ってきた。


「ジェーン様、タクミ様。先ほど、元騎士爵ジェームズ様の領地で代官を務めていらっしゃるジョン・ドウ様より、魔法通信が入りました。」


「ジョンから?一体、何があったのですか?」ジェーンが問い返した。


スバスチャンは、神妙な面持ちで答えた。


「どうやら、ギャランズー子爵の動きが、以前にも増して不穏になっているとのことです。本来であれば、男爵の継承届を王都へ直接提出すべきなのですが、現在の状況では、迂闊に動けないと。」


「それで、ジョンはどのように考えているのですか?」タクミが尋ねた。


「まずは、魔法通信で王都へ男爵継承の件を報告し、正式な手続きは、子爵の動きをもう少し見極めてから、安全な時期に行うべきだと申しております。また、こちらでも子爵の動向を探る必要があるとも。」


ジェーンは、難しい表情で頷いた。「状況は理解しました。スバスチャン、引き続きジョンの情報に注意し、こちらでも警戒を怠らないように。」


「承知いたしました、ジェーン様。」スバスチャンは、深く頭を下げた。


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場面は変わり、タクミ、ゴンベエ、キョウコの三人は、カラミスにスキルの鑑定を依頼していた。カラミスは、真剣な表情でゴンベエとキョウコを交互に見て、手をかざしたり、何やら呪文のような言葉を小さな声で唱えたりしていた。


しかし、しばらくした後、カラミスは申し訳なさそうな表情で首を横に振った。


「う~~ん、申し訳ございません、ゴンベエ殿、キョウコ殿。」


二人は、固唾を呑んでカラミスの言葉を待った。


「わたくしの鑑定スキルは、残念ながら最高位のスキル鑑定ではないため、どうやらお二方のような特殊なスキルまでは、詳細を読み取ることができないようです。お役に立てず、誠に申し訳ございません。」


カラミスは、深々と頭を下げて謝罪した。


ゴンベエは、少し肩を落として言った。「そっか……まあ、仕方ないか。」


キョウコも、期待していた結果ではなかったが、冷静に受け止めた。「それじゃあ、仕方ないわね。」


こうして、ゴンベエとキョウコのスキルの謎は、依然として解けないままとなった。しかし、新たな生活が始まったばかりの彼らには、他にも気になること、対処すべきことが多く存在していた。

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