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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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出港2 夢中になれること

いよいよ出港だ、僕たち3人もデッキへと急ぐ。大桟橋には見送りの家族、友人らで溢れていた、そして、駆けつけたブラスバンド隊の演奏も始まる。曲は、ジョン・レノンの「Starting Over」だ。デッキまでの船の高さは50メールもあろうか、見送りの人々が小さく見える。今日の出発から不安でいっぱいだったが、音楽による高揚感はあるのだろうか、いまは、不安というより、これからの期待でいっぱいだった。


 船から汽笛がなり、いよいよ出港だ。徐々にではあるものの、確実に陸から離れている。どんどん小さくなる人影、そして、一面に広がる大海原、いよいよ僕の旅が始まった。


出港してから1時間あまり、はじめての船の揺れに戸惑いつつも、僕はようやく平常心を取り戻しつつあった。時は、夕方で、部屋の窓からまさに沈もうとする夕陽が映る。ルームメートのジェームス、コージともに、沈む夕日を見つめながら、これからの生活について話し合った。


船旅といっても、一日中、ホテルのように客室にこもっているわけではない。この旅の主催目的は、乗船している世界各国から集まった老若男女がお互いにふれあい、交流し、新しい文化を創造すること、したがって、お互いの文化を理解するコース、や、自分の地域の伝統を伝えるコースなどがある、言ってみれば、異文化交流という側面もある。


夕食後に、これらのプログラムのオリエンテーションが開催されることになっており、パンフレット片手にどのプログラムに参加しようか、3人で話しあっているところ、突然、ジェームスがデッキにいってくるといって、中座した。


「ジェームス、感じ悪くない?せっかく、俺たちが作戦会議しているのに、いきなり出ていくなんて」


僕もコージの意見に賛成だ、もしかしたら、彼はみんなで集まって行動することが好きではないのかもしれない。その後も、コージとの会話が続く。


「ところで、タカシは、大学に長いこといるようだど、自分にしかできないことってある?」


「そう言われると難しいな、大学で研究やっているけど、なかなか進んでいなくて、先も見えないし、でも、この船を転機に自分にしかできないことを見つけようと思っている。」



「そうか、オレは自分にしかできないことはないけど、でも、オレは親父の魚屋を手伝いながらずっと音楽をやってきた。それがオレしかできないことかどうかはわからないけど、自分が唯一夢中になれることが音楽なんだ。」


 自分が夢中になれることとはなんだろう。かつては、研究だったけど、今は、よくわからない。一方で、自分が好きなことをきっちり言いきることができるコージがちょっとうらやましかった。


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