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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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出港1 新しい出会い

 僕は夜明け前に論文を完成させ、ほぼ貫徹状態だった。疲労度はピークであったものの、僕は休む間もなく、下宿に戻り、スーツケースを取り出し、船旅に必要なありったけの衣類、身の回りの日常品、時間が取れなくて読めなかった本、などなどをパッキングして、朝11時に出港先である横浜大桟橋に向かう。出航は16時で、集合は13時。なんとかぎりぎりに間に合うはずだ。


 池袋駅までタクシーを飛ばし、湘南新宿ラインで横浜へ、横浜から目的の関内に12時過ぎに到着、何とか間に合いそうだ。周りを見渡すと、僕のように重たいスーツケースを抱えて、大桟橋に向かう男性、女性が目につく。彼らとは、これから1か月にもおよぶ船旅の同志になるのだろう。新しい出会いへの期待、そして、今までとは全く違う環境への不安、まるで大学の入学式に戻ったかのような気持ちだ。

 

 大桟橋には、船旅に参加する人々であふれていた、ざっと、200人といったところか。構成は、日本人半分に、外国人が半分、男女比では半々といったところか。受付の途中に、聞きなれた声が


「おーい、タカシ」


ハルだ、が、ハルを見上げると、いつものハルではない。何と奴の髪の毛、これまで真っ黒だったが、いつの間にか金色に染めている。


「ハル、何その髪?なんで金髪なんだよ?」


「いやー、これね、一度やってみたかったんだ。社会人になったら、確実に無理だろ、だけど、今回、1か月も休職するから、これはチャンスと思ってやってみた。それよりもこれから1か月楽しみだな、よろしく!」


結局、奴は環境を変えたいのではなくて、遊びたかっただけじゃないのか、そう思いながらも、受付を済ませて、さらには、海外に出国するので、イミグレーションを通って、いよいよ船内へと向かう。

船は5階建てで、僕の部屋は403号室、2階の入り口からエレベータで4階に向かう。船で渡されたカギで部屋を開けると、ベッドが3つで、まだ誰もいない。僕が最初のようだ。収納用のストレージも一人一つ用意されているので、スーツケースから出していると、扉が開く。僕は扉を見上げると、金髪の外国人、おそらくアメリカ人だろう。


「ハーイ」 


外人だ、僕は学生と言いながら国際会議や海外の大学との共同研究もこなしたこともあり、英語にそれほどアレルギーはないので、普通に接した。彼の名前は、ジェームス、普段はカリフォルニアに住んでいるが、もとから日本に興味があったこと、普段はシステム開発のエンジニアをしているが、今回たまたま長期間休みを取れるので、この船旅への参加を決意したという。アメリカの西海岸らしい、気さくで陽気なナイスガイだ。僕はひとまずほっとする。ジェームスと間をおいて、また別のルームメートが入ってきた。今度は日本人だ。スーツケースとギターを抱えて、元気いっぱいこういった。


「こんにちは、静岡からきたコージです、よろしく!」


コージは、高校卒業してからすぐに実家のさかな屋を継ぎ、毎日、父親と一緒にさかな屋稼業を営んできた、でも、10年さかな屋を続けてきて、“オレはこのまま一生さかな屋でいいのか?”、と自問自答したという、そして、自分を見つめるため親の反対を押し切ってまで、今回の船旅を決意したという。生まれた環境、育ちは、まったく違うが、僕と置かれている立場は驚くほど、似ている。ルームメートとの自己紹介の途中で、船内のアナウンスが始まる。


「あと1時間で出港します、みなさん、デッキに集合してください。」




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