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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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プロローグ3 船旅への決意

ハルとの飲み会から2カ月ほど経過した、季節は夏の真っ盛り、大学構内は100年近くに建築された建物とあって、エアコンをフル稼働させても、ほとんど効果がない。僕は今度の実験で利用するためのソフトウェアのプログラミングの最中であるものの、2カ月の間大きな進展があったかといえば、何もない。

実験のためのプログラミングをし、実験し、データをとる、その繰り返しで、有為なデータは何もない。同期・後輩が次々と成果をあげるなかで、僕は意気消沈気味だ。

僕の心はかつて歌人の石川啄木が詠んだ歌


「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買い来て妻としたしむ」


そのもので、同期・後輩と言った周囲の成功ばかりが気になり、何も成果を上げられていない自分にいら立っていた。


 プログラミングの息抜きに、メールをチェックしていたら、ハルからのメールが届く。


「タカシ、元気か?2か月前の飲み会で、船旅の話をしただろう。あの船旅の募集が始まった。オレは申し込みつもりだ。」


僕は即効で彼にメールを書いた、他人ごとのように“がんばってくれ”と書いてみてはいたものの、自分の心は揺れていた。実は、ハルから指摘される前にも、この応募が開始されていることはチェックしていた。ハルのことを“現実逃避”と決めつけたものの、自分も気になって仕方ない。


自分もやはり環境を変える必要があるのでは、船旅に出ることによってまた新たな視点から研究にも取り組めるかもしれない。やっぱり、僕は心の中では船旅に参加したいみたいだ。だから、どうやって、船旅を正当化するか、そればかり考えていた。でも、考えたところで、何も正当な理由などありやしない。それはそうだろう、学生とはいえ、大学院生の本分は研究すること、それを1か月投げ出して、船旅に向かう。そこには正当な理由はない。


 今の環境を少しでも変えたい、けれども、研究を投げ出すことはできない、僕はこの葛藤に悩み続けた。そんなとき、ふと僕の脳裏に浮かんだのが、“人生一度きり、あとで後悔するなら今やってみろ”、と。たしかに、研究を1か月投げ出すのは、責任を放棄することだし、この遅れを取り戻すのは相当辛いことだろう。しかし、もしここで参加しなければ、今回のチャンスを獲得しなければ、あとで、“あのとき参加しておけばよかった”とずっと後悔するだろう。後で後悔はしたくない。これが僕の結論だ。


 「ハル、突然かもしれないけど、オレ、お前が参加する船旅に参加することにした。」

電話口で僕はハルにこう伝えた。

「やっぱりな、オレはお前が参加したいんじゃないかって、薄々思っていた。わかっていると思うけど、出航は、3ヵ月後。楽しみだな。」



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