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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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エピローグ2 彼女からの手紙

 封筒の裏側には恩師の名前があり、僕の所属していた研究室からの郵便物だ。開けてみると、秘書からの、タンザニアから国際郵便が届いていました、と言うメモと、1通の手紙が入っていた。手紙の送り主は、、、、、彼女だ。突然、僕の胸の鼓動が高鳴る。


 もう、彼女とは一緒になることはないだろうが、気にならないわけはない。あるいは、僕とのことで彼女がタンザニアでとんでもないことがあって、それを知らせる手紙なのかもしれない。僕は居ても立っても居られない状況だったが、その場で読むわけにもいかず、書斎に手紙を一旦おいて、夕食を済ませた。


 書斎に戻り、僕は、心の準備をして、彼女からの手紙を読み始めた。心をこめて、丁寧に書いてある手紙だ。


「タケシへ、


 あの船旅からもう何年もたつのね。タケシと過ごした船での日々を今でも思い出すわ。今だから話せるけど、実は、あのダンスパーティーの前から、タケシのこと、ずっといいなと思っていたの。優しそうだし、大学院で研究しているってことにも興味を持ったわ。だから、何としてもタケシに近づきたいって思った。だから、ダンスパーティーのとき、タケシと一緒に踊れるのが楽しくて。私はタケシに恋したわ。


 それからタケシと一緒に過ごした日々はとても楽しかった。デッキでいろいろ話をしたり、もちろん、シンガポールで一緒に買い物した思い出も忘れない。私は、船旅がこのままずっと続いて、タケシと一緒に過ごすことができたら、どんなに楽しいだろうって毎日思っていたわ。


 だから、あの夜、タケシに距離を置こうと言われた時、本当にショックだった。何か、私がタケシに悪いことをしたのかしらって、って、ずっと自分を責めていたわ。あんなやさしいタケシが何であんな冷たい言葉をかけるのだろうって、毎日毎日食事ものどを通らなかった。本当につらい日々だった。


  お別れパーティの日、私はあなたを見たとき、どうすればいいかわからなかった。あんなひどいことを言ったのに、涙をためて別れを言うなんて。そして、そのあと、タケシからの手紙を読んだわ。タケシの思いが伝わってきて、その時、涙が止まらなかった。あなたは、本当に私のことを考えてくれてうれしかったわ。私もつらい思いをしたけど、それ以上にタケシにもつらい思いをさせてしまったのね。


 私は、7年前に両親の勧めもあって、自営業を営んでいるタンザニア人と結婚しました。彼は、タケシに似て、とても優しいわ。それから、3人も子供ができて、今は育児に追われています。ある日、家を片付けていたら、船旅の写真とともに、タケシからの手紙を見つけたの。今はどうしているのだろう、と思って、名簿に載っていた大学の住所宛に手紙を書きました。手紙を書くうちに、タケシと過ごした日々を思い出して、何度も当時の写真を見返しては、あの時のことを思い出していたわ。


 最後に、私はあなたに会えてよかったと今でも思っている。残念ながら、一緒に暮らすことはできなかったけど、あなたと過ごした日々は私にとって何よりも宝物です。


 素敵な思い出をありがとう。



 僕は、彼女からの手紙を読みながら、溢れる涙が止まらなかった。そして、走馬灯のように彼女と過ごした日々がよみがえってくる。はじめて彼女とあったダンスパーティー、デッキで過ごした日々、シンガポールでのデート、僕から切り出した別れ、そして、最後の抱擁。


 たしかに、彼女とは一緒になることはできなかったけど、彼女のおかげで僕は一つ確実に大人の階段を登れたと思う。素敵な思い出をありがとう。


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