表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/23

別れの日5 彼女との別れ

「タケシ、いよいよ船旅も終わりだな。長いようで短かった。オレのモラトリアムもそろそろ終わりだ。」


「ハルは明日から会社?」


「一応、その予定。会社にオレの席があればの話だけど。こればっかりは何ともいえないね。」


「ハル。今回の旅はたのしかった?」


「もちろん、たのしかった。自分の知らない国にいけて、自分の知らない人に会えて。おそらく、このままずっとサラリーマンをやっていたら、こんな経験はできないことは確かだ。」


「そうだね。自分もハルに誘われなければ、こうした経験はできなかったと思う。お前とはいざこざがあったけど、最初に誘ってくれたのはお前だし、いろいろと感謝してるよ。」


「ところで、彼女とはどうなった?」


「今日会って、本当のことを話そうと思っている。」


「そうか。お前と彼女のことは、外国人の間で話題になっていて、心配していた。」


以前、ハルにこの件について、詰め寄られたとき、不快でたまらなかったが、今回はそういう思いは失せていた。自分のなかで気持ちが整理できたかもしれない。


 ハルとの会話中も、僕は気が気でなかった。やっぱり、彼女は帰ってしまったのだろうか。もう、会えないだろうか。会場中を見渡すものの、彼女の姿は見当たらない。


 一体、どれくらいの時間待ったことだろう。正確に言えば、時間自体はほんの10分ほどだ、だけど、僕にとってはとても長い時間だった。


 ふと、入口をみると彼女が来た。彼女が来たのだ!


 ドクン、ドクンと僕の胸の鼓動が高鳴る。いてもたってもいられなくなってきた。しかし、彼女は、タンザニアの仲間と一緒だった。仲間同士で仲良く談笑している。


 僕はどうしてよいのかわからなかった。僕と彼女に関する悪意に満ちた噂を流したのは、このタンザニアの仲間の中にいるはずだ。僕があえて彼女とあうのは、火中の栗を拾うようなものだ。僕は、ともかくとしても、彼女にとってはあまりにもリスクが高すぎる。やっぱり、あの日本人と何かあったんじゃないかと、疑われるにきまっている。かといって、僕がここで何もアクションしなければ、僕と彼女の関係はこのまま永遠に終わってしまう。


このままでいいのか?


 昨日の夜と同じ問いかけが僕を劈く。僕はどうすればいいんだろう?このまま、パーティが終わるのを待っているだけでいいのか?もしかしたら、何もしない方が彼女のためには良いかもしれない?でも、本当にそれで良いのか?


 そのとき、彼女が飲み物をピックアップするためか、談笑の輪から一瞬抜けた。今しかない!僕は、一秒でもはやく彼女の元に向かうべく、人の波をかき分けて、僕は彼女のもとへ向かう。僕はそのとき周りは何も見えなかった。ただ、一秒でも早く彼女の元へ辿り着きたかった。


 そして、僕は彼女と対面した。彼女は、黒いドレス姿で、スラリとしたスタイルに黒いドレスが良く映える。僕は、昨日の夜、何度も練習した、あの言葉を伝えようとした。


 でも、いくら伝えようとしても、言葉が出てこない。。。。思いを伝えようとしても、溢れるのは涙だけだ。僕は涙をこらえることができなかった。その涙が、彼女と会えたことのうれし涙か、それともこれからの別れを悲しむ涙か、自分にはよくわからない。涙が止まらなかった。


 最初は彼女も周りを気にしてか、若干、動揺している様子だった。僕の感情を読み取ったのか、どうかわからない。でも、彼女の目にも涙があふれていた。もう、周りの目を気にしている段階ではない。僕は、周囲に憚ることなく、彼女を抱きよせた。強く、強く、彼女を抱きしめた。。。このままずっと彼女と過ごしたかった。このまま、時が止まれば、どんなに幸せだろう。


 このときほど、時間が過ぎることを恨んだことはない。無情にも僕と彼女の最後の時間はあっという間に過ぎ去った。最後にお互い目と目を見つめる。彼女は僕のことを憎んでいないか、本当に心配したけれども、彼女も彼女で気持ちの整理がついたのかもしれない。


「いままで、ありがとう。これからもよろしく。君のために手紙を書いたので、後で読んでみて。」


「ありがとう。タケシも、元気でね!」


最後に軽く抱擁を交わして、僕は彼女と別れた。


そして、僕の船旅は終わったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ