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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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20/23

別れの日4 横浜ふ頭

このままでいいのか?


 僕の心に、この問いかけが劈く。でも、どうすればいいんだろう?僕の彼女への思いは、微塵も変わらない。いや、それどころか、ますますその思いは強くなってきている。でも、僕はその思いを彼女にも打ち明けることができないし、おそらく、彼女は、僕のことを“私を裏切った男”のように思っているだろう。この溝をどう埋めていいかわからない。でも、ここで何も言わなければ、もう彼女と一生会うことはないだろう。


 このままでいいのか?


 やはり、僕の思いを伝えなくてはいけない。僕は、意を決して、手紙を書いた。一字一句丁寧に見直して、自分の思いをすべてぶつけて手紙を書いた。英語だけど、何度推敲したか憶えていない。いままでこんなに感情をこめて、自分の思いのたけをぶつけた手紙は初めての経験だった。今日は無礼講もあって、コージもジェームスもキャビンに戻ってこない、おそらく、二人とも最後の夜を他の仲間と楽しんでいるのだろう。最後の夜、僕は一人キャビンで彼女への手紙を書いていた。


 翌朝、船は横浜付近に到着し、あと数時間すると横浜港に到着する。コージ、ジェームスも夜明けにキャビンに戻り、3人とも自分の荷物の片付けに忙しい。


「タケシ、短い間だったけど、世話になったな」


コージが、片付けながら、僕に話しかけてくる。


「コージ、こちらこそ、本当に助かった。コージがルームメートで本当によかった。お互い、住んでいる場所もそれほど離れていないので、また、会おう。」


「おう、絶対だぞ。そういえば、彼女とはどうなった?」


コージは彼女と僕のことをあの一件以来、気にかけてくれている。


「あれから特に何もない、でも、今日、すべてを彼女に伝えようと思っている。今日、伝えないと、もう一生彼女には会えないと思うから。」


「そうだな、タケシが思っていることを全部伝えればいい。人生一度しかない、あとで後悔しないように、全力でぶつかればいい。」


「ありがとう、コージ」


 そうしているうちに、船は横浜港に入港し、エンジンの音が止まる。もう船旅は終わりだ。そう思うと、これまでの思い出が蘇ってくる。ハルと一緒に船旅を決意したこと、最初は馴染めなかった船生活、そして、彼女との思い出。あの夜の出会い、一緒にデッキで過ごした日々、シンガポールでのデート、そして、僕から一方的に切り出した別れ。それからの悶々とした日々。

 

 でも、僕が彼女にすべてを伝えると決心したときから、僕の気持は少しずつ晴れていった。もちろん、彼女に対する申し訳なさはあるものの、僕が前に進んでいこう、と少し前向きな気持ちになれたのは事実だ。


 荷造りを終え、スーツに着替え、僕たちは、さよならパーティ会場に向かう。これが最後なのだ。船旅が始まってから、一番緊張した瞬間だった。もし彼女がパーティに参加していなかったら、どうしよう。不安の種は尽きない。でも、僕にできることは一つしかない。


 パーティ会場にはすでに人が溢れていた。船の仲間に加えて、かつてのプログラムの参加者といった外部からも参加し、会場は一杯だ。僕は、必死になって、彼女を探すが、いない。まだ、来ていないのか、あるいは、このパーティ参加は義務ではないので、もしかして、帰ってしまったのか、僕の不安は尽きない。そんなときに、ハルが僕のもとに来た。


「よう、タケシ、何をそんなにきょろきょろしているんだ?」


「おう、ハルか。いや、べつに。特に何かあるわけではないんだ。」


僕がなぜそわそわしているのか、おそらく、ハルは勘づいているはずだ。でも、ハルは、そのことはおくびに出さない。



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