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タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


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18/23

別れの日2 距離

「なるほどなあ。それは難しい話だよな。でも、タケシと彼女が付き合っていることは、彼女の人生にとって本当にマイナスになるの?」


「わからない。たとえば、彼女が日本にやってきて、僕と一緒に生活をするということになれば、話は別かもしれない。逆に、コージだったらどうする?」


僕からの突然の質問にコージは若干戸惑いながら、答える。


「オレは、タケシのような立場になったことがないからわからない。ごめんな。話は聞いてあげることはできるけど。オレは上手く答えられない。」


「いいよ、コージ。話を聞いてもらっているだけで十分。でも、たしかに、僕がタンザニアにいくか、あるいは、彼女が日本に来れば話は解決するのかもしれない。」


「タケシ、それは本当に現実的な話か?だって、タケシは自分の研究があるわけだろ、それを投げ出して、タンザニアにいくのか?彼女だって、そうじゃないのか。彼女がタンザニアで何をやっているのかわからないけど、当然、彼女の日常生活があるだろうし、そこにタケシが入る余地があるのか。」


冷静に考えてみれば、コージの言うとおりだ。


「そうだな、コージの指摘通りだ。僕がタンザニアにいっても、仕事もないだろう。それで彼女を幸せにできるかわからない。でも、僕は彼女のことが本当に好きだ。」


缶ビールを呷りながらも、僕は涙があふれてきた。


「なんか、タケシらしくないな。タケシは、どちらかと言えば、左脳人間で、何事もロジカルに考えるヤツと思っていたけど、今のタケシは反対だ。」


「そう、。自分はいままでロジカルに考えるたちで、すべては理屈で説明できる、と思っていた。でも、これは理屈じゃない。」


「そっか、オレは頭が悪いからよくわからない。でも、タケシが思いつめているのはよくわかった。オレも今の彼女と初めて出会ったときは、ホントに彼女しか見えなかった。」


「コージは、いまでも、彼女に対して同じ気持ちを持っているの?もう付き合って長いだろ。しかも、結婚も間近だし。」


「付き合った時と同じ気持ちかといえば、今は違う。たしかに、今の彼女、夕子と付き合いはじめたときは、今のタケシみたいに、彼女のことしか見えなかった。いつも一緒にいたいと思ったし。いないときは何をしているのか、いつも気になった。でも、あるとき、思った。今の状況は、彼女に依存しすぎていると。」


僕は気になって、コージに問いかける。


「依存しすぎるってどういうこと?」


コージはゆっくりと言葉を選びながら


「言葉で説明するのは難しい。なんていうのかな、依存するってことは、すべてを彼女に委ねることで、自分が自分でない気がする。だから、良い意味で距離を置こうと思った。最初はつらかったけど、お互いの居心地が良い距離がだんだんわかってきたところ。」


コージの言いたいこと、ちょっとわかった気がする、そして、僕の思いを打ち明ける。


「居心地が良い、というのはたしかにわかる気がする。たしかに、僕と彼女の距離は近すぎるかもしれない。そして、お互い居心地がよい距離というのがわからないと思う。自分はいつも客観的に物事をみていたけれども、今回は、客観的に物事を見ることができない。だから、居心地が良い距離もわからない。ただ、見えるのは彼女だけだ。」


「タケシ、彼女にぞっこんなんだな。オレも彼女に惚れ込んだときは、今のタケシにそっくりだ。だから、今、彼女と距離を置くことは、本当につらいよな。オレはタケシと同じような経験がないから、タケシの気持ちは100%わかってやれないけど、つらいということはわかる。少しでも吐き出して、楽になってくれ。」


「コージ、ありがとう。そう言ってくれるだけで、十分だよ。。。」


コージと話をしたことで、僕の気持は少し落ち着いたものの、彼女への思いは変わるどころか、ますます、募る一方だ。彼女に「日本に来て、一緒に暮らそう」と言ってあげたら、彼女はどれだけ喜ぶだろう。


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