シンガポール2 逢瀬
ほどなく、港に到着し、僕たちは別々に税関を通ることに。別れ際に彼女が
「タケシ、この荷物引き取りにタケシのキャビンに寄っていいかしら?」
「もちろん、OKだよ。でも、もしかしたら、キャビンメイトがいるかもしれない。なので、僕の部屋のドアを5回ノックして。そうしたら、出るから」
「わかった」
そういって、僕は税関を通過し、乗船手続きをへて、再び船に戻ってきた。やはり、門限まで十分時間があるので、ほとんど船に戻る仲間はいない。僕と彼女がおそらく一番乗りだろう。
僕は彼女の荷物を持ったまま、キャビンに戻る。コージかジェームス、ルームメートのいずれかがすでにキャビンにすでに戻っていると、面倒なことになるかもしれない、あらかじめ、コージとジェームスがいつころ戻るか聞いておけばよかった後悔しつつも、キャビンに戻ると、キャビンには誰もいない。よかった、とはいうものの、まだ、終わったわけではない、着替えをすませながら、僕は彼女が来るのを待つ。
キャビンにもどってから5分くらい経過したところだろうか。
「コン、コン、コン、コン、コン」
ドアから5回ノックする音が聞こえる、彼女だ。僕は急いでドアにドアを開ける、やっぱり、彼女だ。税関で別れて、それから、まだ30分くらいしか経っていないものの、僕には永遠とも思えるようなとても長い時間だった。
「会いたかったわ、タケシ」
彼女がキャビンに入るやいなや、僕は彼女を抱きしめた。強く、強く、彼女の存在を確かめるように、僕は彼女を抱きしめた。
「僕も会いたかった。。。」
僕たち二人にはこれ以上言葉は必要なかった。僕たちは、抱き合い、お互い触れあい、キスをして、そして、愛し合った。いっそ、このまま時間が止まって、彼女と一緒にいることができれば、どんなに幸せだろうか。僕は大学、大学院に進み、自分の興味を満たすべく研究を続けてきたけど、自分の興味のために身を捧げるのではなく、彼女と一緒にタンザニアで生きる、これも自分の人生の選択肢としてあるのではないか、とも思った。
彼女と一緒に過ごす時間は言葉で言い表せない至福の時間だった、いままで衆人環視を恐れて、デッキの端でしか会うことができなかった二人が、今回は誰も見ていないキャビンで愛情を確かめ合う、僕にとってこれ以上幸せなことは何もない。
ただ、こうした至福の時間もそう長くは続かない。僕には確たる根拠はないけど、彼女との逢瀬を楽しんでいるコージはともかくとして、ジェームスはそろそろ戻ってくるような予感がした。
「そろそろ、ジェームスが戻ってくるころだと思う。そろそろ、キャビンに戻る時間だね。」
「仕方ないわ、そうするわ。今日はとっても楽しかったわ。愛してるわ。」
僕たちは最後にキスを交わして、彼女は大量の荷物を抱えて、キャビンに戻っていった。
僕の予感は的中して、それから、ものの数分後にジェームスがキャビンに戻ってきた。もちろん、僕は何もなかったように取り繕った。でも、僕の胸の中は、彼女のことで頭が一杯だった。今日の昼から先ほどまでの彼女とすごした時間が胸をよぎる。
シンガポールでの長い一日が終わった。




