表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タンザニアン・ガール  作者: 遠松 信盛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/23

彼女との出会い2 タンザニアン・ガールと恋に落ちる

10分のダンスが終わろうとするころ、僕は彼女を思い切り抱きしめた。彼女を離したくない、心から思 った。僕の思いが通じたかどうかわからない。彼女も僕を抱きしめてくれた。胸の高揚感はさらに高まるとともに、不思議だった。何せ、まだ一度も話したことがない。


 かつて、何かの本に、人間の行動は“ロゴス”(論理)と“パトス”(感情)がある、と書いてあった。そして、僕はずっと理系でもあり、何事も理屈で説明する“ロゴス”を是としてきた。でも、今回の僕の行動は、完全に“パトス”に基づいている。逆に言えば、久しぶりに自分の感情に従って行動した、とも言えるかもしれない。


 ダンスが終わって、僕と彼女は一緒にデッキで初めて話した。吸い込まれそうな大きな瞳をみつめて僕は口を開いた。


「どこから来たの?」


彼女はたどたどしい英語で、こう言う。

「タンザニアからきたの。」


もちろん、僕はタンザニアにいったこともないし、知己もいない。でも、彼女が住むタンザニアをさらに知ってみたいと思いが芽生えた。


「タンザニアは貧しい国なの。幸いなことに私は両親が会社を経営していて、経済的には困らなかった。そして、ちゃんとした教育を受けさせてもらって、いまはイギリスまで留学させてもらいながら、モデルをやっているの。ゆくゆくはタンザニアのために貢献したいと思っているわ。」


たしかに、彼女は八頭身で身長も170cnの僕とほとんど同じくらい。僕が“ナオミ・キャンベルみたいと称したのも、あながち間違いではなかったようだ。


僕も彼女に自分のことをもっと知ってもらいたいと思って、いろいろ話した。でも、日本語では100%伝えられることが、英語になるとおそらくその半分くらいしか表現できない。彼女も同じだろう。彼女はイギリスに留学しているといえども、母国語はスワヒリ語。おそらく、僕と同じで自分が思っていることをすべて伝えきれないのだろう。でも、そんなことはどうでもいい、一緒にいるだけで幸せだった。


「家族は何人いるの?」


タンザニアでは、家族をとても大切にするらしい、彼女は僕の家族のことに興味があるようだ。


「父親と母親と弟の4人家族、父親と母親は長野にくらいしていて、弟は京都にいる。」


「家族バラバラにくらしていて淋しくないの?」


「淋しいといえば、淋しいけど、たまに連絡とっているから。でも、これは日本では当たり前のことだよ。」


お互い自分の伝えたいことがすべて伝えられるわけではないけど、文化の話、将来の話、など話題が尽きない。でも、そろそろ就寝の時間も近づいており、僕たちは明日の夕方会うことに。周りに誰もいなくなったのを確認して、僕たちはキスをした。あまりにも夢のようなひとときだったので、夢ではないことを確かめるために、お互いに舌をからませ、顔の輪郭をなぞりながら、お互いの存在を確認した。もう、このまま時間が永遠に止まってしまってほしい、そんな瞬間だった。


 でも、時間は永遠には止まらない、もう、就寝の時間になり、別れを惜しみながら、僕たちはそれぞれのキャビンに戻る。僕は、デッキからキャビンに戻る間も、そして、キャビンに戻ってからも高揚感は続いていた。しかし、こんな展開を予測できただろうか。僕は環境を変えるために船旅に参加した、そこで、こともあろうに、タンザニア女性と恋に落ちる。こんなことを全く予想しなかった。


 予想をしないことが起きること。これを思い出したのは父親が語る歌舞伎の話。


「タケシ、歌舞伎の世界ってフィクションだと思うだろ。実はそうでもない。たとえば、近松門左衛門の曽根崎心中という名作がある。これは実際、大阪で発生した心中事件をベースにして、近松門左衛門が2週間で書き上げたノン・フィクションなのだ。事実は小説よりも奇なり。人生何が起こるかわからないってことさ。」


 そう、本当に何がおきるかわからない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ