子猫
今日、黒姉は自粛しています。
けれども“月曜真っ黒シリーズ”のファンの方が一人くらいはいらっしゃるかもしれないので……
私、しろかえでが書いてみました(*^^)v
初めて付き合ったカレにホテルへ連れ込まれ、震える手でバスローブを羽織った。
そんな私を一瞥したカレのひと言は
「別人じゃん!」
顔や姿……すべての容姿を作り込んでいた私だから
そう言われるのは仕方のない事だけど……
幼い私はその言葉に凍り付き、そんな私の上には……いちいち文句を付けながら私を凌辱するカレが居た。
何日か泣いた後、こんなヤツとは縁を切って“オトコ”とか“目合い”とかは全て忌むべきものと唾棄し、私は女が主役であろうという業界へ身を投じた。
最初は、デパートのブランドショップの売り子だった。
そこで全国第一位の売り上げ成績を獲り続け、セレクトショップの店長に就任。
セレクトショップの店長を歴任するたびにその店舗の売り上げをトップに押し上げ、最終的には事業本部長に就任し、そこで業界に繋がるあらゆるパイプを構築した上で独立した。
私は……私の上に男の上司を置きたくはなかった。
これを突き詰めると創業社長にぶち当たった。
社長は一代でこのブランドを立ち上げた人物で……トータル的には決して“つまらない男で”は無かった。
「ならばさしで勝負しよう!」と私は自分のブランドを立ち上げたのだ。
「私の前に立ち塞がる男はことごとく潰す!!それに組する女共々」と言うのが仕事に於ける私の信念だから、売り子になった時からどんな汚い事でも平気でやった。
例えば……『“Xday”当日にライバル店舗があるフロアーのトイレを詰まらせ、フロアーを悪臭に満たせて客足を我がフロアーへ導いた』などは序の口だった。
もちろん!そんな“悪手”ばかりを使った訳ではない。
あのクソオトコから蔑まれた特徴の無い顔立ちと棒のような体を逆手に取って“売る服”に合わせて自分の容姿を作り込んで店に立った。
立ち寄る人が“錯覚”と“夢”を見る様に……
でも、その過程でとんでもない事に気付いてしまった。
実は私は重度のナルシストで……作り込んだ自分を人から熱く見られる事に無上の悦びを感じてしまう……しかも女の視線よりその女の買い物に付き添ったオトコからの視線を浴びた方がより高揚感を得るのだ!
私がずっと“忌むべきもの”と拒否して来たオトコに枯渇しているとは!!
私は自身の業に愕然としながらもそれを昇華しようと足掻いた。
自分自身で処理する事も覚えたが……みっともない涎は止まらない。
でも、良くしたもので私から発する“おカネの匂い”に惹かれてやって来る手合いの中で、美しい一人息子を持つ未亡人が居た。
私は彼女からその一人息子を金で買った。
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芳樹はまさにダイアモンドの原石だった。
私は私の理想を持ってその“原石”に一つずつカットを施した。
ブリリアントカットの面数など問題にならない位の多くの手を掛け、一つ一つ細やかなカットを施す時、私の女性としての本能の総てと彼への愛は満たされた。
外では無慈悲な分、私は芳樹に対しとても愛情深かったと思う。
でも、私の薄い胸では彼を育て上げるのには限界がある。
カレを引き取って10年間、とても幸せだったけど……
ある夜、私はカレの前に土下座し、嘘をついた。
「事業が失敗して、大きな借金を背負った。もうあなたを援助する事ができない」と……
芳樹が殊の外あっさりと私を見捨てたのには傷付いたが……それでいいのだ!
芳樹は輝けるダイアモンドとなり、クソくだらない男共を踏み付け、その輝きに目が眩んだ女共を片っ端から斬りまくるだろう!
それこそが私の究極の願い!!
ああ!楽しかった!!
今度はもっと短いスパンでオトコを育てよう!!
複数同時進行でもいい!!
心配には及ばない!
私にカネと栄誉の匂いがする限り、そんな輩は必ず寄って来るから!!
それまでは子猫でも飼ってみるか!
子猫はもっと簡単だ!
幼い時期を堪能したらドライブヘ連れて行って
そこに放してしまえばいいのだから……
おしまい
黒姉に負けない様に真っ黒になって書いてみたのですが……努力の方向性が違ってますか??(笑)(^^;)
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