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クローネト・クローネタ! トリエストラスタ騎士物語  作者: フローランス
第1章

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8/21

騎士の宴

 初陣の翌朝。増設された医療テントのベッドには負傷者が並んでいた。負傷者の列の中にマキネカラビナの姿があった。


 マキネカラビナには外傷こそなかったものの、励起状態の魔素の奔流を浴び、魔素被曝症(平衡感覚の喪失・嘔吐・躁状態・一時的な記憶喪失などの症状がある)が疑われたことから、念のためここに寝かされていたのである。


「もう、平気なんすけどね……」


 そうつぶやいたとき、テントに一人の騎士が入ってきた。ハルデだ。


 軽く手を振ると、彼はまっすぐマキネカラビナの方に歩いてきた。手に桶を下げている。


「起きていたのか、マキ」


 ハルデは近くにあった椅子を引きずってきて座り、足元に桶を置いた。


「は、ハル、おはようございます」


「おはよう」


 ハルデはなんだかぎこちない笑みを浮かべる。


(なんか変な表情っすね……?)


 怪訝に感じながら、マキネカラビナは桶に目を移す。何やら野花が入っているようだ。


「その桶はなんっすか? もしかしてお見舞いの花だったり?」


 そうだったら純粋にちょっとうれしいかもと思って聞くと、違う答えが返ってくる。


「いや、これはクロブサボーネンという花で、潰して液を水と混ぜると泡立って石鹸代わりになる。お前、体調が大丈夫だったらさっさと体を洗った方がいいぞ」


 そう言ってハルデはふいと顔を背ける。


「なんっすか! 私がクサいっていうんすか!」


 憤然としてそう言うと、ハルデは大きく頷いた。


「クサいよ。励起状態の魔素はひどい刺激臭がするんだ。それを大量に浴びたお前は、有り体に言ってひどいニオイだ」


 『ガーン』と音がしそうな落ち込みを見せるマキネカラビナ。よく考えたら他のベッドと自分のベッドはかなり離して置いてあった。


「もう大丈夫そうなら退院手続きをしてくるが?」


 半泣きで頷くと、ハルデは手をひらひらさせて立ち上がり、医師の元に向かった。



 手続きはすぐに済んで、ハルデとマキネカラビナは医療テントを後にした。


 歩きながら、ハルデはマキネカラビナに話しかけた。


「テントは普通に1つ、底布なしで1つ建てておいた。臭いをどうにかしてから食事にする。お湯をもらってこよう」


「え? お湯がもらえるんすか?」


 戦場において水は貴重で、わざわざ沸かさないといけないお湯はなおさら貴重だった。


「お前のために騎士隊を回って頼んでおいた。どこも気前よく承諾してくれたよ。皆、仲間がひどくクサいのは嫌なんだろう」


「そのクサいって言うのやめてほしいっす! 傷つくっす!」


 ハルデは振り返って、マキネカラビナの鼻先に指を突き付ける。


「自分ではわからないかもしれないが、かなり遠くでもわかるくらい臭っているんだからな」


「うう……」


 そうこう言いながら歩く間、ハルデは視線を感じていた。通りがかるすべての騎士がこちらを見ていた。


 口々に「あの匂い……」「戦車を倒した……」などといっているのが聞こえてきた。


 そんな中、司令騎士隊のテントにたどり着くと、見知った顔と出会った。アルモンデ・トース卿――二人を『フェンシエ・ディオ・ミルカウ』の駐屯地からここまで送り届けた騎士である。


「おお。ヴォルテーラ卿、それに『粉まみれのマキ』ではないか。もう大丈夫なのか」


 トース卿はマキネカラビナを見ていい笑顔を見せた。臭いも気にせず、できた人だな、とハルデは思った。


「おつかれさまです、トース卿」


「大丈夫っす、ありがとうございます……あの、その呼び方ってもしかして流行ってたりしますか……?」


 マキネカラビナは顔を赤くする。


「うむ、なかなかによく声の通った堂々たる名乗りであったし、聞いていた者も多いだろうな」


 トース卿は大きく頷いた。テントの門衛の従士達も一緒に頷いている。


「名のある騎士の仲間入りだな……」


 ハルデは同情して呟く。


「は、恥ずかしいっす、やるんじゃなかったっす!」


 マキネカラビナは両手で顔を覆う。


「『粉まみれ』が嫌ならさらに精進して新たな名乗りをする機会を得ることだ、ストリケパイラン義勇卿」


 そう言ってから、トース卿はハルデに向き直り手招きする。


「さて、お湯がいるのだろう。桶の中身を出して持ってきたまえ」


 ハルデは桶からクロブサボーネンの束をマキネカラビナに渡し、桶を持っていき、お湯をもらってきた。朝食の用意に使った残りの水で沸かしたようで、量はそんなに多くなかった。


「各隊のテントを回って体を清められる量にしよう、マキ。トース卿、どうもありがとうございました。他の皆にもよろしくお伝えください」


「心得た。体を冷やして風邪をひかぬようにな」


「私からも、ありがとうございました、トース卿」


 敬礼をすると、トース卿も答礼する。二人はその場を辞した。



 その後も行く先々でからかわれながらお湯をもらい、自分達のテントに戻るころにはなかなかの量のお湯を集めることができた。


「これなら追加で沸かす必要もなさそうだな」


「あとは石鹸代わりのこれを潰せばいいんすね」


「ああ」


 クロブサボーネン潰しに使えそうな石を見つけ、板切れの上で潰す作業をはじめるマキネカラビナ、それを横目に火起こしを始めるハルデ。


「なんかヌルヌルする……そういえばハルは、自分で火起こしをするんすね。貴族なのに」


「ん……貴族でも騎士なら誰でもやるぞ、騎士学校で嫌でもやらされるし。うちが貴族だって話したことがあったか?」


「魔法の籠手を持ってるくらいだしと思って。槍を投げるの、かっこよかったっすよ……」


「そ、そうか? それはどうも。マキの名乗りもその、立派だったぞ」


「あーあーやめてほしいっす! うちはなんであんなこと……」


 マキネカラビナは手を止めずに頭を振った。


「なんで『粉まみれ』なんて名乗ったんだ、他に何かなかったのか?」


「実は頭真っ白で、何も思いつかなくて、いざとなったら実際に呼ばれてたのしか出てこなくって……」


「何をしたら実際に『粉まみれ』なんて呼ばれるようになるんだ」


「実家の粉ひき屋の手伝いをして粉まみれになったのを見られて以来ずっと呼ばれてて……ああいうのって結構しつこく言われるのでいやだったんすけど……」


「家業が、そうか。実家はどこに?」


「実家はノストルキア公国の東の方で、だから今は魔族の占領下にあって……」


「それはその、答えづらいことを聞いてすまない」


「いいっすよ、家族は避難して無事っすから。……っと、これくらい潰せばいいっすかね?」


見ると、潰したクロブサボーネンから水分が出て、こんもりと粘性のある液だまりができている。十分いけそうだ。


「水を足して擦れば、泡が出はじめるはずだ。そっちの2つの桶の水も使っていい。冷たいかもしれないが、適当にお湯と混ぜたりしてくれ」


「ありがとうございます! じゃあ失礼するっすね」


 そう言って水桶と代用石鹸を2回に分けてテントに運び入れた後、ハルデに軽く手を振ってマキネカラビナはテントに消えた。


 火起こしに成功したハルデが食事の準備をしていると、他の騎士隊の騎士たちがちらほらと集まってきた。


 なぜかそれぞれが手に手に食材を持っている。


 集まった騎士の1人、ハルデより幾分年上の騎士が話しかけてくる。


「よう、ヴォルテーラ卿。『粉まみれ』は?」


 マキネカラビナが体を洗っているはずのテントを指さして答える。


「そっちのテントで体を洗っています。諸卿は何用で?」


「食材を回してやろうと思ってな。皆持ってきてるぞ」


 そういうとスープを作っている鍋に食材を勝手に入れはじめる。


「第2騎士隊からはこの腸詰め肉を2本やろう」「第4騎士隊からはバラッカリアフラウ(ブロッコリーを青白くしたような野菜)を」「第5騎士隊はヴォータバーシュ(ゴボウがたわしみたいになっている根菜)だ」「第1騎士隊と第3騎士隊からは連名でマーヒロー(1頭で牛2頭分ほどの大きさの、角が4本ある動物)の乳を供出する」


 あっという間に野菜スープがクリームシチューのようなものになった。


 ハルデは困惑する。


「いったいこれは何のつもりで……」


「我が<ガルデ・ディオ・コルナ>の英雄たちに英気を養ってほしいだけだ。代わりにほしい情報があるが」


「それは『だけ』ではないような。情報とは?」


 あとからきた魔法騎士がシチューになった鍋にチーズを入れながら代わりに答える。


「貴卿の相棒が、見た目通り細っこいだけなのか、それとも意外といい体つきをしているのか……それが知りたいのだ」


「マキの……男の体つきを調べてどうするつもりなんです?」


「実は賭けをしていて……ってお前、マジか?」


 周囲の騎士たちが目をぱちくりさせる。


「賭けって、俺は協力しませんからね」


 火をいじりながら話をしていると、マキネカラビナが特に準備せずテントの中に入ったのを思い出した。


「そうだ、あいつタオルと着替えがないんじゃ……誰か火を見ててください」


 火ばさみを一番近くの騎士に手渡して、ハルデは自分のテントに戻る。


「荷物の中を見るのも悪いし、鞄ごと持っていくか」


 そう独り言を言うと、鞄を下げてマキネカラビナのいるテントに近づく。


 好奇の視線にさらされた気がした。


「マキ、入るぞ」


「はい?」


一応声をかけ、足元に気を付けながら中に入ると、1歩ほど奥の濡れなさそうな場所にマキネカラビナの鞄を置いた。


「タオルと着替え、鞄に入っていると思ったから持ってきたぞ」


 目線を上げると、マキネカラビナと目が合う。


「は、ハル……?」


 頭から蒸気が出そうなほど真っ赤になっているマキネカラビナ。


 少しだけ目線を下げると、張りの良い果実が見えた。


 細いながら薄く筋肉のついた体は、クロブサボーネン代用石鹸の泡をまとって艶めかしさを演出している。


 足元にマキネカラビナが脱いだ連合帝国標準の支給品である半オーダーメイド胸甲が転がっていた。


 働かない頭が、『連合帝国標準の胸甲が大きめに膨らんでるのはこういうのにも対応してるからなのか』とよくわからないことを考えた。


 秘部を手で隠して、マキネカラビナは潤んだ瞳で何かを訴えるような視線をハルデに向けた。


「あ、あの、マキ、その……」


 ハルデはマキネカラビナに背を向け、


「ご、ごめん!」


 と叫んでテントを飛び出した。


 ハルデがテントから離れると、外にいる騎士たちは、ハルデのもとに集まってきた。


「英雄、勇敢が過ぎるぞ。」


「マキ、お、女だったなんて……」


「まさか気付いてなかったのか?」


「皆、知っていたんですか!?」


「お前、知ってて突っ込んだんじゃないのか! 俺たちは騎士隊長殿が言っていたから知ってたんだが……それはそうと、どうだった?」


「どうって、ええと、案外おおき……じゃなくって! 機密事項……個人情報的なやつが世の中にはあってですね」


 ろくろを回すようなしぐさをしながら、ハルデはごまかそうとする。


「よし、よくやった英雄……お姫様が出てきたら食事にするのだな。夜になればささやかな宴がある。お前たちも来い。ではまた後でな」


 食材と引き換えに、目当ての情報を引き当てた騎士たちは自分の隊のテントに戻っていく。


 ハルデは思い出したように自分のテントに向かい、人員リストが挟まったバインダーを手に取る。慌てて火の元に戻り、火をかき混ぜたのち、座りなおしてリストを見直した。


 リストには騎士隊長の任務を助けるべく、各騎士の特性などの人事評価が主に書かれている。


 ハルデ・ヴォルテーラの項……弓術以外の技能欄は概ね良好な数値が並んでいる。生真面目な性格という人物評価、18歳・男性。


 マキネカラビナ・ストリケパイランの項……対戦車槍術はきわめて優秀で、それ以外は平均以下、悲惨ともいえる数値が並ぶ。お調子者という人物評価、17歳……女性。


 ハルデは項垂れる。


「そういえば、対戦車槍がつかえるならいいかと思ってその先を見なかったんだな……」


 果たしてどのように謝罪したものか。


 しばらくすると、体を洗い終えて着替えたマキネカラビナがテントから出てきた。


 鎧を脱いで、粗末で大きめの服を着て外套を纏ったマキネカラビナは、体のラインがわかりづらかったが、確かに女だった。


「あの、ハル。さっきの事は、私も忘れるからハルも……」


「あ、ああ。本当に、本当にすまない……そうだ、飯、飯にしよう。他の騎士隊の皆から差し入れをもらっているんだ。カンパーナ(硬いビスケットのような、穀物の粉をこねて焼いた食べ物)を出してきてくれ」


「そ、そうっすね、おなか空いてたんすよ」


 マキネカラビナは食料鞄からカンパーナを取り出す。ハルデは食器を用意して、元は野菜スープだったシチューを注ぐと、匂いを嗅いだ。


「ちょっと待ってくれ。すんすん……」


「どうかしたんすか?」


 シチューを一口すすって、頷いた。


「ん、大丈夫そうだ。よし……」


 ハルデは器を置き、もう一つの器にシチューを注いでマキネカラビナに渡した。


 マキネカラビナはシチューとスプーンを受け取りながら、首をかしげる。


「大丈夫って?」


「ああ、毒が無いか確認していた」


「毒……っすか?」


 ハルデはシチューをかき混ぜる。


「さっき言った通り、他の騎士隊からの差し入れが入ったから念のためにな」


「な、仲間なのにそんなことを気にしないといけないんすか?」


「マキが騎士をどう思っていても、騎士には爵位持ちの貴族も少なくないし、貴族は日常的に権力闘争をしている。警戒するに越したことはない。マキだって巻き添えで毒殺なんて嫌だろう?」


「それはまぁ、そう、ですけど」


「今うちに後継者がいないとはいえ、敵に占領されている、手に入るかわからない領土のためにリスクを冒すとも考えにくいところではあるけどな」


「なるほど……あ、横失礼するっす」


 マキネカラビナはハルデの隣に座った。ハルデは居心地が悪くて、少しだけ反対側にずれる。


 その身じろぎに気が付くマキネカラビナ。


「まだ、臭うっすか?」


 自分の体の匂いを嗅ぐ素振りのマキネカラビナに問いかけられて、ハルデは顔を背ける。


「いや、違う。あとは鎧に残ってる匂いだけだと思う……」


「じゃあ、今ちょっとずれたのは何なんすか?」


「それはその……俺は……」


「はい?」


「女性が苦手なんだ!」


 ハルデは目をつぶり、意を決してそう言い放つ。


「そ、そうっすか……ええっと、仲間! 仲間ならどうっすか! 苦手じゃないっすよね!?」


「仲間、か……」


「ええと、その……少なくとも私は、仲間のつもりっすよ?」


「ごめん……そうだな、お前は仲間、仲間だ……」


 ハルデはそう言い聞かせると、平静を取り戻そうと、聖人へのお祈りをはじめた。


 マキネカラビナはハルデが祈りを捧げるのを、黙って見つめていた。祈りが終わるのを待って、彼女は口を開く。


「私にとってはハルが初めての仲間っすよ」


「俺も、マキが最初の仲間だ。思えば、『騎士は仲間を守って戦うもの』って騎士心得にも書いているんだよな」


「あー、ぼやーっと覚えてるっす、騎士心得」


「俺、義勇騎士の、ちゃんと心得を読んでないやつよりも、騎士の事がわかってなかったのかもしれない……」


「そ、そんなことないっすよ! ハルはちゃんと、仲間を守れる、かっこいい騎士っすよ!」


「俺はかっこいい必要はないんだが……そうだな。お前がそういうなら少しはちゃんと騎士になれたのかな」


「そうっすよ、もう『英雄』なんて呼ばれちゃうくらいだし!」


「えっ……?」


 ハルデはようやく、マキの方を見た。マキはいつものにこにこ顔だ。


「さっき言ってた、他の騎士達が喋ってたのがちょっとだけ聞こえたっすよ」


「そ、それはどれくらい聞こえたんだ……」


「ほとんど聞こえなかったけど……賭けがどうとか……」


「わ、忘れてくれ!」


 ハルデが慌てる様子を見て、マキネカラビナは目を細める。


「なんか私に聞かれると不都合な話をしてたんすか? 気になるっすね、『英雄』のはなし」


「いや、だから……」


 ハルデは必死に誤魔化したが、マキネカラビナがこの話題に飽きるまで四半日程かかった。



 ハルデはマキネカラビナの追求をかわしながら、借りてきた折り畳み文机を外に並べ、対戦車装備の補給要請などの事務作業を行っていた。


 マキネカラビナは未だ臭いが残る鎧の掃除をしていて、まもなく作業を終えようとしていた。


 事務作業の内容についても騎士学校で習っていたので、今のところは問題なくこなせていた。ただ、量が増えた時を考えるとうんざりだった。


 少しでも役に立ってくれと思いながらマキネカラビナが練習がてら1枚だけ書かせた書類を確認する。


「なんていうか、個性的な字だな……」


 マキネカラビナの字は本来角のあるところでもやんわりと曲がるような字だった。にもかかわらず不思議とメリハリがあって読みやすかった。


「なんか問題ありそうっすか?」


「いや、大丈夫そうだ」


 ハルデは胸をなでおろすと、マキネカラビナが同様の動きをしているのが見えた。


 足音が聞こえる。食材を差し入れてくれた騎士の1人がこちらに向かってきていた。


 空を見ると日はまだ少し高いように見えた。


 羽ペンをしまい、手を上げると、彼が話しかけてくる。


「やあヴォルテーラ卿」


「どうも。ええと……」


「第4騎士隊のドルトニスだ。夕餉の誘いに来た」


「夕餉……宴をすると言ってましたね、ちょっと早いような気がしますが」


「宴! いいっすね。何の宴っすか?」


「騎士名物、慰霊の宴だ」



 陣営内の広場に、当直を除いた70人程が集まっていた。


 広場前に、見覚えのない部隊章のトラックが止まっている。


 広場の中央に酒樽が置かれ、椅子と机が並び、大きな焚火が周囲を温める。並んだ簡易かまどの上で鍋が火にかけられる。鍋には連合帝国の各国の料理が入っていた。


 ハルデは鍋から料理を取った後、コップをとって酒の列に並んだ。マキネカラビナも後をついてくる。


 酒はサシュロンという果肉の赤い実から作った、連合帝国内で広く好まれるものであった。


 皆が思い思いの料理を器に盛り、酒と料理が全員に渡ったことが確認されると、ドルトニス卿が声を上げる。


「諸君! この宴の挨拶を任されたドルトニスである! 今日の酒と食事の手配に手を貸してくれたブレヴフェンシア辺境伯殿に感謝を! 酒は1人2杯までだ! 他の者の酒を受け取るのは禁止だ! まずは酒を飲み、そして飯を食べ、それから歌ってくれ! 1人1曲は歌ってほしい、これは英雄たちの魂を救うためである! それ以外は踊ったり何をしても構わん! 酒はちょっとだが飯は十分にある、存分に食え! では、乾杯(グラーシィ)!」


 グランヴェール王国語の乾杯の声が響き、宴が始まった。ハルデとマキネカラビナはともかく互いにコップを掲げ、サシュロン酒(コホル・サシュローネ)を一口飲んだ。やや強い酸味と芳醇な苦みが口に広がり、体を潤していく。


 それから言いつけ通りに料理に手を付けた。熱い料理が身に染みる。早速誰かが歌を歌い始める。ドルトニス卿がそれに合わせて『テリッツォ』という弦楽器を弾き始めた。


「この飲む、食べる、歌うっていうのに何の意味があるんすかね?」


「俺もこれは知らないな……」


 マキネカラビナが疑問を口にし、ハルデが首をかしげると、近くに居た魔法騎士が教えてくれる。


「酒で体を満たした人間の歌声と、故郷の料理を食べた吐息に乗って、死んだ英雄たちの魂が故郷に帰るのさ。自分の故郷の歌と料理がなけりゃ魂は道に迷うって話だ。だから、各国の料理を用意し、なるだけいろんな人間で歌うんだ。全員がその国の歌を1曲も知らないなんてことがないように、皆で覚えていくのさ」


「なるほど」「そうなんすねぇ」


 人だかりから離れたところで、しばし、酒と食事を楽しむ。マキネカラビナは方々回って盛んに騎士・従士たちに話しかけていた。


「お前さんは物静かだな」


 魔法騎士がハルデを見据えていた。


「これでも楽しんでいますよ、ええと……」


「トロキア・カルキン、魔法騎士だ。老いぼれだがな」


「いや、まだまだご壮健で」


 握手しようと手を出すと、思ったより強い力でその手をつかまれた。その手を上下に振ったのち、どちらからともなく離した。


「よいよい、若いの。それより儂が思うに、なるべく他の騎士たちと交流して、顔を覚え、そして覚えてもらうのがいいぞ」


「交流か……」


「相手が誰で、どこの出身かくらいまで覚えておけば、その者をちゃんと弔ってやれる。覚えてもらえば、弔ってもらえる。死んでも故郷に戻れると思ったら、少しだけ、戦う怖さもマシになる。そうやって騎士たちは命と魂を預け合う仲間になって、大きな困難に立ち向かえるようになるのさ」


「命と魂を預け合う……」


「うむ、仲間とはそういうものさ。さぁ、輪に加わっておいで」


 酒と料理をもって立ち上がると、カルキン卿に背を押された。談笑の輪に近づくと、ハルデに気付いた年若い女性騎士が腕をつかんで引っ張った。


「増援の騎士が到着されました! 出身と名前をおっしゃってくださいほらほら!」


 妙なテンションに気圧される。ピンクブロンドの髪を横で編み、後ろの高い位置でリボンで纏めた、華やかな騎士。こんな騎士は<ガルデ・ディオ・コルナ>にはいなかったはずだ。


「あ、ああ。神聖ミルキリア王国、ハルデ・ヴォルテーラ、です」


「おー! あなたがあの戦車を一撃で屠ったという『ドゥラクニール』・ハルデ・ヴォルテーラ! ぜひ1曲お願いします!」


 『ドゥラクニール』とは神話に出てくる『救世主の胸を一突きして殺した』として知られる槍の名前だった。どうやらそれになぞらえて二つ名をぶちあげるつもりらしい。


 周囲の人々はその発言に沸いたが、ハルデは困惑し、何とか訂正しようとする。 


「いやいや、一撃ではありません! ストリケパイラン義勇卿との共同戦果ですし……」


「いいんですよ! 士気をアゲアゲていきましょう! さぁさ1曲!」


「し、仕方がないな……では、ええと……」


 歌に自信がなかったハルデは、恐る恐る歌い始める。


―― あぁ、日の光よ、この母なる木を育みたまえ。あぁ、月の光よ、この母なる木を癒したまえ。我ら根元にたゆたい、母なる木に身を捧げよう。新芽を育む土となろう。おぉ、幸あれ、幸あれ。ガールマルフラに幸あれ…… ――


 歌い終わると、静寂が訪れた。しばらくして、ぽつ、ぽつと拍手が上がりはじめる。気付けばマキネカラビナが隣に来て、なにやら微妙な顔で拍手していた。


「いやー! なかなか興味深い歌声でしたね! 『ドゥラクニール』・ヴォルテーラ卿ハルデに歌ってもらえば、魂も寄り道しながら愉快に故郷に帰れること間違いありません!」


 女性騎士は捲し立てる。褒めるような貶すような、よくわからない発言に、ハルデは混乱する。


「それにしても、今、ニスガルマルフラータの団歌を聞くことになるとは思いませんでした! いい曲ですよね、凍結されても失われない、死してなおの魂を感じます……」


 父が指揮した騎士団の話題になり身を固くする。


「……あなたはいったい誰だ」


 訊ねると、女性騎士は手を打った。


「あぁ、自己紹介がまだでしたね! わたくし、ブレヴフェンシア卿フォルキリエといいます。ブレヴフェンシア辺境伯といった方が名は通りますが。そうだ、写真! 日が暮れる前に、写真を撮らせてくださいね『ドゥラクニール』! 『粉まみれのマキ』も一緒に!」


 ブレヴフェンシア家は、シルフィア王国の大家であり、家名と領地名が一致する、数少ない名門であった。彼女は自らの家名の入った騎士団を率いる騎士団長であった。


 肩掛け鞄から写真機と偏光板を取り出したフォルキリエはハルデとマキネカラビナを並ばせ、騎士の1人を捕まえて偏光板を持たせる。


「さぁさ、並んでお2人! 偏光板はこうっ、こうですよ。フラッシュにどっきりしないように、いいですね、ではまず1枚! あーいいですねイケメンは映えますねぇ!」


 1枚目は呆気に取られて撮らせたが、2枚目以降は手で制した。


「貴卿はもしかして、父の写真も撮ったのでは?」


 そう疑いを込めて問いかけると、フォルキリエが先ほどまで纏っていた明るい空気が嘘のように静まる。


「……えぇ、撮りましたよ。ヴォルテーラ卿クロン、惜しい人を失いました。得難いイケおじでしたし……」


 懐かしむような表情で、少し俯くフォルキリエ。


 ゆっくりとハルデの頭に血が上っていく。


「新聞を見ました、『ヴェルフラ市防衛戦』の記事……」


 忘れもしない、騎士学校の宿舎で見た新聞記事に載っていたのは、あの日のままの父であった。フォルキリエを睨みつける。


「貴卿は……父を、ヴェルフラ市を救援できる位置にいたのではありませんか」


 フォルキリエは睨まれて眉をひそめ、そして心外だと、非難するような目をハルデに向ける。


「わたくしは、ここに慰労のために来たのですけれど?」


「騎士たちは、父もあの日に……増援が必要だったのに……」


 自然と拳に力が入った。切り揃えた爪が掌に食い込んでいく。


 フォルキリエは天を仰ぎ、周囲の空気が張り詰める大きな溜息をついた。フォルキリエの、体を凍り付かせるような声が響く。


「はぁ……確かに、わたくし個人は、あの時ヴェルフラ市に居ました。ですが我が騎士団<ブレヴフェンシア・フォルテガールタ>ははるか後方に居ました。あなたの御父上の写真は、わたくしが先発でヴェルフラ市まで出て、望遠レンズで撮ったものです」


「では、救援はできなかった、と?」


 声が震えた。


「無理でしたね。有り体に言えば、数日前の状況から、1000人規模のニスガルマルフラータと、城壁のないヴェルフラ市ではすでに絶望的だと思っていました。わたくしはそれでも、戦況を自分の目で確認して救援可能か判断したくて、数名の騎士を連れて先発したのです。結局は撤退する騎士たちと市民を保護することしかできませんでした……これくらい話せば気がすみませんか?」


「っ……」


 息が詰まる。


「騎士の使命といえば、国と民を守ること。その為に仲間を救えないことだってあります。わたくしは必要とあれば湯水のように騎士を使いますが、無駄足になったり、無駄死にになるときにはそうはしません。より多くの騎士が別の機会に必要ですから。無理にヴェルフラ市救援に向かっていたら、今頃の前線はミルカウ市で止まってはいません。いずれにしても後退していて恥ずかしい限りですけれど。お話は分かりましたか?」


冷たくあしらわれて、頭が沸騰する。


「それが分かっても、俺は……! 俺は、父の仇を取りたいんです! ……騎士団を利用してでも……!」


 仇討ちの意思表明を聞き、周囲はざわついた。騎士の1人が怒る。


「仇討ちだと!? 国と民を守るべき騎士がそのような心構えで戦うなど……!」


 仇討ちは騎士の中ではひどい悪徳であるとされ、忌み嫌われるべき行為であるとされていた。


 マキネカラビナはハルデの服の裾を引っ張り、首を横に振る。


 フォルキリエは怒る騎士を手で制した。ハルデの宣言を聞き、視線が自分に集まるのを待って、彼女は冷たく笑った。


「なるほど。面白いですね」


「面白い……?」


 ハルデは震える声で呟き、フォルキリエは冷たい声色のまま続ける。


「復讐のような強い感情というのは、時に強い優位性を得るきっかけになります。魔族を倒すという意味では、我々は同じ方向に向かっている、利用できるものは利用しましょう。あなたが仇討ちに固執して騎士団に変な損害を出さない限り、我が騎士団はあなたを応援しますよ。ですから、あなたは魔族の巨大戦車を必ず殺しなさい。詳しくはまた考えますが。せっかくの宴席ですし、今日はこの辺にしておきましょう。皆さんも、彼の復讐の事はわたくしが預かるということで、いいですね!」


 沸騰した頭が、徐々に冷めていく。周囲の騎士たちも、フォルキリエの一声で静かになった。


「わかり……ました……」


 ハルデは、自分よりはるかに大きな責任を抱える人間が、復讐という目的に価値を見出すのが意外だった。


 フォルキリエは2回頷き、瞬時に空気を切り替える。


「よろしい! じゃあ写真の続きですよ! あーそういう憂い顔もいいですね! マキさんも可愛いです、もう2枚! 無理にでも笑って、さらに2枚! 結局戦争は意地の張り合いのところもありますからね! 気力を保てるようにしないと!」


 しばらく写真を撮っていると、空が赤く染まった。ようやく周囲の雰囲気も正常に戻りつつあった。


「いやー、満足しました! かなりいい感じです! 次の新聞の写真、どれにしようかしら!」


「ハル、大丈夫ですか?」


「大丈夫、大丈夫だから……ブレヴフェンシア辺境伯閣下、無礼な物言いをして申し訳ありませんでした」


 ハルデは頭を下げる。


「そんな他人行儀な。今日はわたくし、1騎士、1仲間としてここにきているんですから、肩の力を抜いてくださいね!」


 さっきの今で、意識するなといわれてもハルデには無理だった。


「うーん、クロン殿の息子だし、もっとシャキシャキしたのを期待していたのですけれど、まぁ仕方ないですかね。さて、今日は私、そろそろ帰路につきたいと思います。近いうちにまた会いましょうね、『ドゥラクニール』、あと、『粉まみれのマキ』さん」


「ご期待に沿えずに……?」


「いいんですってば。では」


 手をひらひらさせて微笑むフォルキリエ。


 その後、フォルキリエは近くの騎士たちにあいさつし、ドルトニス卿と2、3言葉を交わしてから、ライトを点灯した魔法動力機関搭載のトラックに乗り込んだ。トラックはすぐに出発し、やがて見えなくなった。



 宴はその後も続いていた。<ガルデ・ディオ・コルナ>の騎士隊長であるマストック卿が、まるでお経のような歌を歌っている。


 ハルデとマキネカラビナは輪の端の方で、ゆっくりしていた。


 マキネカラビナが口を開く。


「あの、ハル。お父さんの話、聞いてもいいっすか。仇を討ちたいって……?」


「ああ、まあ、いいか。そうだな……父は、先代のガールマルフラ伯爵で、騎士団<ニスガルマルフラータ>、俺の故郷を守護する騎士団の騎士団長だった。領民には慕われていたみたいだが、俺にとってはとにかく厳しい人だったな。ずっと睨まれているような気がして……」


「怖いお父さんだったんすか?」


「怖い、か。わからないな。怖いといえば怖かったような気もするが、言われたことは大抵納得できた。とても感謝しているし、尊敬もしているんだ。して、いたんだ……」


「なるほど……それで、お父さんは、ええっと……亡くなった?」


 ハルデは首を横に振る。


「故郷の、ヴェルフラ市の戦いで亡くなった、ことになっている。遺体を確認したわけじゃないんだ。帰ってこなかったから死んだことになってるというか……気性からして生きているとも思えない。最後まで戦って死ぬ、そんな人だったように思う」


「そうっすか……」


「ああ……どうしてこの話を?」


 マキネカラビナはハルデの手に自分の手を重ねた。


「それは、私個人としては、ハルの敵討ちを応援するっす。無念な気持ちとか、悔しい気持ちとか、想像するしかないっすけど……たとえ復讐がしきたりとか風習とかで悪いことでも、騎士がたった1人で戦うのはもっと悪いことだと思うから……」


「マキ……」


 ハルデが顔を合わせられずに俯いていると、咳払いが聞こえた。


 振り向くと、先ほどまで歌っていたマストック卿が立っていた。側頭部を刈り上げた、40代くらいのちょっと気難しそうな騎士である。


 ハルデとマキネカラビナは慌てて手を放し、立ち上がろうとするが、マストック卿は2人を制する。


「よいよい。仲睦まじいようだな、第16対戦車騎士隊よ。早速だが、今日の蓄魔法素器の補給の書類についてなのだがね……」


 2人は顔を見合わせる。その書類はマキネカラビナが書いたものだ。


「ストリケパイラン卿が書いたものでしょうか、あの変わった字の……?」


 マストック卿は大きく頷く。


「うむ、その変わった字の書類だ」


 自分の書類だとわかり、慌てるマキネカラビナ。


「な、何か問題があったっすか……あっええと、ありましたでしょうか!」


 マストック卿は椅子を引き、ハルデとマキネカラビナと三角形を作る形で座った。


「いや、内容は全く問題なかったんだが、実はあの小娘に持っていかれてしまってな……内容を覚えているかね? 明日でいいのでもう一度書いてほしい。午前中だと助かるのだが」


「はい、了解っす、であります!」


「午前中に書いて提出させます。閣下、小娘とは……?」


 ハルデがそう問うと、マストック卿はため息をついた。


「ブレヴフェンシア卿の事だ。極めて自分本位で他人をかき回して、それでいて他人が窮地に立ったら救援に現れるのだ。救援される側にとっては窮地を救われるので、なかなか人気がある。腹立たしいことだ」


(補給申請の書類を奪っていく……業務妨害ではないのか?)


 こういう場合はどうなるのか、今度問い合わせようと思いながら、会話に戻る。


「腹立たしい、ですか」


「うむ。最初から増援に入ってくれていればいいのに、いつも窮地に陥ってから現れるのだ。その点、貴卿等は交戦に間に合ってくれたな。助かったぞ」


「あっ、いえ……しかし、私は……」


 前日の戦いを思い出す。戦車を撃破したのは間違いないのだが……


「逃げ出そうとしたかね?」


 なんでもない風にマストック卿にそう言われ、答えに窮する。見透かされているのか。冷汗が流れる。


「何だねその顔は……大丈夫、騎士団法は計画的に逃亡するのでなければ、内心逃げたく思うくらいで罰則を与えたりせぬ」


 そう言ってマストック卿はハルデの肩を叩いた。


「まぁ、聞きたまえ……3年前、我々は皆新米であった。それが齢いくつの騎士であろうと、実戦経験などなかった。2年前、カリノヴェイル大陸に上陸を許した時もまた、ほとんどの騎士が新米であった。マケトゥキア戦線の騎士はほとんど亡くなっていたからだ。そして今はというと、およそ4割が実戦を経験している。やっと戦えるようになってきたというのが正直なところなのだ。ちょっとの失敗くらいで挫けることはないぞ。貴卿らもきっと、これから立派な騎士になっていくのだからな」


「はい……」


 ハルデが悄然と頷くと、マキネカラビナは立ち上がり、ハルデに詰め寄る。


「ハル、本当に逃げようと思っていたんですか」


 ハルデには彼女が怒っているようにも、泣いているようにも見えた。拳が震えている。殴られるのを覚悟し、身構える。


 しかしマキネカラビナは、その拳でハルデの胸を叩いた。


「マキ?」


 拳は少しずつ早く、強くなっていく。


「ハルは、逃げ出したらダメっす! かっこよくないとダメっす!」


 そう言いながらなおも強くハルデを叩く。


「あんなに怖かったのに、わたし1人立ち向かうなんて無理なのに……」


「いたっ痛いぞ、マキ!」


「うちの裸を見たくせにぃぃ……」


 ハルデはマキネカラビナの両腕を掴んで、動きを封じた。


「それはお前の怒りと何か関係があるのか?」


 そう訊ねると、彼女はむにゃむにゃと要領得ないことを言った後、こう続けた。


「うちがポンコツなのはわかってるからぁ……頑張って付いていきますからぁ……置いていかないでぇ……」


 『騎士学校での成績を知っていて、ハルデは逃げようと考えた』と、マキネカラビナは思っているのだろうか。ハルデがそんなことを考えてるうちに、マキネカラビナは泣きながら、ハルデの胸に顔を埋めた。ハルデは手を放し、そんな彼女の肩を掴んで、まっすぐ立たせる。


「マキ……今日、俺はお前のおかげでここにいる。もう逃げたりしない。お前にはたかれた時、本当に腹が決まったんだ。お前がポンコツかなんて関係ない。共に征こう、共に戦おう……マキ。『かっこいい騎士』になって、魔族をこの連合帝国から追い出して、故郷を救おう」


 すると、マキネカラビナは大きく頷きながら、一際大きく泣き出してしまった。


「はい、はい……ハルぅぅぅぅ……」


 ハルデは泣きじゃくるマキネカラビナが泣き止むまで、その肩を抱き、背中をやさしく叩き続けた。


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