ドラゴンランドで手に入れた、宝もの
コンデッサとドラ・ニャンニャンは、ドラゴンランドの中へ入りました。
中はとっても賑やかで、人がいっぱい居ます。みんな、楽しそうにしています。
「コンデッサ、見てください。門番がわたしたちへ与えた、挑戦状を。『ドラゴンランドへやって来た、勇者たちよ。竜の秘宝が欲しければ、全ての試練をくぐりぬけ、その証拠を手に入れるのだ』と書かれていますよ!」
「……それ、入場係の人がくれたパンフレットだろ。『ドラゴンランドへご来場の、お客様へ。全てのアトラクションを回ってスタンプを集めた方には、記念メダル《竜の秘宝》を差し上げます』と書かれているな」
「…………」
「…………」
「いっこくの猶予もありません。さぁ、コンデッサ。試練へと向かいますよ!」
「せっかく来たんだしな。出来るだけ、たくさんのアトラクションを回ってみるか、ドラニャンポップ」
「わたしの名前は、ドラ・ニャンニャンです!」
2人は、ドラゴンランドの試練に次々と挑みました。………いえ、アトラクションを楽しみました。
「竜の大車輪ですね!」
「これは、観覧車だよ」
「速いです! 竜の超高速です!」
「これは、ジェットコースター」
「わ~、落ちます~! 竜の大落下です~」
「これは、バンジージャンプ」
「ぶるぶる。竜には恐れるものなど、ありません!」
「お化け屋敷に無理に入る必要は――」
「全ての試練を乗り越えるのです!」
「はいはい」
♢
お昼になりました。
お腹がすいてきた、コンデッサとドラ・ニャンニャンは――
「お昼ご飯を、食べましょう」
「レストランは、ここみたいだな。どれどれ、メニュー表は……」
2人は、メニュー表をのぞき込みました。
「…………」
「…………」
コンデッサもドラ・ニャンニャンも、無言になってしまいました。書かれているメニューの名称が、不思議なものばかりだったためです。
「……迷っていても、しかたが無いな。うん、決めた。私は、《ランチ・華麗なるドラゴン》にしよう」
「わたしは、《ランチ・ちょっと、素敵なドラゴン》にします」
注文してしばらく経つと、2人の前に料理が運ばれてきました。
「〝華麗なるドラゴン〟とは、カレーライスのことなのか」
「わたしの〝ちょっと、素敵なドラゴン〟は、ミニステーキです」
《華麗なるドラゴン》と《ちょっと、素敵なドラゴン》――どちらも、とても美味しいランチでした。
料理を食べ終えても、コンデッサはまだ満腹ではないみたいです。
「デザートに私、ドラ焼きを食べよう」
「ド、ドラ焼き? ドラゴンを焼くのですか!? そんな恐ろしいデザートがあるなんて……」
「全然、違う。ドラ・ニャンニャンも食べてみろ」
2人は、ドラ焼きを食べました。
「ドラ焼きの味はどうだ? ドラニャンプリン」
「カステラで、餡子を挟んでいるんですね。甘くて、スッゴく美味しいです。あと、わたしはドラ・ニャンニャンです」
♢
午後も午前と同じように――
コンデッサとドラ・ニャンニャンは、ドラゴンランドの中のアチラコチラを回ります。
「竜の大海洋ですね!」
「ここは、温水プール……」
「竜の大洞くつです」
「ただのトンネル」
「竜の大砂丘です」
「砂場」
「竜の騎兵隊!」
「メリーゴーランド」
「竜の大迷宮です! むむ、ここは突破が難しい――」
「ハリボテ迷路だな。…………ほら、すぐに抜けられたぞ」
♢
もう夕方です。
「いよいよ、最後の試練ですね。竜の大行進に参加しなくては……」
「来場客が参加する、仮装パレードか」
最後の試練(?)に挑戦しようとしている2人のところへ、ドラゴンランドのスタッフさんがやって来ました。
「お嬢さんたち。パレードに加わる前に、この竜の角とシッポをつけてくださいね」
「了解した。どうだ? 似合うか?」
角とシッポの飾りをつけたコンデッサは、その姿をドラ・ニャンニャンに見てもらいます。
ドラ・ニャンニャンは大喜びで、パチパチと拍手しました。
「わ! スゴいです、コンデッサ。まるで、アナタもドラゴン族になったみたいです」
興奮気味のドラ・ニャンニャンへ、スタッフさんが話しかけます。
「こちらのお嬢さんは、ドラゴンランドに入場したときから、手作りの角とシッポをつけてくれていたんですね。スタッフの1人として、たいへんに嬉しいです」
スタッフさんは、ニッコリと笑いました。
「それにしても、お嬢さんの角とシッポは、本当に良く出来ていますね。本物としか思えません」
「わたしの角とシッポは正真正銘、本物です~!!!」
♢
竜の大行進が、終わって。
コンデッサとドラ・ニャンニャンは、てのひらサイズのメダルをスタッフさんからもらいました。
「やりましたよ! コンデッサ。わたしたちは、今日一日のうちに全ての試練をクリアしましたので、見事に竜の秘宝を手に入れることが出来ました! キラキラしていて、キレイですね~」
「いや。このメダルは来場者へのプレゼントで……裏には『全アトラクション・クリア記念メダル』という文字が刻まれているし……」
ドラ・ニャンニャンは満面に笑みを浮かべながら、コンデッサへ抱きつきます。
「これもみんな、コンデッサのおかげです。ありがとうございます。わたしは、とっても嬉しいです」
「まぁ、お前が喜んでくれるのなら、それで良いか」
「わたしたちの友情の証ですね!」
「……そうだな」
コンデッサのほっぺたが、少し紅くなりました。
「あれ? コンデッサ、ひょっとして照れています?」
「な! 私は、照れてなどいないぞ! ……じゃ、日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか、ドラニャンパシー」
「ドラ・ニャンニャンです! まったく……わたしの名前をしょっちゅう間違えるとは、コンデッサにも困ったものです。う~ん。良い機会だから、名前を変えてみようかな? もっと華麗で素敵でカッコイイ……コンデッサが、ぜったいに間違えないような名前に……」
♢
ドラゴンランドへ遊びに行ってから、月日は流れ……。
コンデッサにもドラ・ニャンニャンにも、いろいろな出来事がありました。
正式な魔女となったコンデッサが、〝ツバキ〟という名の黒猫を使い魔にしたり――
〝ドラゴン・レディ〟と名前を改めたドラ・ニャンニャンがドラゴ山に住んで、2匹の猫の面倒を見たり――
でもコンデッサも、ドラ・ニャンニャン改めドラゴン・レディも、仲良しであり続けました。
2人ともドラゴンランドの記念メダル――竜の秘宝をズッと手もとに置き、いつまでも大切にしていたということです。
ツバキ「つまり、ドラゴン・レディ様が今の名前に変えた理由は、ご主人様が呼び間違えたりしにゃいように……」
ドラゴン・レディ「いいえ。それは、関係ありません。〝ドラゴン・レディ〟のほうが、カッコイイからです」
コンデッサ「どっちでも良いさ。友だちは〝友だちであること〟が、大事なんだ。名前を気にしても、しょうがないだろう?」
ドラゴン・レディ「そこは、気にしてください」
コンデッサ「それより今度、みんなで一緒にドラゴンランドへ遊びに行こう!」
ドラゴン・レディ「わ! 嬉しいです。けれど、わたしの猫――ハッピキとサンビキは、どうしましょう?」
コンデッサ「あそこは『ペット同伴可』だったはず。だから、ツバキも大丈夫だ。安心したか? ツバキ」
ツバキ「アタシは、ペットじゃ無いニャ! 使い魔にゃん!」
コンデッサ「ごめんごめん」
ハッピキとサンビキ「ニャンニャン」
ドラゴン・レディ「それじゃ、コンデッサのホウキにみんなで乗って、行きましょうね」
コンデッサ「え゛?」
~おしまい~
♢
ご覧いただき、ありがとうございました!