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俺様公爵様は平民上がりの男爵令嬢にご執心  作者: 狭山ひびき


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迷路迷路迷路‼ 4

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 目を覚ますと、ベッドの上にいた。


「……………………なんで?」

「なんでじゃない、このお転婆聖女が」


 茫然とつぶやいた自問に答えが返ってきて、セレアはぎょっとして横を見た。

 すると、ベッドの縁に浅く腰かけたジルベールがいて息を呑む。


「なんであんたがここにいるの⁉」

「自分の家だからな。そんなことよりも、外で寝たら風邪を引くぞ。まあ、迷路の中にうかつに入り込んで出られなくなったんだろうがな」

「うぐ……」


 すると、セレアを迷路から出したのはジルベールだろうか。

 腹立たしいような悔しいような恥ずかしいような複雑な気分で、セレアはむっつりと黙り込む。


「気分は?」

「最悪よ!」

「そういう意味じゃない。体調は崩していないかと聞いているんだ。薄着で一晩中外にいたんだぞ?」


 セレアは虚を突かれて、ぱちぱちと目をしばたたいた。


(どうしてジル様がわたしの体調を気にするわけ?)


 不思議に思いながらも、セレアは視線を落として自分の体に意識を向ける。熱っぽくもないし、気怠くもない。強いて言えばお腹がすいたが、それは体調不良とは言わないだろう。

 最後ににぎにぎと手を握ったり開いたりして、セレアは視線を上げた。


「平気だと思う」

「そうか、ならいい」


 安堵の響きのある声。


(変なの)


 セレアが体調不良だろうと、ジルベールが気にする問題ではないだろうに。

 むしろ体調不良の方が逃亡する元気がなくて万々歳ではないのか。

 ジルベールが欲しいのは聖女の力で、セレア自身ではない。生きてさえいればいいのだから、セレアの体調を気にする必要はどこにもないはずだ。


(それに、逃げようとしたことを怒らないのもおかしい気がするわ)


 ジルベールはセレアをここから逃がすつもりはないのだ。未遂に終わったが、セレアが逃亡しようとしたことを怒るのが普通だった。


 よくわからない。

 目の前の、ジルベールと言う男が。


 ジルベールは、セレアにとっては強引でいけ好かないやつだ。

 セレアの自由を奪い、見張りをつけて部屋の中に閉じ込めている。

 贅沢な暮らしはさせてくれているけれど、だからと言って、これでは翼を切られた籠の鳥だ。

 自由や意思を奪われて、餌を与えられているだけの存在に違いなかった。


 だから嫌い。

 早くこんなところか逃げ出したい。

 そしてジルベールやほかの貴族たちの手の届かないところで、自由気ままに暮らしたい。


 だというのに――セレアのことを心配そうに見つめる目の前の男の視線は、嫌いではないと思ってしまう。

 そしてそれが、ものすごく癪だった。


「あとでニナに謝っておけよ。ものすごく心配していたみたいだからな」

「……わかった」


 どうしてわたしが謝らないといけないのだろうという反感もあったが、元凶は目の前の男でニナは悪くない。優しいニナが心配していたと聞くと心苦しくもあったので、彼女に対しては謝罪しておくべきだと思った。ただ、ジルベールには絶対に謝ってなんてやらない。

 セレアのそんな心の中の葛藤がわかったのか、ジルベールはベッドに手をついてこちらに身を乗り出してきた。

 ぺちん、と軽く額を叩かれる。


「いたっ」

「周りの人間に心配をかけるな」

「あんたに言われたくないわよ!」


 額を抑えて睨めば、ジルベールが不思議そうな顔で「そんなに強く叩いていないんだが」と言った。確かに驚いただけでそれほど痛くなかったけれど、これは気分の問題だ。


「あまりおいたがすぎると、お仕置きで食事を抜きにするぞ」


 それは嫌だ。

 むーっと頬を膨らませると、ジルベールがぷっと噴き出した。


「ドングリを口いっぱいに詰めたリスみたいだ」

「うるさいっ」


 セレアは怒っているのに、ジルベールが楽しそうなのが許せない。

 セレアはツンとそっぽを向こうとして、ふと、鼻先をかすめて匂いに眉間を皺を刻んだ。


「どうでもいいけど、あんた、酒臭いわ! 匂いが移るから近づかないで!」


 精一杯の仕返しとばかりに言い放ってやれば、さすがにこれにはジルベールも腹が立ったらしい。


「お前はもう少し、淑女らしさを身につけろ!」


 怒って怒鳴り返して来たジルベールに、セレアはべーっと舌を出す。


 淑女らしさ?


 貴族社会からおさらばしようと考えているのに、そんなものが必要なるものですか! べーっだ!





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