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閑話 ペディロ


 時間は怪我をした少女、ラムを家に置き精霊が視え聞こえると聞いた時まで遡る。



 場所は自分の家の居間。

 四人がけの木の椅子とテーブル。

 紅茶やコーヒーが置かれている棚があった。

 そこで、椅子に座りながらペディロはコーヒーを飲んでいた。

 側にラムとムス、ムスの頭の上には闇精霊であるデネブラのコーグがいて雑談中。

 ユリアは今は洗い物中でいない。


「ラム、せっかく来たならお勧めの甘い物食べたくない?」


「食べたい!」


 ラムは目を輝かせて頷く。


「明日、新作が出るって!」


 ムスはいつの間に入手したのか、王都にある菓子店のチラシを広げていた。


「ーー!可愛い!」


 ラムはチラシを見ながら、熊のケーキを指さす。


「その『ナーシャ』は焼き菓子も美味しいよ!最近、バターとジャムを増やしたって聞いた」


「おすすめ?」


「コーグもお勧め!クッキーさくさく!」


 ムスの頭の上でコーグは跳ねる。


「お店、たくさんあるね」


「時間あったらケーキバイキング行かない?最近、始めたらしくて色んな種類食べられるし、時間制限はあるけど2人で行けば全種類食べられそう」


「食べる!行く!傷治ってから山程食べたい!」


 わいわいと嬉しそうにチラシを覗き込む2人。

 楽しそうだ。


(距離が近すぎる。甘い物好きとわかった瞬間、はしゃいでいるようで、女性に対しての距離の取り方ではない)


 ペディロは心の中でため息を吐き、注意するために口を開く。


「ムス」


「父さん、甘い物の食べ歩きしていいよね!?」


「それは構わないが」


「やった!許可出た!ラム、絶対に食べに行こう」


「絶対に食べる」


「そうしよう。お店は俺だけ不在にして営業してて貰えば大丈夫」


「コーグも!コーグも食べたい!」


「お土産としてコーグが欲しいのも買って帰ると」


「私が大好きなやつ買うよ。お金は引き出せばいいから」


「やったー!!楽しみ!」


 飛び跳ねて喜ぶ。


「ムス、ラムさんと距離が近すぎる」


「え?」


「?」


 ムスとラムが揃って顔をあげる。

 もう少しで鼻と鼻がぶつかるぐらいだった。


「わ!あ、ごめん!近すぎだった」


 ムスは慌てて離れる。


「気にしてない。ただ、当たったら痛いから気をつけるね」


(ラムさん、そこは気にしないと未婚の女性として危険なのだが、、) 


 ペディロは内心で頭を抱えた。


「ムス」


「何?」


「2人でいくつもりか?」


「コーグも一緒!ね!」


「うん!コーグも一緒にいく!」


「コーグも一緒です」


 コーグと2人は頷く。


(ーーー噂になりそうだが、良いのだろうか?)


 ペディロはムスを見るが楽しそうに笑っていた。 


(ラムは目鼻立ちが整っていて所作に気品があり綺麗。急に現れたが、ワイバーン討伐で力を披露し注目されている。悪い子には見えず、どこかぽやっとしている。

 商店街の連中はムスがお人好しで誠実。顔は普通だが、女性と今まで一緒に長期間いたことはない。近所のお母様方が年頃なのに彼女がいないのを嘆いていると聞く。

 その2人が一緒に楽しそうにお菓子店を練り歩いたらどうなるか予想はつく。

ーーまぁ、いいか。2人にはコーグもいるということで2人きりではない。だが、一般的には2人きりで食事をしていると周囲に見えるのを気づいているか、どうか)


 楽しそうに話す2人とコーグの邪魔をするのはよくないと思い、ペディロは黙っていた。



 ーー後日、お茶菓子を買いにあらゆる店で仲良く買い物をする2人が目撃される。あまりに仲が良すぎて恋人同士ではないかと噂を流した者がいた。その噂はたちまち商店街にすぐに知れ渡った。ある者は涙を流して喜び、差し入れを店に持ってくるほど感激したり、細やかに祝福している者もいた。ほぼ、商店街は祝福ムードだった。

 そんな様子が面白かったため、ペディロは噂を否定も肯定もせずに傍観。

 2人は噂等は知らずに日々を過ごしていた。


「ペディロ、2人共どう思う?」


 黄色いワンピースを着たユリアがペディロに話しかける。

 今は2人きりだ。


「どうとは?」


「ラムちゃんがムスと付き合ってくれるかよ!ムスが珍しく連れ回しているじゃない。ラムちゃん、家に来てくれないかしら?」


「それは当人が決めることだろう。私達がとやかくいうことではない。そもそもラムさんにそんなつもりはない。ムスは心配で目の届く場所に置いているだけだろう。恋愛感情があるかは謎だ」


(私にはムスがラムさんを気に入っているのはわかる。ただ、恋愛感情かは微妙なところだろう。恋愛感情になるかもしれないが)


「えー。ペディロは気に入らないの?私はラムちゃん大好きなのに。うーん、何かしようかしら。プレゼントとか、、」


「ユリア、やり過ぎは止めなさい。ただでさえ、迷惑をかけているだろう。それに、私は気に入らないとは言ってない。善良でいい子だ。いつでも遊びにきて貰って構わない」


「気に入ってるのね!なら、やっぱりいっぱい居てもらえるように努力しなきゃ!」


「やり過ぎだから止めなさい。プレゼントは誕生日に贈りなさい」


(変な方にやる気を出さないでくれ。碌なことにならない。過去に近所に引かれるほどお裾分けを持っていったのを忘れたのだろうか)


 ペディロは釘を刺す。


「うっ!」


 ユリアの顔が歪む。


「それに、仕事が来そうだ。せっかく、ムスが楽しそうにしているのに邪魔なことが」


「えっ」


「仲間と友から手紙だ。ラスティー国が危ういと。別荘に避難しろとは言っておいた。全く、、」


 ペディロが黒い手紙を魔法で手に出す。


「準備は?」


 ユリアは真面目な表情で聞く。


「戦闘用に薬草ぐらいだ。大規模になる前に終わらせる。ーーいや、すぐに終わらせる。息子が楽しんでいる時間を邪魔するなら、大将の首を真っ先にとばすまで。どう転ぶかはわからないが」


「ーー食べ物と薬草を多めに買うわ。後は武器の手入れね。何もないといいけど」


「ああ。頼む。ーーユリア」


 ペディロは席を立つ。そしてユリアの側まで来て声をかける。


「何、、。えっ」


 ユリアが顔をあげるとペディロがユリアの頬に口を軽く触れさせた。頬にキスしたのだ。


「え、、。えっ!?」


 ユリアの顔が真っ赤になる。

 後で事実がわかったのか、呆然としていた。


「仕事に行ったら暫く会えないかもしれないから」


(いつまで経っても可愛らしいのは変わらないな)


 ペディロは笑って理由だけ言うと、食器を片付ける。

 その後、王宮に召集がかかったのだった。


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