ムスと侯爵
「ムスー!!ダースが呼んでるよー!!」
コーグはムスの頭の上にのり、飛び跳ねる。
「もう少し!」
(今、いいところ!色が七色になるように絹糸を縫ってる。さらに、透明感のインスピレーションが!)
ムスは銀色と蒼色を交互に縫い、身体に色を加えていた。
「ムスー!!侯爵が呼んでるーよー!」
コーグはさらに激しくムスの頭の上で跳ねる。
(もうちょっと!)
「ムスー!侯爵様が呼んでるよー」
コーグがムスの頭の上でボヨンボヨンと跳ねている。
「あ、あと、もう少し!!」
ムスはコーグの振動に邪魔されているにも関わらず器用に刺繍している。
「ブーブー!3分経ちましたー!」
しっかりコーグは時間を数えていた。動かないムスにさらに振動を加える。
「うっ!わ、わかったから、ボヨンボヨンしないで!しかも、目の前!」
コーグの身体が伸びて、ムスの顔を覗き込む。
刺繍糸と針が見えないように覗き込み、ボヨンボヨンと跳ねて振動を与えるという器用なことをしていた。
「うう、もう少しなのにー」
ムスは諦めて刺繍糸と針を刺していた布を押さえている刺繍枠ごと机に置く。
「ムス、兄は気が短いよ?」
ラムはムスのそばに寄り、事実を言う。
「え゛」
ムスが固まる。
(さ、3分たったって。3分)
「作品持っていけば大丈夫だろうけどね。どれ、、わっ」
ラムがムスの刺繍を見ると綺麗に刺繍されたフェニックスの身体がキラキラと七色に輝いていた。
「綺麗、、」
ラムが目を輝かせて作品に魅入っている。
「あー!まだ、完成してないから駄目!見ちゃだめ!瞳は刺してないし、コーグはいないし、もう少し動きが欲しいから黄色とオレンジ上からさして、青色を隠しながら胴体に厚みをもたせて、足りなかったら緑や紫も足さなきゃだし、フェニックスのオッケー貰ってないから!」
「まだ、未完成?」
ラムはそっと刺繍枠を反対にして作品を置く。
「そう!まだ、納得できるものではありません。まだ、刺したりません。半端はだめ」
「そうなの、、。完成じゃないの。完成するまで家にいる?」
「ラムの聖獣だよね?なら、完成まで滞在許可貰えるなら、いるけど」
(そもそも、放っておけないからいるつもりだったのだけど)
「レオン」
「お嬢様のお客様としてですね、侯爵様に許可を貰いましょう。伝えておきます」
「お願い」
「コーグも!コーグもいてもいい?」
「コーグは許可いらないから、大丈夫。むしろ、私の家は精霊だらけだよ。明日になったら、ルミニスもトニトもウィンディーネもシルフもノームもグラキもたくさんくるよ。デネブラだっている。山のような精霊が押し寄せたりしなかったりだから、大丈夫だよ。精霊は出入り自由で、好きにきて好きに遊んでいいの。壊したら報告しなきゃ駄目だけどね」
「わーー!みんな、たくさんいるの!?ムス、明日、遊んでいい!?」
「いいよ。いっぱいいるなら、楽しいだろうし。俺も作業してるから。遠くに行くときだけ言って。心配するから」
「うん!言う!やったー!」
コーグはムスの頭の上でぴょんぴょん跳ねる。
(他の精霊達かぁ。久しぶりだもんなぁ。森が燃えてからみてない。皆、保護してもらったから、無事だけど会ってないし、嬉しそう。振動は我慢しよう)
ムスはコーグの振動により、頭が揺れていた。
「ムス様、侯爵様がお待ちですので」
「はい。すいません、コーグいくよ」
「うん!」
コーグはムスの頭の上に大人しく座り、ムスは執事のレオンに連れられて庭を後にした。
「レオンさん、侯爵様怒ってますか、、?」
ムスは執務室に向かう廊下で青ざめながら、執事のレオンに恐る恐る尋ねる。
「いいえ。時間には煩い方ではありますが、大丈夫ですよ。ムス様なら。こちらです」
ムスをある扉の前に案内する。
「ムスです」
「コーグだよー!」
「入って良い」
中から返事が返ってきたため、ムスは扉を開けて、室内に入る。
本棚が壁一面に並べられ、大量に本が収納されている。
窓は上質な絹のカーテンが敷かれていて、木漏れ日が漏れていた。
下は全て質の良い絨毯が引かれ、4人がけのテーブルと椅子。
机にインクと万年筆、山積みの書類の処理をしていたダースが顔を上げる。
「コーグ様、こちらに」
執事は子供用のお客様椅子を近くに置く。
その椅子にはふわふわなクッションが敷かれており、高さが調節されていた。
「ありがとうー!」
コーグはラムの手から降りて椅子に座る。
コーグの大きさピッタリだった。
ムスはレオンに促され、隣の椅子に座る。
「さて、ラムとはいつ会ったか聞かせて貰おう」
わざわざ、ダースはムスの隣の椅子で座る。
レオンは扉の前にいた。
「えーと、外ですね。王都からバラーヤイヤーへ向かう森の途中。ゴブリンが異常発生していて、殺気だっていて」
「ムスー、姿見てないよ?」
「でも、あれはラムだったから、探知したのが最初でいいと思うよ?」
「待て。お前の職業は?」
「あ。俺は魔技師です、侯爵様。父が魔法師、母は拳闘士。そのため、戦闘は嫌いですけど、その殺気立った状況の合間の道を通って、王都に帰るのは可能なので歩いていました」
「ーーー魔技師は確か〈見破り〉と〈修復〉、〈祝福〉、〈呪返し〉、〈付与〉が使えたはずだな」
「ーーー。やっぱり、侯爵家だと技能は知っていますか。俺は〈見破り〉はかなりの域に達してまして、魔法の陣や魔法の発動、魔工品は看破できます。殺気もわかります。看破できないことは、いままで、、、何回か、です。古い呪物はわかりませんけど、どういう物なのか、は、わかります」
「どういう物とは?」
「呪がかけられているか、祝福か。または、手を出したら溢れるか、壊れるか。後は弱まっているか。危険なものと手に負えないものもわかります。何とかしないといけないのも。ラムのネックレス。あれは、どこのですか?あれは封印です。解けたらラムが危ないですよ。現に危なかったです。呪い。強すぎる力。蝕むような感じの」
(身代わりをつけて、修復を同時にかけてるから、悪夢は見てないからいいけど、侯爵の力で返せるなら返した方がいい)
ムスははっきりという。魔技師の技能がわかるなら、話が速いからだ。
「ーー本物だな。あれは、他の魔技師から無理だと言われた。修復したのか」
「あくまで、応急処置です。壊れるから身代わりを仕掛けて誤魔化してますが、返した方がいいです」
「あれは、返せない。教会からラム意外に魔力で力技で抑えられないからだ」
「げっ。教会の遺物なのかぁ、、。なら、解けたらやばいのがいるか」
「ムスー?ポイ駄目なの?」
「間違えなく、ラムが魔力で一回抑え込んで止めたってことだから、標的にされた。で、止めないと危険だったから、捨てたらすぐ封印が解ける。教会は呪いが弱まるのに、それでも崩壊するならラムが持ってないと危険。つまり、浄化を自動でかけてる」
「ーー話が速い。この話はそれで終いだ。ラムと会ったのはわかった。それからどうした?」
「危ないので追いかけたら、集団でゴブリンが襲いかかったので、ラムは離脱を図りました。でも、追ってきたので、俺も追いかけて、ゴブリン蹴散らしていたのですけど」
「ラム、あり得ないぐらい魔法詠唱スピード速い。近づく前に殲滅してたけど、数が多くて苦戦してた」
「傷が開いていたので、、あれがなかったら俺は要らなかったかなぁと。協力を申し出たら大魔法でゴブリン一掃して戦闘は終わりました」
「その後にラムが倒れたから運んで家に連れ帰ったー」
「身元わからなかったので、無理矢理通して、とりあえず家に置くことにしました。ーーあの、俺は侯爵令嬢だと知らなくて、、」
「ーー事情はわかった。礼を言おう。助かった。ラムはこうだというと、出ていくし、魔法はすり抜けるし、腕は良いから止まらない。本当に助かった」
侯爵は頭を下げる。
「うわぁぁあああ!俺、殺されますから!頭上げてください!!怖い、怖いです!」
ムスは悲鳴を上げる。
「そうか。で、ムスはラムの弾くのが効かなかったか」
「ええ、俺は魔力多いので効かないのではないかと、父が」
「なるほど。ラムと魔力が同等にあるような人はいないと思っていたが、実在したか。抵抗はできるのではないかと聞いていたが、、初めてみた」
(これだと、魔力が同等なら抵抗できて弾かれないということみたい。よかったー。違う理由じゃなくて)
ダースは頷いている。
「ラムと同等の魔力はムスだけだろうねー。そんな魔力もちいないよー」
「だろうな。規格外が2人もいたことに驚きだ。ムス、魔技師として聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「妹のアルマが魔工品を持っていると思われるのだが、どれくらいの威力かわかるだろうか?製作者が亡くなって、わかず仕舞い。本人もいないし、探しても見つからない。困っていてな」
「もし、設計図あるならかけられてる物が全てわかりますが、、。ーーーん?居場所わからないのですか?魔工品に探知魔法入っていると思いますが」
(時期王妃には追跡と保護をつける決まりのはず)
「ーームス、今なんていった?」
「探知魔法」
「ーーラムを呼べ。探知魔法なら解析が」
「普通の探知魔法ではなく細工されてると思います。魔工品作成者しかわからないように。製作者はラーさんですよね?」
「なぜ、わかる」
「魔技師間で情報のやりとりしてますから。ラーさんとは知り合いですし、時期王妃様なら、一番いい腕の人に作らせますから。えー、ラーさんが製作者なら設計図があれば、わかると思います。見たことあるので」
「居場所がわかると?」
「かけられた指定された魔工品があれば。指輪ですか?腕輪ですか?」
「2つほど持っている。一つは婚約指輪、もう一つは腕輪だな」
「婚約指輪の方が間違いなく探知魔法がありそう。後は探知魔法を全域にかけて、反応を調べる必要があります。何日かかかるかもしれないですが。コーグ、制御」
「ムスー、ラムに頼んだほうが速いよ?ラム、魔力高いし制御うまいし、説明したら、現地まで飛ばして様子みれるよ。それぐらいできる」
「ああ。妹はできるだろう。ラムを呼ぼう。質問攻めに合うだろうが、覚悟してほしい。レオン、ラムをここに」
「はい、かしこまりました」
「コーグとムスはこのままで」
ダースがそう言うとレオンは移動を始めたのだった。




