侯爵家の庭
「残念」
コーグがムスの頭の上で悲しそうに縮こまる。
ラムは侯爵家を案内しながら庭を目指す。
廊下は綺麗な赤に金色や銀の刺繍がされた絨毯が敷かれており、扉や手すりの木はピカピカに磨かれていた。
何個も大きな扉の前を通り過ぎる。廊下に飾られている装飾品は壺や花瓶が綺麗に磨かれ、絵も繊細な風景画が多く飾られている。
「仕方ないから。びっくりして心臓止まるかと思ったよ。本当に」
(あれは射殺せるぐらい怖い視線だよう。魔力も透けて見えるって怖いし、強いだろうし)
ムスはコーグを乗せたまま震える。
「他にもたくさん精霊いるから、大丈夫だと思うよ。明日には大量に来ると思う。庭にフェニックス待機しているから、私はティータイムしながらみようかな。ムスはティータイムいる?」
「いる。でも、集中すると飲まないかもしれないけど」
(侯爵家なら絶対に美味しいもの出すだろうし、ラムのいれる紅茶は美味しい。食べたいけど、忘れそう)
「いいよ。私がいれるから。ああ、メイドに糸と布を運ばせなきゃ。それと、コーグ用に厨房に使いをだす必要あるね。コーグ、何食べたい?」
「コーグ、じゃがいも!じゃがバターか、スープパスタ!」
(遠慮なく飛び跳ねて、要望いってるー。ラムがコーグに甘いのを知ってるから、甘えてるー)
庭に向かう廊下何人もメイドとすれ違う。
ラムは近くにいたメイドに言伝し、通り過ぎる。
(ラムの言葉一つで、用意されるって侯爵はラムを信頼しているむたい)
「これで大丈夫。庭はここ」
ラムのお気に入りの庭の扉をあける。
鬱蒼としげる草木に整備された石畳の通路。木々たちに太陽の光が硝子を通して木漏れ日となって当り、背の低い薔薇やラベンダーが花を咲かせる。
水が流れる小道に、石畳の通路は涼しげに続いていて、真ん中の少しだけなだらかな丘になっている場所に白いパラソルとテーブルに机が置かれていた。
「お嬢様、お持ちしてました。全て机に並べております。ティーセットとお菓子は脇に置かせて頂きました。お好きなだけどうぞ。肌寒いと悪いので膝掛けをお使いください」
入口で礼をしてメイドは伝えると、部屋から退出した。
石畳の通路を歩きテーブルまでくると、机には上質な糸と、布。脇にはスコーンにパイにケーキにクッキー等の山のようなお菓子にティーセットが置かれていた。
さらに奥のラベンダー畑でフェニックスが佇んでいた。
(めちゃくちゃ七色に輝いていて綺麗!!間近で見れるなんて、夢みたい!ラムの聖獣だったなんて知らなかったし。クリスマスに祝福イベントで呼ばれて遠くで飛んでいるのしか見たことないから)
ムスは目を輝かせて、フェニックスをみる。
「ムス、お菓子たくさんあるよ。食べよ!コーグは?」
「たーべーる!」
ラムは心なしか嬉しそうな声をあげる。
コーグはムスの頭の上から降りて、椅子に座る。
屋敷の物が用意した椅子は座高が高く、コーグが座って物を食べるにちょうどよい椅子を用意してくれたようだ。
(作業し始めたら絶対に食べない)
「俺の分取ってて!コーグ、収納!」
「うん!1種類ずつ収納する」
コーグは魔法で綺麗に1種類ずつお菓子を取り出して小さくし、手の中で握ると物が消えた。
「よし、フェニックス待たせてるから、おーい!」
庭のラベンダー畑で佇むフェニックス。会話が終わるまで待っていてくれたようだ。
「フェニもお菓子食べる?」
(フェニックスお菓子食べるの!?可愛い!しかも愛称でフェニックスを呼んでる。仲良さそう!うわぁー。俺も聖獣と仲良くなりたい。コーグみたいに可愛いかもしれない)
「いただく。どのようなポーズがいいのか?」
頷くとムスに質問する。
「翼を広げてくれれば、後は楽にしてていいですよ。コーグは動き回って勝手にするぐらいですから」
(コーグは姿を見せたら動き回るぐらい、やんちゃだから、じっとしていなくてもできる。むしろ、動かないと光が七色にならないから、困る)
「それは、絵をかけないのではないか?」
「いや?絵は大体でいいから。色は目に焼き付けて、大まかに刺繍しながら色を調整していくだけだから、大丈夫。何回もみるから」
「ならいい」
フェニックスはラムが差し出しているクッキーを食べた。
「うーん、やっぱり七色だぁー。綺麗ー!!」
(動くとキラキラしていて、とても綺麗)
まずは、ムスは自分のバックから写し紙を取り出し、ポケットにさしてあるペンにフェニックスを摸写し始める。目は輝いていて楽しそうだ。
ラムはその間に紅茶を入れて蒸らしていた。
テーブルの左端に布と糸をまとめて置いておく。
(まずはーー、どんなポーズがいいか決める)
フェニックスは花を見ながら、ムスを時折見て、ラムを見つめている。
(ーーー空。飛ぶ。炎であり、燃えない炎。コーグは喜びーー、うーん。やっぱり翼を広げる庭が下にあるイメージで。ただ、庭は刺繍しない。それでいい、その方が綺麗)
ムスは頭の中に図案を浮かべ、フェニックスの形を描いていく。
まずは下書き。
(コーグは後入れのため、色は後で。浮かび上がるフェニックスは綺麗だ。後は色糸も綺麗だし、七色を表現できるか。あの七色糸がないため、上質な絹でもまぁ、表現できなくはない)
さらさらとフェニックスを見ながら、ムスは描いていた。




