人物
ムスとラムは岩場に隠れている。
トッ、トッ、トッ。
足音が岩場に響き渡る。
「ーーーきたみたい」
ムスが小声でラムに話しかける。
「うん」
ラムは頷いて、岩場の隙間から覗くが、やはり見えなかった。
「見えない?」
「見えない」
「コーグだよーん!」
コーグの姿が現れて、ムスの頭の上に乗っていた。
(よくわからないタイミングできた、、。コーグは元気だなぁ)
ムスはコーグの報告を待つ。
「1人は深緑、1人は金髪だったよ。ただ、ラムに似てはいなかった。フード被っていた方が深緑」
そう報告するコーグはムスの頭の上で身体を伸ばしていた。
「じゃあ、、アルマじゃないかも。武器持って騎士の格好はしないし、染めるならブロンズとか茶色の方が違和感ない。拳闘士ぽい?」
「1人は前衛職じゃないと思うー。精霊は見えそうだけど、微妙な感じ。あ。アルマは精霊が見えるの?コーグ、気になる!」
コーグがラム近くで飛び回る。
(後で遊ぼって強請るつもりだー。コーグは平常運転だなぁ)
「アルマは見えるよ。シルフが大好きで側に浮いてるから。いつもべったり。置いていかれたから、怒ってそう」
風の精霊、シルフ。姿は小さな女の子で、足はつむじ風のようにぐるぐる回っている。色はクリーム色で、周囲をよく飛び回っていて、一箇所に留まるのが嫌いな精霊だ。
「あの気まぐれシルフが?べったりなの?凄まじい気に入られようでは?」
(シルフはすぐどっかに飛んでいってしまうぐらい活発な精霊なのに)
ムスが目を丸くする。
「シルフかぁー。じゃあ、違う人だよー。気配的にウィンディーネだから。もう1人は見えない。才能がない。どうする?」
コーグがムスの頭の上に戻り、2人に聞く。
「アルマではないけど後ろの追いかけて来ている連中。誰かな?」
「まあ、それは俺も気になるから、外に出て旅人を装うか?俺、職人だから移動しているといえば間違いないし」
(なんとなーく、嫌な感じが後ろからするし)
「なら、そうして顔をだそうか。タイミングは」
ラムとムスが相談していると、外からドンッと大きな音がした。
「あ。魔法!火の魔法だ!」
コーグがムスの頭の上で目を光らせる。
「逃げて、2人共。崩れるかも!」
「え。やばっ!ラム、俺が先に出るから後ろから出て」
(話が終わってないのに!!)
「わかった」
ムスは慌てて外へ出る。ラムも後ろに続いて外へと出た。
ーーーーー岩場の外ーーーーー
魔法の火を2人は躱して振り返る。
「追いつかれましたか」
冷静な女性にしては低い声で呟く。
姿は金色の長い髪をポニーテールにまとめて銀色の鎧に身を包み、磨かれた鋭い剣を姿がバラバラな10数人の相手に向かって構えている。
姿がバラバラな10数人は顔を黒っぽい布で隠していた。
「目眩ましを」
深く被ったフードから深緑の髪が見えた。声音から若そうである。
「大丈夫です。先に」
騎士が先を促すと
「いえ。土地勘がないので無理です。移動は最低でも」
フードを被った人物は首をふる。
そんな、2人の相談の中、割って入る人が1人。
「誰だー!今、魔法で岩場うったやつ!!危ないだろ!?」
「キシャー!ムスに攻撃!許さない!」
ムスが叫びながら岩場から顔を出し、頭の上に乗っているコーグは牙をみせて威嚇する。
(とりあえず、話を合わせて姿をだして、後は流れというおおまかなことしか決められなかった。後は成り行きだけど、もう、あの大群は邪な考えしかなさそう。敵意がびしびし)
ムスは表情には出さず、後ろの危険人物がおかしな行動をしないか、見張っていた。
「ふう。あぁ、あの人だね。魔力的にわかる」
ラムが続けて、外へ出て顔を隠している細身の男性を指差す。
「謝れー!」
「謝れー!」
ムスとコーグが同じ言葉をエコーのように繰り返した。
「うるさい」
魔法使いが魔法詠唱を始めようと構えるが、
「あ、魔法唱えた!攻撃魔法」
コーグの魔法探知に漏れるはずはない。しっかりとムスとラムに伝える。
(いきなり攻撃はおかしいだろ!)
ムスは銃を構えるが、ラムの方が速い。
「打ち砕く閃光、貫け闇を《光の魔法》(ブレイクライト)」
上空へ無数の稲妻を出現させ、滝のように相手へ叩きつける。
相手よりラムの詠唱が終わる方が速かった。
攻撃されるより速く相手の四肢を貫き、魔法使いが崩れ落ちて倒れた。一撃だった。
「ーーーお嬢さん、あなたは何者だ?」
短剣を構えている、明らかに暗殺者のような素早い身のこなしの人が問いかける。
「ただの魔法師。そこにいたら、火炙りにされかけたの。攻撃してくるなら、先にするだけ。で?寄って集って何の騒ぎなの?2人に対して、多すぎる」
(うわぁ、ラムが睨んでるから殲滅するつもりそう)
ムスも弾を補充しながら、構える。
「あなた達が知る必要はないが、顔を見られた以上、生きては返さない」
「酷い。じゃあ、こっちは4人で戦わないと」
「え。いや、あなた達2人は」
「逃げてください。巻き込む訳にはいきません。今なら間に合います」
騎士とフードを被った人が慌てて逃げろと言うが、
「俺、怪我したら指名手配だからなー、お前らー。すぐ連絡いくからなー」
とムスは宣言。
(こうゆうのは殲滅に限る)
「全く、1人戦闘不能ぐらいで酷い」
「いや、あれは怒るって。でも、謝らなかったからね。しかも、すぐ攻撃しようとして。礼儀がなってない人は叩き潰していいと父がいってたから、問題なし。というか、敵意めちゃくちゃある。潰さないと駄目。追ってくるよ」
「悪人だから、問題ないよー。コーグ協力する!あいつら、嫌いー」
コーグがムスの頭の上でムクッと起き上がり、耳をぴょこぴょこ動かす。
「姫様」
(身分が高い人か。わぁ、面倒そう)
ムスは聞こえないフリをする。
「わかりました。助かります。騎士はアステラ。私は長いのでディアで」
「了解ー。俺はムス、あっちはラム。上にいるデネブラが見えるなら、コーグね。で、俺達は遠距離しかいないので、近接は任せます」
「コーグだよー」
ぴょこぴょこ跳ねているが、ディアだけ見えるらしく頭を下げている。
「わかりました。よろしくお願いします。ですが、追手はまだ来ます。後退しながら、逃げるつもりでいきましょう」
その間に9人は散らばり、攻撃するために囲みだす。
「魔法防御は任せて」
「動きを止めるけど、あれからでいいよね」
ムスが身のこなしが速そうな暗殺者に向かって銃をうつ。
それが合図となった。




