コーグの楽しみ
コーグとラムとムスがムスの家に戻ったのはもう、夕暮れだった。
夕暮れなため、家でユリアが既に夕食を作っていたのだ。
「ただいまー!スープパスタの準備!!準備!!ラム、いこ!!いこう!
あれ?ガーン!スープパスタがぁぁ」
コーグは、ラムを急かして台所へと誘導する。
しかし、途中の居間に出来上がっているほかほかのじゃがバターをみてショックをうけ、テーブルの上に突っ伏している。
「時間かかったから、仕方ないよ。コーグ、明日。スープパスタは明日ね。よしよし、遊ぶのは、しようね?」
テーブルに倒れたコーグの頭を撫でる。
「明日?明日、作ってくれる?」
「うん。だから、泣かないで」
コーグはラムの声に顔を上げて、ラムを見つめている。
「やったー!!明日、朝、スープパスター!遊ぼーー!」
コーグはラムに抱きつく。
「そうしようねー」
ラムはコーグを撫で回している。
「こらー!!コーグ、わがままいって。ラムを困らせないの!ほら、べりっ!」
(ラムが精霊見えて声が聴こえるからはしゃぎすぎ。しかも、可愛がってくれるからすっかり懐いてる)
「うわーー。困らせてないもーん。今まで大人しくしてたから、いいんだもーん」
コーグをラムから引き剥がす。
コーグはムスに抗議しながら、翼でムスの腕を軽く叩いていた。
「騒がしい。ムス、何かあったか?」
全身黒尽くめに身を包んだ落ち着いた声が響く。
騒がしさにペディロが居間へ顔を出しにきた。
「あ、父さん!ラム、精霊見えて聞こえるって。だから、コーグがはしゃいじゃってさー。ほら、遊ぼ遊ぼって」
「今まで、しおらしくしてたもん!ラムが見えるなら、一緒に食事もお菓子も食べれて、頭に乗っても怒られないもーん!」
(我慢させてたのは悪いけど、はしゃぎすぎ)
ラムはボヨンボヨン跳ねていたコーグを思い出す。
魔力が薄い今日、精霊が元気に外を飛び回ることは少ない。精霊は魔力がないと生きていけないし、補充が必要だからだ。
「そうか。ラムさん、精霊が見えるのか」
「はい」
ペディロが神妙な顔で訪ねてくる。
「それは、貴重な才能だ。大切にしなさい。今は精霊が見える者は年々、減っている。昔は当たり前のように見えたのだが、今は王家ぐらいだろう。当たり前のように見える者が生まれる血筋は」
「?そうなのですか?」
ラムは首をかしげる。
「そうだよー。500年前なんて、みんな見えてたもん。コーグ、昔に捕獲されて出られなくて泣いてたら、親切な人が助けてくれたの。今はコーグ強いから捕まらないけど、昔は苦労したよー。その良い人ね、次に捕まらないように魔法を教えてくれたんだよ!だから、コーグは人が使う魔法が使えるの。外で倒れてたらムスが助けてくれたし、良い人達は大好きだよ!」
コーグはムスの腕の中でにこにこ笑っている。
(まあ、弱っていたら助けるのが普通。泣いていたら、家に連れ帰るよ)
「昔の話だ。あまり気にしなくていい。時代の流れだろう。精霊、聖獣、人、それぞれ長い年月をかけて関係が変わったのだろう」
ペディロは戯れるコーグとムスをみながら、優しく目を細める。
「コーグ、だからラムと遊ぶの!」
「今の流れから『だから』がわかんないよ!夜遅くなるから、近所迷惑」
「ぶー!!スープパスタは明日になったもん!ほかほかじゃがいも無駄にできないから!遊ぶは今日!」
「いやいや、だから周りに」
「コーグ、魔法使う!音漏れ防止!完璧、遊べる!」
「前、白熱して魔法切れて近所迷惑って苦情きたよなー」
(平謝りして許して貰うの大変だった!)
「ギクッ」
「だーめー」
「ぶー!ぶー!」
コーグとムスは仲良く言い合いをしている。ムスはコーグを説得しているようだ。
「私が使うよ。維持すればいいのでしょう?空間作ってもいいけど」
「え」
「わーい!」
2人の反応はそれぞれ。
コーグは喜び、ムスは固まる。
「大丈夫!?大変じゃあ、、」
「大丈夫だよ。魔力多いし、陣を書いて魔力の流し込みを丸一日にすればいいさだけ。1日で消滅させれば問題ないよ」
「空間作ってラム。大好きー!ほら、ラムも遊ぶつもりだよ!」
コーグはムスの腕から抜け出してラムにもふもふする。
「可愛いー」
ふわふわなコーグの手触りに顔が綻ぶラム。
(あざとい。ラム、コーグに甘すぎ)
「今作って遊ぼうか?夕食まで2時間ぐらいあるし」
「まあ、ラムがいいなら。時間になったらどうする?」
「私が戻そう。遊んでくるといい」
「やったー!」
「コーグと私とムスね」
ラムは素早く2重円を描き、円の外側に人形と耳を描き✕を。内側に2を描いて中にコーグと2人の名前を書いていれる陣を描き終わる。
そして、魔法を発動させる。すると、コーグとラムとムスがこの場から消えた。
そして、丸いシャボン玉ぐらいの大きさの玉が浮かんでいる。




