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交渉相手

 ラムとムスは音をたてないように紙の鳥の後をつけていく。

 紙の鳥が止まり、ムスの肩に戻る。

 辿り着いた部屋は商談をするために大きめで、観葉植物が部屋の隅に飾られている。

 豪華なふわふわの大きめなソファーに、磨かれた大理石の机。左右対面に座っているのは、1人は先程みた太ってる交渉人、もう1人は質の良い黒いジャケットを来た身なりの良い男性。顔つきは普通で、身長は高めで細身の体型。

 ラムはその身なりの良い男性に見覚えがあった。

 

「ーーコールビット伯爵」


(伯爵って貴族の方か?)


「え?ラム、知り合い?」


 ラムが呟いた言葉にムスが小声で呼ぶ。


「遠くから少し見かけただけ。闇商売していると噂が流れてたこともある。これは、権力者に手紙か知らせを出して爵位剥奪しないとなくならないよ。どうする?」


「ーー貴族は面倒、、。魔技師の知り合いに手紙をだして、領主様に告発してもらうにしても、、。うーん、遅いしなぁ。どーしよう。平民は貴族に手を出せないし、ギルドも荷が重い。セイジさんに任せると教会が睨まれるし、、」


(知り合いの権力持ちはいるけど、王子に知らせる訳にはいかない。回りくどいことをしないといけないが、その間に釈放されたらおしまいだし、、)


 ムスは考え込む。


「そもそも、証拠をもみ消されないようにするにどうしたらいい?証言は採用されるか怪しいから映像を残せばいいのか?」


「本人は生け捕りはするとして、、。現場保存は欲しいと思う。ティーカップで紅茶を飲んでいるから、今、凍らせればティーカップを飲んでる形で固まる」


(完全に氷漬けも悪くないけど、、)


「凍らせるより、出られなくしたほうがよくない?ほら、助けを求めた瞬間に逮捕して貰えば言い逃れできなそう。とりあえず、眠らせてしまうか?」


「その状況を作り出してもいいけど、ユリアさんは?」


「あ」


「あ?」


 ラムが首を傾げる。


(やば!!絶対に待機っていうのは知らせてない。何が聞こえても待機って書かなかった。少ししたら、合図を出すって書いたから、しまった!!)


 扉が急に開いた。


「悪いことはやめなさい!大人しく捕まりなさい!!」 


 ユリアが入口の扉から出てきて叫んでいる。


「誰だ、君は!」


「部外者は出ていきなさい」


 周囲が臨戦態勢になっていく。


「ムス?」


 作戦と違うため、ラムがムスを訝しげにみる。


「扉の前で待機っていったのにー。こうなったら、やるしかないよ。あー、もう。母さん、なんで突っ込むの。はぁー。なんで、いつもこうなるの」


(物音聞こえたから、入っちゃったかぁ、、。合図してないのに、泣きたい。危険そうだと判断して入らないでください)


 ムスは盛大なため息を吐き出す。


「コーグ、仕事する!」


 ムスの頭の上で寛いでいたコーグがシャキッと起き上がる。

 逃げようとするコールビット伯爵と闇商売のリーダーを椅子に縫い付けて、柱の壁まで持っていった。


「なんだ!?」


「動けない!?」


 2人はジタバタしているが、闇精霊魔法が解けることはない。

 足を前後に動かすだけである。


「主犯確保!スープパスタは貰った!」


 嬉しそうにムスの頭の上で飛び跳ねるコーグ。


(嬉しそうなコーグ。うう、コーグはしっかりしてるから、主犯は逃がすことはないけど、どうしたら逮捕できるかな、、)


「わぁ」


「うげっ。めちゃくちゃじゃん、もう、、。母さん、かたっぱしから殴って蹴ってノックアウトしてるし、、。人質は無事だからいいけど、現場保存できないし、どーするの、これ」


 ムスは遠い目をして現状を見ていた。

 闇商売人はボディーガードを雇っていたが、ユリアに次々にふっ飛ばされている。まぁ、ワイバーンを殴り飛ばしたユリアはこれぐらいは余裕らしく、更生しなさいと言いながら殴っている。


(現場保存したかった、、。これじゃあ、逮捕するに、、うーん、証拠、証拠、証言とか、何か言ってくれないかなぁ)


 チラチラと主犯格の2人を見るが、一人はユリアをみて呆然としていて、使い物にならなそう。一人は気絶している。


「デネブラいるよね、、」


 ラムがムスの頭の上に視線をおくる。

 それに気づいたコーグがラムの方をみる。


「コーグだよー」


 手をラムに向かって振っている。


「ムス、少し屈んで。後、魔法は解除するね。ほぼ、敵がいないから。後はこの子に証言してもらえば解決するから。そうしよう?」


 ユリアはノックアウトした敵を部屋の隅に蹴り飛ばして整理していた。

 立っている敵は僅かだが、逃げようとする人はユリアに追撃されていて、倒されていく。


「え?わかった」


(証言って貴族の言葉より信じてくれる人いるの?)


 ムスが頷くと同時にラムは魔法を解除する。

 そして、頭の上にいるコーグを掴む。


「わー。うん?ラム、やっぱり、見えてる!!コーグ、わかるの!?」


 コーグはラムの前で翼をパタパタと動かす。


「うん。協力してくれる?ムスには」


「ムスーー!!ラム、精霊見えてるよー!!これ、終わったら3人で一緒に遊ぼーー!!」


 ラムが言い終える前にムスに話しかける。


「え」


「え」


 2人は固まった。

 ラムは言葉を遮ってコーグがムスに精霊が見えると伝えたことで。

 ムスはラムが精霊が見えて聞こえるという事実に。

 コーグだけが嬉しそうに2人の周りを飛び回る。


「ふう。終わったわ!」


 ユリアは椅子に座ったまま柱から動けない2人を最後に気絶させて、満足気に頷いていた。



 

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