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王宮


 ムスは仕方なく黒いスーツをきて、右手には黒いしっかりした鞄を持って王宮の前まで歩いている。

 王宮に近づくにつれ、石畳の通路に複雑で綺麗な左右対称の模様が彫られていた。

 周囲も煌びやかな雰囲気になり、ベルサイユ宮殿のような大きく綺麗で見事な装飾された造りの王宮がみえてくる。キラキラと輝く王宮は立派。

 その王宮の前にある門は磨かれた黒い石でできており、厳格な雰囲気を醸し出している。

 門の前には剣を帯剣した門番が二人いて、王宮に向かう馬車や人を検問している。

 門の前に並んでいるのは圧倒的に馬車が多い。そんな中、人が並ぶのは珍しい。


「お願いします」


 やっと自分の番がきて、王宮から届いた手紙を門番に見せる。


「確かに招待状を確認しました。どうぞ、中へ。ご案内に騎士をつけますので、門を入ってすぐ右側へ進んでください」


「わかりました。ありがとうございます」


(ボロがでないように気をつけないとな。いつもは丁寧な言葉を使わないから)


 表情に微笑みをはりつけて、王宮の中へと進むとすぐに案内の者がでてくる。


「招待状を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


「ありがとうございます。確認できましたので、こちらへどうぞ」


 かなり長い時間、立派な柱がそびえ立つ通路をぬけながら王宮の奥へ進まされ、かなり厳重そうな扉の前へ案内された。


「こちらでお待ち下さい。すぐに呼んできますので」


「わかりました」


 部屋に入ると、高級そうな花柄の家具で統一された応接間だ。部屋の真ん中にテーブルと椅子があった。

 勝手に座るわけにはいかないため、立ったまま下座で待つこと数十分。

 扉が開く音と共に一人の人物が部屋に入ってくる。


「失礼する。遅くなってしまい、申し訳ない」


 丁寧な言葉ではあるが、意思の強そうな低い声がした方へ軽く視線を向ける。

 その人は輝くさらさらの銀髪に、海のような蒼い瞳。その特徴はアステラティーア王国の王子、ジール・オプティクラーズとそっくり。いや、そっくり、じゃなく本人だ。

 なんとなく、嫌な予感がしたムスは慌てて頭をさげ


「お待ちしてました。特別な用事はないと思いますので、失礼します」


 扉の前にいる人物の左側から出ていこうと足早に歩く。


「ま、待て!ムス!」


 脇をすり抜けようとするムスの腕を掴んで引き留める。


「は、な、し、て、く、だ、さ、い。オ、ウ、ジ、サ、マ」


 カタコトで抵抗するムスだが、力の差があるため、徐々にテーブルに引きずられていく。


(絶対に碌な頼み事じゃない!法律違反で牢屋にぶち込まれるとか、目立ちすぎて王室お抱えの魔技師にスカウトされるとかじゃなくてよかったけど!これは、これで嫌だ)


「拒否する。昔、遊んだ仲じゃないか。友達なのに逃げないでくれよ」


 丁寧な言葉を崩してはいるが、有無を言わさずにテーブルまで引きずられてしまう。


「友達だってここで言うなよ。俺、いざこざはごめんだし、貴族や王室に必要以上に関わりたくないし。

 あれは、父が勝手に連れてきただけで。叔父の家にきた人がどうやって王子様だと気づくの。父親がここに勤めていたとあの時に初めて知ったし。隠すに都合がいいから、家に連れてきたって何それ。黒歴史だ黒歴史」


(親戚の子だと思って、雪の中、雪遊びににモンスター狩りに料理までして。王子に対する態度ではなかった。確実に。というか、何かあったら国から首飛ばされたと思う)


 ムスは諦めて椅子に座り込み、荷物を脇に置いて、遠い目をする。


「楽しかったからいいのに。新鮮だった、あれは。と、長話はしたいが、時間がないため置いておいて。友達として、頼みがある」


「友達として頼むなら、心臓に悪い手紙はやめてくれ。あれだと、何かあったかと誤解するだろ」


(個人的な手紙なら、王室の印を押さないでくれるのに、どうして今回はあんな立派なやばい招待状なんだ)


「普通の手紙をだしたら、読むのは後回しにするだろう?ただの友達に服のアドバイスやら、流行りや近況やら、話すだけの文通だから」


「まあ、そうだな。仕事の話しじゃないから。仕事の手紙から処理して返事は後回しにするから。だからって、強制招集は怖い」


「仕方なかったから、諦めてほしい。俺に婚約者がいるのは知ってると思うが、そのな、、」


 言いづらそうに言葉をきり、暗い表情をする。


「なんかあったのか?えー、まだ発表してないが、確か今年中に結婚式だったよな?まさか、結婚式が取りやめとか」


「いや、違う。取りやめになったら、俺は泣く。現実になったら、業務放りだしてる。やーーーっと、全員納得させたんだぞ!?あんな、自ら闘うような子は駄目だとか。聖女の資格があるから、結婚は難しいとか、身分は公爵家だったから文句は言われなかったけど。他にも」


 口早に次々と飛び出してくる難癖の数々。貴族の重鎮を納得させるのがとても難しかったのだろう。


「落ち着け。わかったから。まあ、第一王子で継承権が一位だから、どの家も嫁がせたがっていたのだろう。派遣争いだ、派遣争い。よくある話。で、何がやばいんだ?」


「装飾品」


「装飾品?」


 ムスは首をかしげる。


「結婚指輪に込める魔工品が造れなくなって困ってる」


 ジールは莫大な発言かつ、深刻な問題を言い切った。



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