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身分証明書


 ラムとムスは門を訪ねると鎧をきた気のいい青年、ラーズが出てきた。顔も目鼻立ち整った青い目のいい好青年。

 ラーズに案内された部屋は鉄製で作られた小部屋。真ん中に木の椅子とテーブルがあるだけ作業部屋だ。


「2人共座って。すいません、わざわざ来てもらって。怪我は?」


「だいぶ良くなりました」


「よかった。どうせなら本人に書いて貰った方がいいと思いまして。こちら書類になります」


 ラーズは紙とペンを渡す。


「私が書いちゃっていい?」


 ムスに聞くと頷く。


「いいよ。前はわりと適当に書いちゃったから」


(適当もいいところだしなぁ。魔法師だろうという感じでかいたから)


「じゃあ、書いちゃうね」


 ラムは紙とペンを受け取り、さらさらと書いていく。


「ラーズ、お菓子!オススメの『アルス』からの焼き菓子」


(誤魔化してもらったお礼)


 ラーズに約束の品を渡す。


「おおっ!ありがとう!最近、美味しいって評判だよな」


 ラーズがムスから焼き菓子を貰う。


「終わりました。どうぞ」


 ラムが紙を渡す。


「ありがとうございます。えーと、、、」


「住所は覚えてないから。バース領の侯爵様に言えば調べてくれます」


「まぁ、住所を覚えてないのはいるからなぁ。魔法師で滞在理由はムスも聞いてるのか?」


「ああ。妹を探してるって。人拐いにやられたそうだ」


「捜査は国がしてるけどこっちも見回りも増やして警戒してる。捕まえたいところだ。早く見つかるといいな。なら、問題ない。身分証明書は?」


「身分証明書。これは?」


 ラムがギルドリングを指す。


「あー、それはさっき貰ったやつだから、駄目かな」


 ムスが首をふる。


(流石に今日貰ったのは駄目だし、入った時以前に貰っている物じゃないといけない)


「他に何が身分証明書になるの?」


 ラムがラーズに聞く。

 すると、ムスとラーズが目を丸くする。


「え。今までどうやって入ってきたの!?王都に来たことあるって言ってたよね?」


「いつも兄さんが全部してくれるの。家族だとそれでいいから」


(あ。そっか。だよなぁ。いいところのお嬢さんだから1人でこないか)


「そうか。考えてみれば女性が1人で来るのは危険だし遠いか。身分証明書は、宮廷魔法師試験合格書や資格証明書、後は働いている場所の勤務手帳とか、侯爵様の保証書かな。どれか、当てはまる物があれば1つ見せてくれるだけでいい」


「だと、魔法師の資格証明書でいいのかな?」


「問題ないです」


「うーん、何処にしまったかな、、」


「魔法で出す感じなの?」


 ムスが悩むラムをみて訪ねる。


「そう。自分の魔法で収納して蓋をすれば、本人以外は正しく開けなきゃ悪用されないからね。場所はまぁ、色々だけど。小さいしあまり出さないと忘れちゃって。部屋かな」


「探知魔法使うなら、俺の魔力使いなよ。普段はそんなに使わないし」


(俺がほぼ使わないから、コーグが魔力を食べてる状態。今は大人しくしているみたいだけど)


「ありがとう。多分、これだと思うから出すね。運べ、時空を場所をこえ、思い描く場所へ《空間魔法》(テレポート)」


 ラムは小さな木箱をテーブルの上に出す。装飾品やスタンプカードぐらいしか入らない大きさだ。


(いい品物だな、これ。ツヤツヤしてる木箱で作りがしっかりしている)


 ムスは出てきた木箱に視線を落とす。


「うーん、この中にあった!」 


 ラムはその箱を簡単に開けて中から魔法師の資格証明書を取り出す。


「お預かりします」


 ラーズが資格証明書の情報を紙にメモしている。


「ラム、大丈夫?魔法使って出したってことは遠い場所にあっただろう?疲れないか?」


「戻さなきゃいけないから、少し疲れるかな。さっきも違う場所に魔法使ったから」


 ラムは瞼が落ち始め、眠そうだった。


「なら、家まで持っていこう。家ならすぐ寝れるし、魔力回復の薬草あるから。それ飲んでから返した方がいい」


「でも、危ないからすぐ返す。魔力、少し残るし」 


「そうか?あ、俺の魔力使えば返せる?俺も多いし、使わないし。半分残れば仕事できるから。遠慮なくいいよ」

 

「ありがとうございます。写し終わりましたので、お返しします。2人共、ありがとう。助かりました」


 ラーズは魔法師の資格証明書を返す。

 ラムは魔法師の資格証明書を小さな木箱にしまう。


「どういたしまして」


「後はよろしくな」


「ムス、、貰っていい?」


「いいよ。足りる?俺、自分の魔力量あまりわからないからさ」


 ラムはムスと手を繋いでいるので、手からムスの魔力を確認。必要な魔力分を自分の前に集まるように集中する。本人の許可があるため、すんなり集まった。


「運べ、時空を場所をこえ、思い描く場所へ《空間魔法》(テレポート)」


 小さな木箱がテーブルから消える。元の場所に戻った。


「!?わっ、かなり遠いな。大丈夫かな?」


(ごっそり持っていかれた。これは、遠いより普通は引き出せないレベルだ。ラム、魔力本当に俺レベルで保持してるのか)


 ムスは魔力が減ったのがわかったので、驚いている。


「無事に戻せた。ありがとう。じゃあ、ケーキ貰って帰ろう?」


「そうか。よかった。ラーズ、またな」


「お世話になりました」


 ムスは軽く手を振り、ラムは軽く頭を下げる。


「ああ。2人共、またな」


 敬礼をしてラーズは見送る。

 ラムとムス、肩に大人しく転がっているコーグは『アルス』に寄ってから、ムスの自宅へと帰った。


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