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アルス


 ムスとコーグ、ラムが警戒しながら歩いていく。門に近い外側の場所にある白いレンガ造りの店、『アルス』の中にムスが入る。

 入ると同時にカランカランと鈴の音が響く。


「はーい。いらっしゃいませー。店内飲食ですか、お持ち帰りですかー?

あ。ムスか。今月の新作はベリー系だけどいる?」


 明るい声とともに笑顔で応答に答えたのは20代の若い茶髪の男性だ。

 パティシエなので、白いエプロンに白い帽子を被っている。


「新作いーるー! あ。って、まって。ラーズに土産持ってくからお持ち帰りで。取っててくれ、フーリ」


(新作、絶対に食べなきゃ!美味しいに決まってる)


 カウンターの前に飾ってある食べ物はクッキーや、苺のショートケーキ、季節のフルーツがのるカラフルなタルト、チョコレートケーキ等、他にはホールケーキサイズでうさぎや猫の形をした可愛らしいケーキが飾ってある。


「いいよ。で、後ろの連れは彼女?」


「違う!訳あって家にいるだけ。断じて違う!」


(失礼!ラムに失礼すぎる。こんな美人、いいとこの娘なら婚約者いるはずだし)


 ムスは全力で首を振り、必死に否定する。


「えー。手を繋いでるのに?」


 フーリが胡乱げな視線を投げてくる。


「人攫い多くて危険だから!母さんみたいにぶっ飛ばすもできないし、父さんみたいに、即座拘束無理だし」


(俺、強くないの知っててからかってないか、フーリ?)


 ムスとフーリが揉めている間、ラムはショーケースに飾ってあるお菓子に夢中だった。


「綺麗。可愛い、、。美味しそう」


 ラムが見ていたのは兎の顔をした赤いベリーケーキ。つやつやと輝いていて、目はつぶらで可愛い。


「お前が好きな訳じゃないの?」


「可愛いし綺麗だけど、違う」


「ふーん」


 さらに胡乱げな視線を投げかける。


「ムス、何を買うの?どれも美味しそうだよ」


 ラムが声をかけてきた。


「ラーズには焼き菓子を」


「クッキーたくさん?白いのとバターたっぷり、抹茶美味しそう」


 ラムがショーケースのクッキーに視線を落としながら、兎のケーキをみていた。


(甘い物、好きすぎてショーケース眺めてるなぁ。兎がほしいと)


「あー。詰め合わせしてくれ。20ぐらいで」


「ありがとうございます〜、新作は取り置きしとくから、後は?」


「ラムは兎がいいの?」


「買ってくれるの?」


「まぁ、高くなければ。食べたいし。新作2つと兎、後はビターなチョコレートケーキ2つ」


 フーリが箱に詰める間、ケーキをじーっと見つめているラム。


(兎、可愛かったから見ていたいのだろうな)


「取り置き?」


「取り置き」


「ありがとうございます〜。後はいいのか」


「大丈夫。えーと」


「カードをだす。ラッピングサービスするから、5000ラータ」


「はーい」


(いつも忘れてしまう)


 ケーキの絵柄のカードと代金をムスは出した。


「ラーズのところを寄ったらこいよ」


 フーリはカードにスタンプを押して返す。すると、受け付けから出てきて、カラフルなチェック柄の可愛らしい紙袋を渡してくる。


「私が持つよ。右手が使えないと撃てないでしょう」


 ラムが左手で受け取る。


「うわぁ。女性にもたせて」


 プーリは大げさにリアクションする。


(絶対にからかってる)


 ムスが呆れるとラムが冷静な声で話し始める。


「当たり前でしょう。剣士の利き腕は空けておくのと同じ。戦闘になったら、物が駄目になる。放り投げる必要があるかもしれないから」


「いや、そこまで」


「1分後、状況は変わる。それぐらい思いっきりしないと間に合わない。強敵との戦いは生死をわける」


(こわっ!ラム、どんな戦闘を想像してるの??)


「ーーームス、お嬢さんは戦闘マニアか、何かか?」


「ーーいや、違うはずだけど、、」


「?あ、ラムです。暫く、ムスの家にお世話になります。よろしくお願いします」


「あ、ああ。ご丁寧に。俺はフーリ。この店でパティシエをしている。一応、錬金術師の素養もあるから、健康食品も作っている。よろしく」


 お互いに頭を下げて挨拶をする。


「ーームス、怪我したら作ってもらおうね」


「うぇ!?」


「錬金術師が作る健康食品は薬草並に怪我の治療にいいの。覚えておくといいよ」


(え。初耳だ。そんな効果あるの、今)


「やっぱり、明らかに戦闘になる想定してない?え?お嬢さん、ギルドで稼いでるの?」


「ううん。妹を探してるだけ。私達の所は、一般市民に危なくなったら侯爵様の屋敷に避難するから職業は一通り叩き込んでおかないと」


「うーん。そんなもんかな、、。ムスの連れだし、普通か。まあ、怪我したら常連だから菓子でも作ってやるよ」


 フーリは笑いながら、違う紙袋をラムに渡す。


「なにそれ!?ひどくない?」


(俺、そんなに変わってないし、戦闘狂じゃないんだが!?)


「土産やるから!水に流せって」


「何が入って」


「特性ジャムクッキーに春野菜のパイ、シチューパイ数個」


「ありがたくいただきます!」


(やったー。うまいやつだー)


 ムスが笑顔で返事する。


「いいの?」


「常連だからオマケ。試作品で食い切れないから貰ってくれ」


「ありがとう」


 ラムは2つの紙袋を大切に持つ。


「じゃあ、後でな」


「ありがとうございました〜」


 ムスは軽くフーリに手をふり、ラムは軽く頭を下げる。

 フーリは笑顔で返事をする。

 ムスとラムは店を後にした。


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