変異種
「ムス!俺が加護で防ぐ。方角は!?」
聖騎士がムスに向かって叫ぶ。
その声は、いつも鎧をきて町を護っている聖騎士長のもの。
「正面!でも、セイジさんだけじゃ範囲が広すぎる。俺も精霊魔法の陣で」
(精霊魔法の効果を魔技師の技能で聖盾に付与するしかない。精霊魔法は厳密には魔法と違うから防御貫通しない)
ムスが紙を取り出して慌てて精霊魔法の陣を描き出す。
「魔法防御貫通なの?」
「そう!付与効果ってかいてあった、、」
(面倒だよね。防御貫通は。よし、これで大丈夫)
ムスは精霊魔法の陣を完成させた。
ラムは少し考えてから、聖騎士に質問することにした。
「時間を稼げれば盾を大きくできますか?」
セイジさんと呼ばれた聖騎士にラムは問いかける。
「時間があればあるほど大きくできる。お嬢さん、何か策でも?」
「はい。私が風魔法で向かい風にして、その間に誘導する土壁を生やそうかと思います。土壁は補助魔法ですから効きます。それで、引き付けてわざと土壁を壊させます。後続のブレスは同じ場所に来ますから、そこを中心に盾を使えば被害が抑えられるかなぁと。街中には入れたくありません」
(ラム、頭回り過ぎ。全属性使えるってこうゆう時、強いよなぁ、、)
「ラムちゃん、危険じゃない?傷口開かない?」
「踏ん張りはユリアさんに任せます。魔法が強制的に壊されるので、反動が必ずきます。耐えなければ傷口には響かないと思いますから」
「ーーわかったわ。絶対にラムちゃんに傷をつけないようにするわ!」
「よし!準備オッケー!距離にして100m先!」
ムスは屋根上からブレスが当たる距離が見えているため、3人に距離を伝える。
(めっちゃ、こわっ)
睨みつけているワイバーンは闘志が籠もっており、とても気迫がある。
「お嬢さん、1分で充分だ。怪我をしてるなら、あまり無理はさせたくない。なんとかしよう」
聖騎士は地面に盾を突き刺して力をためている。
それは、了承したということだった。
「はい。穏やかな陽風、空へ花を舞い上がらせて。《風の精霊》(ウォームウインド)」
ラムが魔法を唱えると轟音と共に嵐のような風が吹き荒れる。穏やかな春風の詠唱部分が詐欺のような力強さ。
(うん、陽風じゃないよね、これ。台風だよ、、)
ムスは内心そう思ったが、口には出さなかった。
「ものすごい風で速度おちてます!門前まで80m」
「獲物を引き寄せる土、サイコロとして浮かべて。《土の魔法》(アースプレイ)」
サイコロのように小さな茶色い固まった土が浮かび上がる。
それは門外から10m先のところに不自然に浮いている。何故か存在感がある土にブレスが引き寄せられていく。
強風により、進む速度は遅いが確実に進路変更されている。
後続のブレスも土に向かっていく。
「ラム、上手だね」
コーグは《土の魔法》(アースプレイ)をみて頷く。
「実戦で《土の魔法》(アースプレイ)使うとこうなるのか。へー。いや、始めて見た」
ムスは感心しながら、状況を見つつ、弾を補充している。
ブレスが当たらないと判断した白いワイバーンが門の方へ突撃してくる。
「白いワイバーンが物理攻撃してくるつもりみたい!ブレスはやめたよ!あと、20m先!」
「防ぎきれば、街は守れそうかな」
「ギャアアア!」
街中に入っていたワイバーンをギルド所属の戦士達に留めをさされたところだった。
「あ。壊れる!」
《土の魔法》(アースプレイ)がブレスに当たって壊れた。
「っ!」
「ラムちゃん!」
ユリアがラムをしっかりと抱え込み、踏ん張る。僅かにユリアの足が動いたが壁際までは動かなかった。
「女神よ、聖女よ、人々を護り給え」
それを合図に、聖騎士は力を開放する。聖女の加護をうけた盾がより一層大きくなり、門前に立ちふさがる。
「頼む!」
ムスは精霊魔法の陣を発動させる。それは、水の精霊であるウィンディーネが使う精霊魔法。水のベールとも言われる炎耐性を付与するもの。ムスは聖騎士の盾の形をした聖盾にそれを付与する。
「ガァァァアアアア!」
ブレスは門前に当たるが盾が完全に防ぎ切っている。
ワイバーンは盾を壊そうと突撃してくる。
「むっ」
ジリっと反動により盾ごとセイジは後に押される。
だが、すぐに持ち直してこらえる。
ワイバーンの咆哮がすぐ側で聞こえる。
「セイジさん!大丈夫ですか!」
「ここで、盾を下げるわけにはいかない。耐えきる」
そう答える。汗を垂らしてキツそうにしているが、意思は堅い。
(何か足止めしないと。聖盾が壊れたら、町が危険にさらされる)
「お願い!」
「みんな、攻撃するぞ!」
他の魔法使いが影縫いや、足止めの魔法を唱えたり、戦士達も門の外に出て注意をそらして協力している。
でも、白いワイバーンは盾に釘付けだ。
なおも壊そうと突撃してくる。
「麻痺れ!」
ムスは状態異常になるように弾を撃ち込む。
弾は命中し、麻痺の状態異常になったようで白いワイバーンは攻撃方向をみる。
ラムの強風はまだ続いているので、見えにくいがワイバーンは攻撃をした人達の方を見る。
「グルルル」
ワイバーンは唸る。
「弱点はどれだ」
ムスは構わずに火、氷、水、雷、土の魔法を込めた弾丸をワイバーンの翼に当てる。
当てた中でワイバーンは氷に怯む。
門の外から
「氷に弱いみたいだ!魔法使いはみんな、氷で攻撃を!」
そう言う声がした。
「ガァァァアアアア!」
ワイバーンが咆哮する。かなりの強い咆哮で、攻撃を仕掛けていた戦士達を押し返す。
白いワイバーンは盾から離れる。そして、門を越える高さまであがり、ムスに向かって火の玉をはく。
「え。何でおれに!?」
火の玉は結界に阻まれて当たらなかったが、白いワイバーンは確実にムスを睨んでいる。
ワイバーンは結界を裂くつもりでブレスをためる。
(え、集中狙いされてる!?)
「む。コーグのムスになにするの。シャーー!!」
コーグはムスの頭の上に乗って、牙を見せながらワイバーンに威嚇している。
「ムス!嫌いって思われたから、逃げて!集中狙いするつもりだよ!変異種だから、危険!」
「ムス!こっちに!」
(うげ。でも、俺が離れれば門から離れてくれれば、引き離せるから被害はない。いざとなったら、コーグに撃ち落として貰えば何とかなる、、かな。まずは、引き離そう!)
ムスは考えをまとめて、魔法の陣を描く。《空間魔法》(テレポート)で門の外へ出るように位置調整する。
すぐに描き終わる。後は発動だけ。
「みんなー!誰か、倒してくれよ!門外に出て逃げ回る!」
そう言うとムスは魔法の陣を発動させる。




