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災難




ーーー次の日ーーー



 けたたましいサイレンの音でムスは飛び起きた。

 作業場にいるのに、外から騒がしい声が聞こえる。

 

「ウー、ウー」


 コーグはムスの頭の上でサイレンの音と同じ様な声をだす。


「コーグ、なんか来たら防御よろしくな。俺は急いで商品しまうから」


「うん!」


 コーグはムスの頭の上に乗っかり、耳をぴょこぴょこと動かす。

 周囲を警戒しているようだ。

 

「急がなきゃ!」


 ムスは作業場から、売り場の店内へ足を踏み入れる。

 売り場は窓から光が入り、赤茶色の暖かみがあるレンガと柔らかな木の天井の空間。照明はランタンの柔らかな明かりが店内を明るく照らす。

 右棚のブースにあるうさぎや花、剣や槍などの武器ストラップ達。

 ムスは棚に魔法の陣を書いてそのまま作業場へ転移させた。

 ぬいぐるみが置かれている隣の棚も同じように移動。

 薔薇や蝶々で刺繍されたハンカチやバンダナはテーブルに置いてある。手速く1つに全てまとめて作業場の自分の机に置く。

 次は髪飾りや髪留め等の装飾品。珍しくかんざしまである。奥のテーブルに手広く広げられている装飾品は、花や動物の形、シックな四角や丸などの形を合わせた模様等、多種多様。全てを丁寧にテーブルに運ぶ。

 お金は前日に作業場の金庫にしまっているため、レジは無視。

 一通り片付けたら、作業場から洗面所へ。

 洗面所は浴槽に繋がる扉がある小さな部屋である。中は歯磨きをする水場、洗濯する洗濯機、バスタオルにタオルや洗剤が置かれている。

 洗面所は水捌けがいいように木のタイルにオイルを染み込ませた壁と床。温かみがある茶色ぽい部屋だ。

 ムスは軽装から魔法の陣で取り出した戦闘用の服を自室から取り寄せ、武器は金庫から取り出していた。手速く、半袖のシャツにズボンを着る。腰に銃のホルスター、ショルダーバッグを肩にかけている戦闘服に着替える。軽装は洗濯機の中に入れた。

 ムスは客間に向かう。


「あ、ラムちゃん!起きたのね」


 ユリアが半袖の花柄のシャツに珍しい緑色の半ズボンを着ていた。


「はい。あの、この音は」


 まだ、寝間着の薄いレモン色ワンピース(ユリアが買ってきた)を着ているラム。


「モンスターが門まで迫ってきてる音。商人は品物をしまう時間。しまってきたよ。金庫に入れといたから大丈夫」


(ラムは起きて歩けるぐらいに回復したみたい。身は守れそうだ)


 ラムの問いにムスが答える。


「ーー私も着替えてくる」


 ラムはムスをじっと見た後、部屋に戻ろうとする。


「ラムちゃん、着替えるならこっちに。そっちに真っ白なワンピースあるから。こちらにしましょう。激しい運動は駄目だから、手伝うわ」

 

 ユリアに連れられ、ラムは2階の部屋へ。

 すぐに2人は戻ってきた。


「ラムさんは私と待機。ムス、ユリア、声がかかったら街の人達と協力して討伐しなさい。朝食にしよう」


 いつもの黒一色のペディロは落ち着いた声で話す。


「はい!サンドイッチよ!卵とレタスのものと、甘いジャムがいい人はいちごがあるわ。どうぞ」


 今日は1人1人に皿を用意せずに真ん中にたくさんサンドイッチが積まれている。 

 取り皿が4人分あるので、そこにのせてという意図らしい。

 紅茶は1人1人用意されている。今日の紅茶はブレークファーストである。


「やったー!甘いやつ!ラムも食べて食べて。朝食に出るの珍しいから。追加はないけど。糖分はとっーても美味しいから」 


 ささっと、ムスは苺のジャムのサンドイッチに手を伸ばし、ラムの皿にも勝手にのせた。


「あ、ありがとう」


 少し驚いた声をだす。


「ラムちゃん、不安にならなくていいからねー。近づいたのは私が投げ飛ばすか粉砕するからねー」


 不安になっていると思い、ユリアは笑いながら頭を撫でる。


「その前に麻痺弾とか、氷弾撃ち込めばモンスターは止まるし。時止め弾もある。後はゆっくり叩くかラムや父さんに任せれば解決」


「ああ、闇魔法で葬れば終わりだ。外に出られないから探知魔法使いながらにはなるが」


「私はトドメ役なの?」


「あまり動かない方がいいからね。傷口が開かないように、もう一日様子をみよう。街の人達の中にもギルド所属者や戦闘向きな役職の人がいる。結界もあるから門を越える前に仕留めるだろう、武装は念のためだ。私達の家で駆り出されるとしたら、ユリアだとは思うからラムさんは楽にしてなさい。おそらく、怪我人がでた方が連絡が入る。私達の家は薬草のストックが必ずあると教会に伝えてある。足りなくなったら、補充も可能だと言ってあるからね」



ーーー「市民の皆様にお伝えします。門を乗り越えられる可能性があります。避難してください。繰り返す。避難してください」ーーーー



 サイレンからアナウンスに変わる。どうやら、事態は悪化したようだ。


「おや、越えられたかな。飛行タイプがいるのか」


「んー、羽音はしないけど。見てくる。どんなモンスターだろ。破れてたらやばいし、速く刺繍に戻りたいし」


「頼む」


 コーグは朝食の間、実はムスの肩でコロコロ寛いでいた。

 ラムに気づくとこちらを見ながら、ぴょんぴょん跳ねてアピールしている。

 ムスが玄関から外を見る。

 空に魔技師の技能の《見破り》を使うと街に張られている結界が一部壊れていた。どうやら、修復しようと魔法を使っている。

 その近くにトカゲのような姿に翼を持った黒い影を見つけた。ここからは遠く、よくは見えない。


「うわぁ。やば。あれ、ワイバーンかな」


「飛んでるねー」


 コーグは呑気に頷く。


「えー、加勢しないと結界壊れて街が壊れたらやだな。被害者もだしたくない。あそこには贔屓にしている店が」


(『アルス』がある。あそこの店を壊されたらお茶請けが。ティータイムが。困る)


「コーグ、戦闘するよ。あれを倒す。基本、やばくならない限り手を出さなくていいよ。1人になったり、危険になったら防御頼んでいい?」


「うん!コーグ、守る!後で、じゃがいもほしい!」


「母さんにこそっと言っておくよ。用意してくれると思う」


(戦闘後、ご褒美だといって母さん用意しているとは思うけど)


「わーい!コーグ、頑張る!」


 キリッとコーグはムスの頭の上に乗って周囲を警戒する。

 ムスはコーグの頭を撫でて急いで家に戻る。


「父さんー、やばいかもー!」


 声を出しながら玄関から居間に戻ってきた。


「結界がワイバーンかな?とにかく、壊されてて、やばそうな蜥蜴みたいなやつが飛んでるよ。頑張って修復してるけど、ブレスとんできたら街がやける」


 ムスの言葉から衝撃的な言葉が伝えられた。



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