敵は誰
ムスは部屋を出るとまっ先にペディロを探しに向かった。
ペディロは作業場にいると思ったため、作業場を訪れるとやはりそこにいた。
コーグはペディロの肩に大人しく座っている。
「父さん?」
「ムスか。追跡はしたが切られたな」
「え!?」
(父さん、こういう見つからない様に隠密行動できる魔法、得意なのに)
ムスは目を丸くする。
「まぁ、相手が切った訳じゃない。魔法が切断される場所に本人がいるみたいだ。物理的にではなく、四散した」
「ん?じゃあ、、魔法はどうやって飛ばしてたの?」
(魔法が切断される場所にいるなら、魔法は使えないのでは?)
「そうだな、、。力の強い者なら魔法が使えない場所でも抜け穴はある。封印の力が弱まった時に使えた可能性が高い。現に今は反撃してこない。今は使えないのだろう。強い魔法師なら、封印の綻びから魔法の力を通すことは可能だ。だが、針に糸を通すような作業で簡単ではなく、集中力がいる。何れにしろ、追跡は失敗。方角は王都から東。後は人が使うような魔法の感じはない。精霊魔法に近いが精霊魔法ではなく、禍々しい気配が強い。呪いをかける力と酷似している。呪を撒き散らすに近い魔法という印象だ」
「え。じゃあ、魔技師みたいな?」
「どうだろう。モンスターに魔技師の能力を使う者で、古い者か。心当たりはないがーー」
ペディロは言い淀み、考えている。
「うーん、とりあえず相手はわからないから、封印の力を強めて、認識阻害して、防御つけるよ。また、黒いモヤがでたら嫌だ」
ムスは作業机に置き去りにしたネックレスに近づく。
「ムス、危ないかもしれないよ!防御!」
コーグはムスの頭の上まで飛んで座り、ムスの散らばっている魔力を使い防御を張った。
「コーグ、ありがとう」
「どういたしまして!石を中にいれるの?」
「そう!」
「他には?」
「ネックレスには石をいれるだけだよ」
「わかったー」
ムスがピンセットでペリドットを掴み、念の為に状態を確認する。
込めた祝福は消えておらず、ペリドットも元気そうに光っている。問題はない。
ムスはネックレスの隙間から、ペリドットを入れる。
すると、
「わっ!」
ネックレスにいれたペリドットが輝きをまして、光り始める。
魔法の陣が浮かび上がり、描いてある陣の中で守護の陣が強度強化されたことを示し、魔法の陣は見えなくなった。
「やっぱり、守護の陣が弱っていたのかな、、」
光は悪いものではなく、祝福のマークに反応し、いい効果が発揮されたようだ。
「じー」
「コーグ、もう大丈夫だよ。ネックレス持っても大丈夫だし」
ムスはネックレスを持ち上げて、しっかり中にペリドットが入っているのを確認する。
「うん。でも、これラムに返すの?危険そう。よくないアクセサリーだよ!ポイしよ、ポイ!」
コーグはネックレスを見つめている。
防御魔法は解いたようだが、警戒している。
「誰か拾ったら困るよ。ラムに返さないとだめ。なんか、身代わりつけるから」
「身代わり?」
「攻撃されたら防御しつつ、幻影を見せて代わりに攻撃を受けてもらうやつ。それぐらいなら、できるし。で、問題があって」
「問題?」
「ラムは何の動物が好きか!?うさぎ、猫、犬、キツネ、狸、大穴で鷹、インコ、すずめ、白鳥、蛇、ドラゴン、ワイバーン、狼、リス、あーー、何が好きなんだろ?どうしよう、どうしよう」
(好きな動物を聞けばよかった。一般的にもふもふ系が好きなのか、小さい系がいいのか。好きな動物は千差万別である)
「それが問題なの?」
コーグはムスの頭の上で頭を傾げる。
「重大な問題だよ!好みの子じゃないとネックレスの隣につけてくれないかもしれない」
「つけないのは、よくない。コーグ、解決策ある!」
「え、どれがいいかわかるの!?」
「コーグの形をプレゼントする。ユリ母さん、可愛いっていうから間違いなし!問題解決!」
コーグはムスの頭の上で跳ねる。
「あーー、それは駄目かなぁ」
(精霊が見えてたら喜ぶかもしれないけど、精霊好きかわからないし)
「なんで!?」
コーグはムスの顔に張り付く。
「精霊好きかわかんないから。デネブラより、今はトニトとシルフが人気だよ。王子様と婚約者様のおつき精霊だから」
コーグを引き剥がして腕にのせる。
「ショック。コーグ、可愛いのにー」
コーグが肩を落としてしょんぼりする。
「俺はコーグ1択だけどね」
「ムス、大好きー!!」
コーグは元気を取り戻しムスにもふもふし始める。
ムスはコーグが可愛いので頭を撫でる。
「でも、どうしよう。父さん、ラムは何が好きだと思う?」
「ん?」
ペディロがムスの呼びかけに顔をあげる。
(これは、聞いてないな)
「ラムは何の動物が好きだと思う?魔工品でさ、身代わり造る予定なんだけど」
「ーー可愛ければ何でもいいと思うが」
「1番困る回答!」
「ーーなら、うさぎでいいだろう」
「投げやり感が」
「うさぎが可愛いだろう。うさぎだ。きっとうさぎが可愛い。花をもたせれば尚良し」
「謎のうさぎ推しされてる。じゃあ、うさぎにしよー。花束にして、可愛らしさをだすよ」
(うさぎにこだわられた)
「コーグも、コーグの色」
腕の中にいるコーグが震えだす。
「わかったから」
(花束の袋に模様をいれよう)
「わーい!ムス、作業するなら待ってるよ」
「じゃあ、コーグは俺と一緒な。材料とってくるよ」
ムスは2階にうさぎを取りに行く。




