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ティータイム



「ただいまー!!」


 ムスは自宅に戻ってきた。時刻は3時頃である。

 コーグは頭の上に乗っているが、ラムがいるため、声を出さずに大人しくしている。


「おかえり、ムス!お茶してるから、こっちにおいでー!」


 ユリアの声が1階の客間から聞こえる。


「はーい!」


 ムスはとりあえず、金庫がある仕事場へ行き、鞄ごと金庫へしまう。

 その後に手を洗ってから1階の客間へ向かう。


「おかえり、ムス」


 ペディロが椅子を引く。


「はい。どうぞ」 


「ただいまー。ありがとう、母さん、父さん。ーーで、なんでラムがここにいるの?」


 ムスが腰を下ろして、紅茶に口をつける。ラムの姿を確認すると慌てて紅茶を置く。


「私が連れてきたの!」


「母さん!怪我してるのに!もう、俺が上に運ぶよ。ラム、行くぞ」


(寝てないと治らない)


「嫌!ケーキも紅茶もある!食べるの!」


 ラムは想像以上に大きな声を発して、ムスの手から逃れようと身体を左にひねる。

 ラムの言う通り、皿にはショートケーキが半分。二杯目のアールグレイが残っていた。


「危ない!」


「ラムちゃん!」


「あ」


 ムスは逃げられると思っていなかった。しかも、椅子から転がり落ちるほど身体をひねるなど想定外。

 逃げた動作でラムが椅子から滑り落ちる。

 ムスが慌ててラムの右手を掴み、テーブルに引き寄せる。

 同時にユリアがラムの傷口を避けて腰を引き寄せる。

 ラムは何とか椅子に留まることができた。

 ユリアがラムを椅子に座り直させて、2人は大きく息を吐く。


「危なかったじゃない、ムス!いきなり手を掴むなんてだめよ!もう、いつも冷静なのに心配だと慌てるの治しなさいよ」


 ユリアが眉を吊り上げて怒っている。


「ごめんなさい。逃げられるとは思わなかったから。嫌なら連れて行かないから。傷、開いてないよね?大丈夫だよな?」


(あんなに嫌がられるとは思っていなかった。そんなにティータイム好きだとは)


 ムスは心配そうにラムをみる。


「落ちなかったから、大丈夫。ごめんなさい、つい、逃げてしまって。強制的に抱えられると思ったから、反応した」

  

 ラムは軽く頭を下げる。


「当然だ。魔法師は近づかれないように逃げるのが普通。ムスは戦闘について職業別の立ち回りをもっと勉強しろ。ラムさんは、全属性使える魔法師だそうだ。ムス、ギルドに釘をさしてくれ。ユリア、霧払いを頼む」


「まじか、、父さん、任して。上手くしとくよ」 


(強いとは思ったけど、全属性使えるって便利すぎるし、この若さでどれだけ勉強したのだろう)


「ええ!虫がつかない様にするわね」


 二人共、しっかり頷く。

 

「改めて。ムス、ありがとう。検問もギルドも任せてしまって。大丈夫だった?」


 ラムは改めてムスにぺこりと頭を下げる。


「検問はまぁ、怪我人で通した。身分証明書なかったけど、誰か保証すればいいだけだから。ギルドはうまくしといた。ただ、報酬を宝石一つにしたよ。情報だけでいい依頼にしたから、見れば破格な報酬だと理解できる。集まるのは早いと思う。宝石あるのわかってたから、入ってたやつ一つ手放すことになるけど、大丈夫だよね?」


 ラムは頷く。


「大丈夫。何かあるかもと思って持ってきたの。お金より価値がある物は少し持っていた方が便利なのは知ってたから」


(金勘定はしっかりしてるなぁ。世間知らずって訳じゃないか。よほど、妹が心配だったのか)


 内心は悟られないように頷く。


「よかった。なら、問題ないな。あ、赤いやつは最後まで売らないでもらっていい?」


「いいよ。でも、なんで?」


「自分がほしいから。いい色のガーネットだし、小さいけど絶対に映える。使わないなら、最後に相応のお金は払うから売ってくれ」


「そう。なら、あげる」


「え?いや、払うから」


(宝石貰うのは流石に)


 ムスは慌てて首を左右にふる。


「保証してくれたのでしょう?いくら怪我人でも普通はしないもの。それだけ、リスクある行動してくれたお礼。私、王都に入るのは最初から諦めてたから。そもそも、私が犯罪者だったら、保証責任でムスは牢屋行きだから足りないくらい。私、そういう価値はわかるよ?お金より重いものは世の中にあるの。私は犯罪者じゃないし、むしろありがたいけど、リスク管理はした方がいい。家族もいるのだから。何があったら悲しむのは家族だよ」


 しっかりとした口調で告げるラムは、年齢よりずっと大人っぽい。


「ーー俺、軽く怒られているよね、、」 


 目を泳がせる。

 ムスは最近、ペディロから説教されたばかりである。


「理解できないなら、私がこれから一時間ほど解説をしようか?懇切丁寧に、な」

 

(飛び火した!!)


 ムスは慌てて、父親をみながら震えだす。


「父さん…!も、もう、わかったから。しないから、二度と!怖いって、本当に怖いから!目が笑ってない!俺は怒られてます!わかりました!」


「本当に、わかったのか?」


「理解したから!睨まないで!こわい!」


 ムスは理解していると主張する。

 ペディロは疑うようにムスをみる。

 コーグはムスの頭の上からじーっとペディロを見ている。

 数分攻防し、


「わかったならいい。ムス、宝石はラムさんの気持ちとして貰いなさい」


「は、はい」


 ペディロが先に折れた。

 ムスは安堵から深い息を吐く。


「ムス、バッグから抜いていいよ。金庫にしまってあるときいたから。全部は駄目ね、入っているやつは覚えてるからね。抜いたらお金請求するから」


「他のは抜かないから」


 苦笑して、頷く。


「あとね、レモネードのレシピちょうだい」


 ラムは真剣な目で訴える。


「?いいけど、何も特別なことはしてないよ。普通のお店から聞いたほうが美味しいと思うが?」


(なんで自分のを?)


 お店の方が美味しいのではないか、という意味でムスはラムに提案する。


「レモネードのレシピをちょうだい」


 ラムは手を使って身を乗り出す。

 ムスは驚く。


「レモネードのレシピ」


「危ないって。あげる。あげるから、座って」


(何でそんなに必死なのか)


 ムスは疑問に思いつつ、焦りながら頷く。


「貰える発言したね?」


「ラムちゃん、聞いたから座りなさい。危ないわよ」


 ユリアがラムの腰を掴んで椅子に座らせる。


「レモネードのレシピ!」


 目を輝かせて、嬉しそうに頷く。

 ラムは言われた通り、大人しく椅子に座っている。

 

(そんなに嬉しいのか、、)


 明らかに嬉しそうな様子をみて、呆然としている。


「ムス、随分、レモネード気に入ったみたいなの。作るとこもみせてあげたら?」


「別に構わないけど、本当に特別なことしてないよ。栄養が高いと思って作っただけだから」


 コーグがムスの頭の上で少し嬉しそうに震えている。

 どうやら、コーグも飲みたいようだ。

 大人しいコーグにご褒美としてクッキーをあげようとムスは思った。


「本当!?」


「うん。好きにして」


「よかったわね、ラムちゃん」


「はい」



ーーーー後は今後のことや、世間話をしてティータイムはお開きとなったーーー



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