説明2
ーームスはとりあえず会った経緯と、連れてきた理由、検問の説明をしたーー
「ムス?」
ペディロは目は笑ってない穏やかな声で発声する。
「は、はい」
(ひぃぃ。怖い怖い怖い怖い怖い)
ムスはペディロの目が笑ってないことに気づき、怒っていることがわかってしまったため、怯えながら頷く。
「保証人になるなと私は言ったはずだが、覚えてないか?」
「覚えてます!ですが、あの怪我で、吹っ飛ぶ魔法がかかってたら、門番のところでお世話は無理だと思いました!速く手当てしないと弱る一方だとも思いました!ほっとけませんでした!ラーズも協力してくれました!」
「全てよくない。保証人なることがよくない。理由は聞いてない。ムス?」
より一層、笑みを深めたペディロ。目は笑ってないのでムスは相当怒っているとわかっていた。
「うわぁぁぁ!父さん、怖い!圧力!悪人には見えなかったからぁぁあ!だから、許して!わかってる。牢屋行きになる前にちゃんと返すから!返す!大丈夫!」
ムスはコーグを腕で抱き込み、震えだす。
前に怒った時は黒い玉に閉じ込められ、逃げれなくしてから永遠と説教が始まるという地獄を味わった。反省するまで、または自分がぐったりするまで出れず、永遠に暗い中、声だけが聞こえるホラーである。
せめて、コーグは一緒にいないと耐えられない。
ムスはコーグを離さないように自分の胸に引き寄せる。
「ペディロ、ムスをあまりいじめないで!何かあったら、ポイするから!大丈夫だよ!牢屋に入れられたら、コーグ怒る。ボーンする」
コーグはムスの腕の中で主張する。
「捕まる前に保証人になるのがまずいと言っている。コーグは甘やかしすぎだ。精霊に頼りすぎるのはよくない」
「ぶー!!ムスは大事だもん!ムスは友達だもん!贔屓するもん!ペディロの意地悪〜」
コーグはムスの腕の中で膨れている。
「意地悪で結構。ムス、よくないことなのはわかっていただろう。そういうときは置いてきなさいと小さい頃から言っているだろう。精霊ならまだしも、人は拾ってこない。しかも、身元がわからないものを拾わない。せめてギルド保証にしなさい。見捨てられないなら、私かユリアを呼びなさい。入る前に、だ。でなければ、1人の責任では手出しができない」
「ギルド保証?加入してないとだめじゃないの?」
「わからない場合は見張りも兼ねて一時的に預かる申請をし、今いるギルドのメンバーで保証する。救助した人の意識がない場合の特別処置だ。相手のギルド所属証明書が本来はいるが、激しい戦闘で紛失したとごまかす。再発行するとギルドランクは最初からになるが、中に入ることはできる。間違えた場合は人違いとし、再検問。問題はない」
「微妙に嘘つかなきゃいけないじゃん。確かに入れるけど」
「合理的に入れるだろう?別にギルド所属者でなくてもいい。怪我人の運び方として優秀だ。次からはこれを使いなさい。見捨てられないのは性格からわかっている。この辺が落し所だ。嘘は人助けにはいいだろう?もちろん、悪人だった場合は突き出せばいいだけだ。それが嫌なら拾ってこない。いいな、拾ってこない、だ」
「ひぃぃ。怖いよ、父さん。無理に作り笑顔を作らないで」
にっこり笑いながら、「拾ってこない」の言葉に力を入れているペディロはアンバランスで、不気味に感じる。
「ムス?わかったか?保証人にはならない。危険だから、今後はギルド保証でいれること。わかったか?」
「はい」
「復唱しなさい。さっきの言葉を」
「うぐっ!?」
(やべー。正確に覚えてない)
ムスは冷や汗をかいている。
「ムス?」
「は、はい。今後はギルド保証で怪我人を入れること。保証人にはなりません」
「失格」
「うぇ!?」
「保証人にはならない。危険だから、今後はギルド保証でいれること、だ。危険だから、が抜けている。危険だから、が。重要な理由だ。危険だと思っていないようだ。ムス、黒い玉で1時間聞いて覚えなさい」
「嫌だーーー!!!黒い玉は嫌だーーーー!ホラー嫌だーーー!!1時間、念仏のように言うで許してください!父さん、やめてー!!」
ブルブル震えだすムス。
コーグが頭の上に黒い玉を出して
「ボーン!!」
と叫ぶと同時にペディロに投げる。
「コーグ?」
ペディロはコーグの攻撃を掴んで消滅させた。
「ムス、怖がってる!反省してる。閉じ込めるだめ!シャーーー!!」
コーグは口の中にある牙をだして、ペディロに威嚇する。
「コーグ」
ペディロが魔力を込めると、コーグが邪魔するために黒い玉を投げる。
ペディロは魔力を込めるのをやめ、黒い玉を消滅させる。
「シャーーーー!!だめーーー!」
ペディロはもう1度魔力を込めるが、コーグが邪魔をする。結果は同じ。
「コーグ」
「シャーーーー!」
コーグは威嚇している。
「はぁ。仕方ない。ムス、1時間、復唱しながら、書きなさい。私は隣で聞いている。絶対に今後はギルド保証にすること。理解したか?」
「怖いよう、黒い玉の中、嫌だよ、、。ホラー嫌い、、。コーグ離したらだめ」
ペディロは軽くムスの肩を叩く。
「ムス?ーーもう、黒い玉に入れないことにしたから、現実に戻ってきなさい」
「!?ほ、本当に!?」
泣きそうな顔に明るさが戻る。
「ああ。1時間書き取りしなさい。保証人にはならない。危険だから、ギルド保証にすると。紙は取ってくるから待ってなさい」
「はい!」
頷いたムスをみたペディロは紙を取りに一時的に席を外す。
「よかった。本当によかった」
「ムス、よかったね!」
にこにこと笑うコーグはさっきまで威嚇していたのが嘘のよう。
「うう、やっぱりコーグを抱きかかえててよかった。1人じゃないのは心強い」
ムスは先程のコーグとペディロの攻防は見ていたが、恐怖が強すぎてよく覚えていなかった。
「1人は寂しいからねー。ペディロは心配してるから、あまり心配させないよーに、書き取り真面目にしよ!」
「そうだね。父さん、心配してるだけだから。今回は全面的に俺が悪い。やっぱり、先に相談してから決めればよかった」
(滅多に怒らない父が怒る時は大抵、心配から。よく、家族が一番大事だというから)
服の内ポケットの中に隠して、身につけている黒曜石のネックレスをみる。
中に入っているのは自分の身を護る魔工品。これは父が魔力と技術、お金を惜しみ無く注ぎ込んだ何回も使える魔工品。普通に売れば何百万もするそれは、自分のためだけに父親が造ったもの。
普通に戦闘ができる自分にわざわざ持たせるぐらいに父親は心配性で。万が一があってはならない。備えはいくらあってもいい。そういう、人だ。
(うう、もう、心配させないようにしよう。本当に怖いし、申し訳ないし)
ムスは決意を新たにする。
ペディロが戻ってくると、1時間みっちり書き取りをし、ぐったりしたムスが出来上がっていた。




