大失敗
「ただいまー!母さんーーー!!怪我人!薬草!」
茶色いシックな木の扉を開けて、靴を脱ぎ、玄関を慌ただしくかけていく。
ムスは自宅に返ってきた。
「コーグ、戻ったよ〜!ただいまー。ムス、一緒にお弁当食べよ〜!」
コーグはムスの頭で跳ねている。
「手当てしてからなー」
ムスがラムを抱えたまま洗面所へと行く。
「大変!ムス、見せなさい」
居間の方から足音が聞こえる。
ムスは洗面所についた。
洗面所は浴槽に繋がる扉がある小さな部屋である。
中は歯磨きをする水場、洗濯する洗濯機、バスタオルにタオルや洗剤が置かれている。
洗面所は水捌けがいいように木のタイルにオイルを染み込ませた壁と床。
温かみがある茶色ぽい部屋だ。
「早かったわね。応急処置だけしてきたの。意識は?」
洗面所に花柄のワンピースをきたユリアは腕まくりをして怪我をしている子を観察する。
「貧血で寝ちゃった。顔色が悪いし、暫くは家で面倒をみようかと」
「わかったわ。普通に怪我に効く薬草を持ってくるわ。下にバスタオル、これをしいて。止血用だからいくら汚してもいいわ。包帯もいるわね」
ユリアは慌てた様子で道具を取りに戻る。
「お願い。俺、水と細剣外すから」
ムスはまず、桶に水を汲む。聖水の瓶も自分のショルダーバッグから取り出す。
自分の手を綺麗に洗ってから、細剣を外し、ショルダーバッグも脇に無くさないように別けておく。
次にゆっくり相手の身体を起こして、下に特に怪我をしていそうな場所の下にバスタオルを重ねてしく。
近くのタオル置き場からタオルを1枚取って、聖水、薬草、包帯を側に置き準備する。
「コーグひま!なにかないの?」
ふるふる肩で震えている。
「あー、じゃあ、包帯を巻くときに端を抑えててもらっていいか?1人だと大変だし」
「やる!」
「持ってきたわ!ムス、刻んだ薬草に包帯。後は着替えね」
「流石、母さん!あ、身体浮かせてて。傷口、しっかりみないと」
ムスは躊躇いなく上着を脱がせ、下着も脱がせる。傷をみると、大きく切られた傷口がぱっくりと開いていた。
「服、洗濯しとくわねー」
ユリアは洗濯籠に服をいれる。
「酷い、、この怪我で。まず、洗わなきゃ」
桶にいれた水をタオルに含ませて優しく傷口周りを拭き取る。
タオルは血まみれになった。
「他に怪我してる箇所がないといいけど」
ムスは親切心だった。
他に怪我をしてないかと、薬草もたくさんあるし、全部手当てしようと思ったのだ。
上半身をみたら、胸に膨らみが。
(え。あ。え)
ムスは頭が真っ白に、いや、理解したくなかったのだ。
「ちょー!?わ、あ、か、母さん、後、お願い!ご、ごめんなさい!」
ムスは顔を真っ赤にしてユリアにタオルを押し付ける。
慌ててムスは部屋を出る。
ーーーー1階の客間にてーーーー
真ん中に落ち着いた暖炉。上にパイプが繋がっていて、けむりを外にだす仕組みだ。家の上には煙突があるようだて推測できる。
中央にはテーブルがあり、椅子が4つ。ゆっくり寛げるように、赤茶色の落ち着いた色で壁も椅子もテーブルも統一されている。中が見える棚には、可愛らしい柄のティーポットにティーカップが何個かおいてある。さらに、スプーンやフォークもあることから、ティー食器がある棚だとわかる。
その部屋の椅子に座ってテーブルに突っ伏すムスがいた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
(責任とらなきゃ。宝石もあったし、綺麗な子だったし、良いとこの子だよ。俺どうしよう)
呪詛のようにごめんなさいを言い続けるムス。
「ムスー、大丈夫だよー。許してくれるよー。後はユリ母さんが何とかしてくれるよー」
コーグはあまりにも落ち込んでいるムスを励まそうとムスの肩で跳ねながら言う。
「見た事実は消えない見た事実は消えない見た事実は消えない。どうしようどうしようどうしよう。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ーーコーグ、何があった?」
たまたま客間に寄ったペディロが、完全におかしいムスを見てコーグに声をかける。
「怪我した子の手当てをしようとしたら、急にムスが出ていってから落ち込んでる。ペディロ、何言ってもムスが復活しないの。どうしよう」
コーグは縮こまり、悲しそうな声を出す。
「怪我人?ユリアに聞いてくる。少し待っていてくれないか」
「うん」
ペディロが出ていってから、数分経つとすぐに戻ってきた。
「ムス」
「父さん!俺、責任とらなきゃいけない」
ペディロが声をかけるとガバッとムスは起き上がる。
「ムス?」
「裸みたら、責任とってお嫁さんにしないといけない。手当てしようとしたけど、事実はかわらない」
「落ち着け、ムス。それよりいい方法がある」
「本当に!?」
(え。責任の取り方が他にも!?)
「見なかったことにしなさい。相手は意識がない。手当てはユリアがしたことにしよう。やましい事は何もしてないだろう?」
「精霊に誓ってしてません」
「なら、見なかったことにしなさい。その方がお互いにいい」
「でも、俺、嘘苦手だよ、、?」
(隠すの苦手なんだよなぁ。相手が賢いと絶対にバレる)
「バレたら土下座して謝りなさい。そして、許してもらうまで頑張るしかないだろう。頑張ってしらないふりをしなさい」
「は、はい。わかりました」
ムスはペディロの言葉に頷く。
「その様子をみる限り、ご飯も食べてないのだろう?食べてからゆっくりどういう経緯で連れてきたか話してもらうから」
「あ、、。わかりました」
(すっかりご飯を忘れていた)
「ムス、元気?ご飯一緒に食べよ!」
コーグが肩で跳びはねる。
「うん。ごめんな、コーグ。はい、弁当」
ムスはショルダーバッグからコーグのお弁当を渡す。
そして、自分の弁当も取り出す。
「「いただきます」」
2人で挨拶をしてから弁当を食べ始めるのだった。




