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大魔法


 大魔法を詠唱している身体から淡い白い光が溢れて、地面に落ちる血から炎があがる。


(火の大魔法って、完全に灰にするつもりだ。で、防御魔法使ってないから足止めしてくれってことらしい)


 ゴブリンも流石に異様な気配に気づいてこちらに向かって走り出すが、近づく前に《闇の精霊》(影縫い)で足止めする。

 ムスは任された以上、手を抜くことはしない。

 ゴブリンが近づく前に足止め。そして、足を狙い撃ちし、移動力を奪う。

 負傷したゴブリンを避けて脇から出てきたゴブリンも同じように足止め。先に進めないように1列に並んでいく。

 そうしているうちに3分ほど経過。

 すると、大魔法の詠唱が終わりかけていた。


「全て、総て、統べて。焔に抱かれ微睡を。障害を消し去れ《焔の大魔法》(フレイムクレイドル)」

 

 大魔法が完成した。

 白い光が相手の身体から弾けて周囲に散らばる。

 落ちている血から火があがり、今見えるゴブリン全ての足元から火が立ち昇る。


「ギャァァァァ!」


 空に続く火の柱。燃える火の柱が何本もあがる光景は、空が緋色に染まり、まるで夕焼けのように綺麗だった。

 ただ、奇麗な光景にありえない絶叫の悲鳴と、生臭い肉の焼ける腐臭がしなければ、だ。

 魔法に気づいたゴブリンが逃げようとするが、逃げ道等無く。そもそも、ムスが移動力を奪っているため走れなかった。

 行く手を囲うように、次々と火の柱があがり閉じ込められる。

 視認されているゴブリンは残らず炭になって、地面に崩れていく。

 全てのゴブリンが炭になると火の柱は煙のように消えていき、炭は風に攫われて何処かに流れていく。

 地面には草木の先が少しだけ焼け焦げた痕が残るのみ。

 いつも通りの平原に辺は戻った。

 

「《焔の大魔法》(ヘレイムクレイドル)か。一面焼け野原にならないなんて、、、信じられない。制御うますぎ」


「綺麗だったね〜」


 コーグは無邪気に肩に転がっている。

 ムスはゴブリンが全滅し、草木が無事なことに呆然としていた。

 そして隣に視線を向けると、相手は膝をついて座り込んでいた。


「おい!大丈夫か?まってろ。止血するから、動くなよ」


「だ、大丈夫。疲れただけだから、自分でする」


「いやいや。大魔法ぶっ放して、疲れたで済むはずないだろ!魔力も残ってないだろうし、怪我もしてたらなおさら体力使うだろ!現に座り込んでるじゃないか。じっとしてろよ、手当ならできるし」


(しまった。大魔法を使ったら疲れるし、怪我までしてたのに。無理矢理にでも先に手当てして、止血だけしとくべきだった)


 ムスがハンカチを奪って、血が染み出している場所の上から、止血しようとするが、服が破れてないことに気づく。


(あれ?ゴブリンにやられた訳じゃない?)


 驚いてムスは手を止める。


「本当に大丈夫だから」


「ん?これ、傷口でも開いたのか?ずいぶん、酷いな」


 血が流れている量が多いことに、ムスは傷口を抑えている腕を掴み、慌てて上げさせた瞬間


「危ない!は、離れて、すぐ!」


 悲鳴をあげるように、相手が叫び声をあげた。

 相手は腕を振り回すが、力はある程度あるので、腕を離さなかった。

 顔は真っ青で、ただならない様子。


「え?守護魔法でもかかってたりするのか?」


 ムスは技能である〈見破り〉を使ったが、特に攻撃的な感じはなく、魔法の陣みたいなやつも微かに見えるが悪意はない。そもそも魔法なのかも怪しい。


「ーーーなんにも感じないけど。うーん、魔法かかってる、かかってないぐらいは俺はわかるはずだけど。敵意みたいなやつも感じないし」


 止血が先、服を傷口までたくし上げて素早くハンカチで止血。

 それから、疑問をなげかける。


「な、なんとも、ないの、、?」


「?なんともないが」


(ものすごく驚かれてる)


 目を丸くした相手は驚愕の表情。

 ムスは全く相手が驚いている理由がわからない。


「え、、。信じられない。家族以外の男性が触ると吹っ飛ぶのに」


「え!?なに、その物騒な魔法。こわっ」


(攻撃的魔法じゃないか!えーーー、〈見破り〉の技能弱まったか!?)


 慌ててムスは腕を離す。


「いたい、、」


 手が地面に叩きつけられて痛そうに顔をしかめる。


「あ。 ごめん。 えーっと、歩ける?門まで送ってくけど。そうだ、名前は?俺はムス」


「名前、、ラム。歩けるーー」


 立ち上がろうとした身体が急に傾いた。


「あ、危ない!」


 ムスが慌てて支えた。

 なんとか、地面に当たる前に間に合った。


「あ、ありがとう。ごめん」


「ーー顔、真っ青。抱えてくから、もたれかかってていい」


(やっぱり、近くで見ると顔色が悪い)


「え?」


「貧血だろ、それ」


「くらくらはするけど、まだ大丈夫だと思う」


「くらくらする時点でだめ。あまり長くいると他のモンスターが寄ってくるかもしれないから移動する。意識だけ持ってくれたらいいから」


 ムスは盛大にため息をはく。

 傷口に触れないように足に右腕を回して、横抱きにする。


(軽い。え。男性だよね?細いし、大丈夫か?食べてないのか?) 


 思ったより体重が軽く、驚きはしたが口には出さなかった。


「ーーねむい」


 暫く王都に向かって歩いていると相手からそんな声が聞こえた。


「眠いって、、寝るなよ。門前で質問に答えないと王都に入れないから」


「ーーうん」


(体温も下がってる。やっぱり、かなり体力消耗して疲れたのか。でも、眠られたら困る)


 もう、ラムは瞼が完全に落ちて寝そうだった。


「あのなぁ、、。もう少し危機感もたないと、危険だぞ?人攫いだったらどうする」


 呆れながら、あまり揺らさないように気を使って足早に王都に向かう。

 意識が持ってくれることを願って。


「ーー?そんな人じゃない。精霊がついてるもの。邪な心を持つものには寄り付かない」


「!?いま、何を言ってーー」


「コーグ、見えるの!?」


 コーグがラムに跳び乗った。ビョンビョン跳ねているが、返事はない。


「ラム、精霊が見えるのか?頼む、起きてくれーー!」


 軽く揺さぶるが反応がない。寝てしまったようだ。


「うわぁー。落ちちゃったか。どうしよう」


(精霊が見えるなら話が変わってくる。王家に保護が可能になるからだ。見える人は貴重なのだが、確証がないから無理か)


「起こす?」


 コーグは闇魔法を発動させようと、ボヨンと黒い球体を出した。


「わーーー!なにするつもりだ、コーグ!怪我人だぞ!だめだ、攻撃魔法を引っ込めろ!」


 ムスは慌ててコーグを捕まえる。


「弱いやつだけど。うん、怪我人だから確かに止めたほうがいいかなー」


 コーグは魔法を破棄した。

 その様子にムスはホッとした。


「うーん、とりあえず怪我人だから無理矢理にでもいれて貰えないかなぁ」


(何か考えておこう)


 ムスはとりあえず王都に向かうことにした。



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