王都へ向かう
ーーー[バラーヤイヤー]から王都に向かう途中ーーー
「うーん、やっぱりざわざわしている気がするなぁ」
ムスは暗い森の中を道なりに進んでいく。舗装された道ではなく、木の合間を移動している。
一日目は問題なく野営もできた。だが、二日目になり、王都に近づくにつれ、なぜかモンスターが殺気だっている。
モンスターの視線が今にも襲いかかりそうなほどに痛い。
「ムス、やっぱり変?」
頭の上に乗って周囲をキョロキョロ見渡しているコーグ。
「すっごい気が立ってる。うーん、何かいそう。ゴブリンが群でいるし、見つかりたくはない」
神経質そうな視線と殺気がすごい。
ムスは1人で配達もするため、モンスターの縄張りや視線を感じる技能が高い。まして、いつも通る道。変な雰囲気が流れているのを敏感に感じとった。
「ムスー、お弁当」
「いやいや、こんな神経質な場所で食べれるか。草原まで出たらな。お弁当楽しみなのわかるけど」
「うん!」
頭の上でふるふると揺れている。
コーグは嬉しそうだった。
「今日、うようよいるよー」
「あー、コーグもわかる?なんか、左の森の奥はいないけど、でっかい何かの視線が遠くから感じる。あれが、悪さして」
「あ。魔法、だれか使った」
「うえ!?やば、こっちも警戒されたか」
「ゴブリン一撃。光魔法。すっごい魔力の塊。初級魔法連射してる」
「!?」
(視線が一気に自分から外れた。奥の方にいるやつだけ俺をみてる)
自分を警戒していたこの辺にいるゴブリンが一斉に攻撃した者に向かった。
それは異常。群れの意識が低いゴブリン。自分が魔法の発動を感じないため距離が離れているにも関わらず、全員がそっちを向くのはおかしい。
「ふむ。風魔法で離脱したよ。群でいるって気づいて引いた。判断早い。森外まで。いい魔法使いだよ。で、ゴブリン全員そっちに向かってる」
「ーーー本当だ。何で」
コーグの言う通りゴブリンが真っ直ぐ森外にむかっていく。
(数体倒しただけで死体を無視して進むなんて)
ゴブリンは死体も食べる。同族であっても。だから、無視はしない。普段なら。
木々がざわざわと揺れている。いつも穏やかな森が変に暗い感じがした。
(これは、明らかにおかしい。速く王都に入った方がいい)
ムスがゴブリンの探知から外れたと完全に理解すると走り出す。
「わぁ!ムス、どうしたの?」
コーグは急に走り出した衝撃で、ムスの頭から転がり落ちて肩に乗っかる。
「ランチしようとしたけど、コーグ予定変更して速く王都に帰ろう。おかしすぎる。ウロウロしたら、変なのに会いそうだ」
「う、うん。いいけど、急がなくても」
「いいや、急ごう」
(風にのって、甘ったるい紅茶みたいな血の匂いがする。多分、怪我した)
「血の匂いがする。怪我してるならゴブリンが酔ってくる。明らかに様子がおかしいし、やばすぎる」
「うーん。どこからかなぁ。さっきの子かなぁ。攻撃受けた魔力の感じはなかったけど」
コーグが耳をぴょこぴょこ動かすが、わからないようだ。
「でも、血の匂いは間違いないからそっちに向かうよ。襲われる」
「コーグ、ゴブリン以外が来るか見張ってる!他に来たらやばそう!」
「ああ、頼む!」
ムスは舗装された道に出て、できる限り速く走る。
ゴブリンは血に酔っているから、ムスの方は見向きもしない。
見向きもしないゴブリンは攻撃しても無駄なので、そのまま強引に進むことにした2人だった。




