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閑話 ギース3




ーーーー数日後の朝ーーーー



「アズール、すまないが馬車を手配、、いや、魔法師で手が空いている者はいるか?」


 ギースは再びアズールがいる執務室に来ていた。


「は?どうしたとはその荷物は何だ?」

 

 アズールはギースの方を見て驚く。

 ギースは20cmの立方体8個、ラッピングされた30cm位の平たい箱が数個、他に10cmの箱が数個。


「ムスがおまけもどうぞと」


(まさか、アクセサリーを取りに行ったら、兄に御息女と御子息がいましたよね?お土産ですと言われれば断れなかった。しかも出来栄えが素晴らしかった)


「ーーーおまけの方が多すぎないか?」


「思ったが、急な品なのでお金はしっかり払ったさ。で、魔法師は?」


「いたが忙しいはずだ。これでも使え」


 アズールが白い魔力球をギースに渡す。


「《空間魔法》(テレポート)が入っているから、これで帰れ。帰りは妹さんに魔力込めて貰え。帰ってきたら返せ」


「ああ。ありがとう。帰るからよろしくな」


 ギースは魔力球を使用する。使用の仕方は様々あるが、今回は魔力球に魔力を流す。

 すると魔力球から魔力が現れ、白い光りがギースと山のような荷物を包み込む。

 光が収まるとその場にはギースと、山のような荷物は消えていた。



ーーーーーー山のような雪の中ーーーーーー



白色のレンガが積み上げられ、高い城壁に。屋根まで全て白色。窓は複数あるが、どれも分厚く簡単には割れそうにない。門はごつごつとげとげした、黒光りする盗賊よけがされた素晴らしいもの。極めて大きさが、横が1軒家を4軒並べたぐらいで、高さは後ろの崖(200メートルはある)まであり、素晴らしく大きい。下から見上げると城または要塞といった言葉が相応しい。

 これが、我が家。ガーディソード侯爵の屋敷。

 大きい扉を開ける。

 扉を開けると赤い絨毯が目に入り、立派な装飾がされた廊下が広がる。ちょうど掃除をしているメイドがおり、声をかける。


「すまない、予定より早くなってしまったが、兄はいるだろうか?」

 

「ギース様!!お帰りなさいませ!直ぐに知らせてまいります」


 メイドは丁寧に礼をし、慌てて駆けていく。


「ああ、荷物もあるから運んで貰えると助かる」


 走り去るメイドに叫ぶ。



ーーーーー数十分後ーーーーー


「ギース兄!お帰りなさい!」


「ただいま、ラム!ああ、また、綺麗になって。私の妹は世界一可愛い」


 ラムと呼ばれた少女は手入れのされた輝く金髪に、氷のように透き通ったアイスブルーの瞳。目鼻立ち整った顔立ちは可愛いより綺麗と言われる。刺繍が施された白いドレスはふんわりと膨らみ美しい。

 彼女はガーディソード侯爵家の長女、ラム・ガーディソードである。


「ギース兄、冗談言わないで」


「冗談じゃない」


(大真面目に言っているのに何故納得しないのか)

 

 不満そうにラムを見る。


「お帰りなさいませ、ギース様」


 執事服を着込んだ初老の男性が頭を下げる。


「レオン、ただいま」


「お荷物はどちらに?」


 レオンは頭をあげ、微笑む。


「ああ、兄さん達のお土産は緑色のリボンがされた物。ピンクはアルマ、黄色はラム。リボンがないのは居間に。兄さんは?」


「ガーディソード侯爵は戦へ。夕方には戻る予定です。ガーディソード侯爵夫人は子供達と一緒に実家におられます。本格的な冬の前に最後にお顔を見せにいっております。アルマ様はいらっしゃいますが、今はラム様が代わりに家のことを仕切っております」


「モンスターが来たからダース兄は討伐。姉様の迎えが行けなくなって、キレてた。姉様達が戻るのは明日かな」


「うわぁー」


 ギースは表情を曇らせる。


(兄さんはキレると骨も残らない程燃やし尽くすから、、。見たくない。姉さんと子供達が一番大好きだからなぁ、今日は機嫌が悪そう)


「ギース様」


 レオンから黄色のリボンがかかった包を渡される。


「ありがとう。ラム、お土産だ。開けてみてくれ。どうだ?これは気に入るか?」


 ギースはラムにお土産を手渡す。


「ありがとう。ーーーうさぎ?綺麗、、、」


 ラムが箱のリボンを丁寧に取り、中身を開け、感嘆の言葉をもらす。

 品物は柔らかそうな和紙で作られた花の形をしたペーパーの中に佇んで輝きを放っていた。

 一つは白色の細かいムーンストーンでできた兎。

 一つはシトリンの濃淡のみで作られた月。

 一番大きな髪飾りは夜を宝石達の濃淡で表現した品。

 どれも小さな宝石の集合体で作られた品は目を見張る程綺麗で、手間がかけられたとわかる。


「ああ。綺麗だろう?持ってみるといい。驚くぞ」


(できた品物の確認に行けば、急いだとは思えない細やかな品が出来上がっていた。信じられなかったから、無理もない)


「?ーー軽い!」


「軽いだろう?これなら、着けてくれるか?」


「うん!軽いなら問題ないもの。ありがとう」


 にこっと笑うラムはそれはそれは美しく。他の男性がいたら目を奪われそうなぐらいだった。


「次も同じ場所に頼むか、、」


(ラムの好みに合わせた品物になっているのが末恐ろしい。彼はエスパーなのか、流行をおさえた結果なのか)


「オーダーなの?」


 ラムが首を傾げる。


「ああ。モチーフ、宝石も色だけ指定したのみだが」


「ーー趣味が良い職人だね」


「ラム、もう一つ選んで欲しい。居間に行こう」

 

「さっきの箱?中身は何?」


「ぬいぐるみだ。サービスだと言われたから皆に一つずつか。余りは兄さんに任せる」  

 

 2人並んで赤い絨毯の上を歩き、扉を開ける。

 中央に見事なシャンデリアがキラキラと輝き、大きな木のテーブルがつやつやと輝き、ふわふわなクッションが詰められた椅子が並ぶ居間。壁はクリーム色で温かみがある。


「品物が違うから開けて確認してくれ」


(ラムは恐らくルミニスだろう)


 ギースが促すとラムが手前の箱を開ける。すると


「ーー!!可愛い!!」


 中を取り出すと胴体はひまわり、可愛らしい羊の毛のようなもこもこしている髪の女の子。表情は笑っていて、さらに可愛さがました光の精霊、ルミニスのぬいぐるみ。

 頭はふわふわ。ひまわり部分は少し硬い。ぷにぷにした手は細かい細部まで表現されている。全体的に手触りがよく、いつまでも触れるようにこだわり抜かれた品。


「ギース兄!私はこれがいい!」


 ラムは両手でルミニスのぬいぐるみを持ち、頬ずりする。


「他の箱は見ないのか?」


(喜び方が髪飾りより嬉しそう。髪飾りよりぬいぐるみなのか、、)


「見るけど貰うのはこれがいい。他も精霊?」


「ああ」


(大体は被りなくわかれるだろう) 


「置いておくか。アルマも来るだろう」


 ギースはぬいぐるみを持とうとしたら、


「ギース兄!力強いからぬいぐるみ潰れちゃう!私が置く」


 ラムが素早くギースの開けた箱からぬいぐるみを攫い、机に置く。

 次からギースが箱を取り、ラムが開けてぬいぐるみを取っていく。


「皆、可愛い」


 ラムが頬を上気させながら、並べたぬいぐるみ達を見る。

 黒いつぶらな目に蝙蝠のような形をした、手触りふわふわな闇の精霊デネブラ。

 正方形の形に丸い黒い目、雪の結晶を周囲に出していて、手触りは硬めというとこまで再現された、氷の精霊グラキ。

 黒い丸い球体に目がついたぼやぼやした光の塊、曖昧な色合いを上手く表現かれた雷の精霊トニト。

 身体ほど長い髪に幼く可愛らしい女の子の姿を水で作り出した形をした、ふよふよした手触りの水の精霊ウィンディーネ。

 手に槍を手に持ち、トカゲのような身体をもち揺らめく炎が表現された火の精霊、サラマンダー。

 鍬を持った小さいおじいさんの形をしたノームという土の精霊。

 旋風を起こしながら、その中心に幼子の形が薄っすら見える、さらさらとした手触りの気まぐれと有名な風の精霊、シルフ。


「ギース兄、素敵なプレゼントありがとう」


 ラムがルミニスを抱きしめてにこにこと笑う。まるで、美しい花畑が周囲にあるように可愛らしく美しく可憐だった。


「喜んで貰えて何より」


 ギースは眩い妹の笑顔を噛み締めながら、頭を撫でる。

 願わくば何時迄も平和で妹達が幸せそうに笑う時を護りたいと強く思ったのだった。




 後日、ダースがぬいぐるみの出来栄えを見て感心し、ムスにぬいぐるみ製作依頼を出すのは別の話。


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