表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひみつ

作者: 大川雅樹

「おばあちゃん、こんにちは。」

「あら、いらっしゃい、あやちゃん。」

 あやちゃんは、いつものようにおばあちゃんの家に上がると、ランドセルを置きました。

「学校はどうだった?」

「毎日楽しいよ。」

 あやちゃんは、ハンカチで汗をぬぐいながら答えました。

「おばあちゃんこそ、毎日一人でつまんないでしょ。」

「そうねえ、子供たちが出てってからは、さみしい時もあるわねえ。だから、あやちゃんが来てくれると、とてもうれしいのよ。」

「あやもおばあちゃんといると楽しいよ。」

「今日はおまんじゅうがあるの、食べるでしょ。」

「うん。」

 あやちゃんは、おまんじゅうをほおばりながら言いました。

「ママには、ここに来てる事はひみつだよ。ママはいつもうるさいの。知らない人には、ついてっちゃだめ。知らない人からは、物をもらっちゃだめ。寄り道しちゃだめって。」

「そうねえ、あやちゃんに最初に会った時も、孫みたいに思って声をかけちゃったんだものねえ。」

「だから、ママがお仕事から帰って来るまでには、家にいないとねえ。」

「ねえ、あやちゃん。」

「なあに?」

 おばあちゃんはお茶をすすりながら言いました。

「おばあちゃんも、ひみつを話してあげようか?」

「なになに、ひみつって?」

「この辺には、まだたぬきが住んでるのは知ってる?」

「知ってる、見た事あるもん。」

「昔からの言い伝えがあってね、子供たちが巣立ってしまったたぬきが、さみしさのあまり人間に化けて、人間の子供におやつをあげるって話よ。」

「たぬきが化けるの?」

「そうよ。だからもしかしたら、私はたぬきかもしれないわよ。」

「平気だもん、あや、たぬき好きだもん。でも、おばあちゃんがたぬきって事は、ひみつにしとくね。」

「ふふふ、あやちゃんといると本当に楽しいわ。」

 それから二人は、しばらくおしゃべりをしました。

「あっ、もうそろそろ帰らないとママが帰って来ちゃう。」

「気をつけて帰るのよ、あやちゃん。」

「おまんじゅうをもう一個もらっていい?」

「いいわよ、でもママに見つかちゃうんじゃない?」

「食べながら帰るからいいの。」

「じゃあ、また寄ってね、あやちゃん。」

「うん、それじゃあね、バイバイ。」

 あやちゃんを送り出したおばあちゃんが部屋に戻ると、あやちゃんのハンカチが置いてありました。

「あら、忘れ物。」

 おばあちゃんは、すぐに家を飛び出しました。しかし、通りには人の姿が見えません。

「今出たばかりなのにおかしいわねえ。」

 おばあちゃんは辺りをキョロキョロ見渡しました。すると、裏山に続く細い道を一匹の子だぬきが歩いて行くのが目に止まりました。

「あら、小さな子だぬきだこと。」

 子だぬきが急に振り返りました。その口はおまんじゅうをくわえていました。

 おばあちゃんは、びっくりしましたが、すぐに笑ってしまいました。

「ふふふ、まさかねえ。」

 子だぬきは、何度も振り返りました。

 おばあちゃんは、子だぬきが裏山へ消えるまで見送りました。

                               (了)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ