24話 最悪な事実
終末機。
それは世界の機能であり、知性体にとっての災害である。
曰く、それは魔神によって産み落とされた。曰く、それはかつて魔神の側近であった。曰く、それは神の代行者である。曰く、それは世界にとって必要な存在である。
・・・・・・・曰く、それに敗北することは、世界を失うと同義である。
終末機というものは五機の存在を指す言葉だ。そしてそれは記録上、六百年周期で二機ずつ、世界に出現する。一回目はおよそ界歴七五〇年、二回目は一四〇〇年、三回目は二〇五〇年、そして四回目は俺のときの周期である二七〇〇年。そのすべてにおいて撃退した過去があり、今回も二機すべて倒したはずだった。
俺のときに来たのは、終末機『崩壊』ネロと、『欲望』メイだ。空間すら破壊し尽くす『崩壊』の権能と、未知の権能、記録のない『欲望』の権能。十全に戦力を整え、策を講じ、当然に勝利すると疑わなかった。
それなのに・・・・・・・終末機が、生きている、と。
聞き間違え、エルの冗談、そんなはずはない。自分の感覚を疑わない俺にとって、その疑いはあり得ない。だが、その事実も疑わずにはいられない。いや、疑いたくなる事実だ。
どうして。負けた?俺が当然に勝てると編成した部隊が。そんなことが、あるのか?
逃げられた?『欲望』が逃げに向いている権能だったのか。いや、逃げられる可能性も考慮して編成していたはず。
「・・・・・・い!レイ!レイカ!」
「っ!す、すまん」
呼びかけられていることに気づく。いや、返事をしていないことに気づくが正しい。
「いえ、無理もないです。考えていたようですが、考えるまでもなく。終末機を相手にした魔王幹部五名は、敗北しました」
そうだ。事実は全てエルが知っている。
「・・・・・・・なぜ、負けたかは、分かるか」
「いえ。レイが思いつかないのなら、見当も。戦いが終わった後の戦場には、終末機の痕跡はなく、ただ仲間たちの死体しか残されていませんでした」
「・・・・・・・・・」
痕跡なし、か。魔力の痕跡すらないのなら、俺の予想は当たっていたと考えるべき。『欲望』の権能の詳細。なら、なおさら負けた理由が分からない。
「・・・・・・・レイ、何か思いつきましたか?」
「・・・・・・・別に、考えていなかったわけじゃない。『欲望』の権能。恐らくは、欲したものを奪う権能」
記録になくとも、『欲望』というワードで連想できる。欲望の先には解消がある。そう考えれば、奪うという答えに辿り着くのは容易い。
「奪う権能。なるほど、痕跡が薄かったのは、」
「奪ったもので戦っていたから、だろうな」
終末機がそれだけで脅威な自分の神性の魔力を使わなかったのは解せないが、そういうことになる。将棋の駒のように、相手から引き、自分に足す。劣勢を覆すに十分な力。
そう、結果的には誰かが魔力を奪われたから負けた。じゃあなぜ奪われた。
その方法までは分からなくとも、奪われる可能性が高いと、しっかり伝えて戦いに行かせた。そうならないように編成をして、厳選した五名に行かせた。そう易々とミスを犯す連中じゃない。
「・・・・・・・レイ。それは今考えても分かりませんよ。なぜ負けたかなんて、奴と戦ってみない限りは」
「・・・・・・・俺が、『崩壊』を倒したんだぞ。俺よりも万全に行かせたんだぞ。さらには、俺の残りの魔力まで、供給したんだぞ!」
「レイが剣聖に対抗しなかった理由は、そういう事ですか」
二機の終末機は、同時に相手にした。観測が途切れる前に、別々の場所に分断して。
『崩壊』の権能は崩壊。物質にとどまらず、空間までもを破壊し尽くすその権能の特性ゆえに、俺一人で相手をし、ギリギリだったが消滅させた。
その後、残りの魔力を『欲望』を相手にしている魔王幹部の一人に供給した。難しい遠隔魔力供給だ。もちろん奪われないように画策もした。
その後すぐに剣聖が俺に襲撃を仕掛けてきて、戦って生じる被害を盾に封印で手を打って今に至るわけだが・・・・・・・。
これは、俺のミスか・・・・・・・。終末機に勝利することを、疑わなかった、俺の。俺があのとき逃げていれば、対応できたのか。それが、最善だったのか。
「レイ、落ち着いてください」
「落ち、着いてる。大丈夫だ」
「大丈夫じゃないでしょう。後悔はしないでください。レイは悪くない。悪いのは負けた彼ら達です」
そうかもしれない。ただ、部下が負けた責任は俺にある。それに俺は・・・・・・・。
「・・・・・・・いや、俺も、だ。俺が眠ったのは、誰のためでもなく、」
「そうだとしても、悪くないし、後悔するところじゃありませんよ。今この世界が、間違っているとでも?」
「・・・・・・・」
「私はそうは思いません。なにがどうあれ、この今の平和を作ったのは、紛れもなくレイです」
「・・・・・・・俺、が」
淀んでいた目で、エルに視線を向ける。その俺を映す灰の瞳が、俺に思い出させる。俺の好きな、綺麗な瞳で、それを見ていると安心する。そんなどうでもいいことを、大事な情報の端に、確かに。
「ええ、レイが。終末機を倒し、そのために尽力し、戦争を終わらせるために自分が封印され、幹部を止めるために宝物の全てを剣聖に譲り、その恩義で人間に魔族を認めさせ、時間はかかったかもしれませんが、今確かに平和がある。それは全て、レイが動いた結果です」
「俺が動いた結果、か。確かに、そうかもな」
「はい。それに、事は単純です。難しく考えることじゃない」
「単純・・・・・・・」
「終末機『欲望』を倒してしまえば、万事解決です!」
そうだ。なかった問題が一つ増えただけ。だが、高すぎるハードルであることは間違いない。
簡単に言ってられることじゃない。でも、その迷いのない言葉は、言わないよりは余程いい。
「・・・・・・・まさか、エルに慰められるとは」
「私も、そんな機会があるとは思ってませんでしたよ。そんなに及び腰なレイは見たことないですね」
「ま、色々弱ってるからな。ここ百年、終末機は動きを見せてないのか?」
「はい。それらしい被害も、なにも」
戦闘後の痕跡を消したところを見るに、元々潜伏する予定だったようだ。終末機『崩壊』は好戦的な印象だったが、そうばかりじゃないらしい。
「じゃ、とりあえずは、居場所を見つけるってことで」
「・・・・・・・良かった、いつものレイだ」
「いつもなら思い立った瞬間に行動してるんだがな」
今の俺にそこまでの力はない。
時間がないのは確かだが、急いでも自分の首を絞めるだけだ。ゆっくりと状況を整えて、万全の状態で行かなければ勝てない。それでも勝てるか分からないのだから。
でもきっと大丈夫だ。エルがいれば、大丈夫だと思える。
「・・・・・・・本当に、また会えて良かった」
・・・・・・・そうか。エルからすればいつ俺が目覚めるかなんて分からない。自分が生きているのかすらも。
俺からしたら、思ったより早い目覚めだったのは確かだが、エルと再会できる頃には目覚めると分かっていた。エルには、心配かけたな。
「ああ。これからもよろしく頼む」
「いえ、こちらの台詞です。また、よろしくお願いしますね!」
これで、旅の仲間が一人増えた。また、賑やかになりそうだな。
「そういえば、メグさんは?」
「メグなら、ほら向こう」
いつの間にか左側に移動していた。エルには、俺の身体で見えない位置だ。
「あ、ほんとだ、ってすごっ!なんですかあれ!?」
「城だな。俺も密かに驚いてた」
長々と話している割にメグが首出してこないと思っていたら、黙々と砂で城を作っていた。凄い完成度だ。手作業であそこまで出来るとは、器用だな。
エルとメグがどのくらいで打ち解けられるか少し心配だが、シャルロットとのことを見るに、大丈夫だろうと思いながら、メグの元へと足を進めた。
長く話しているうちに日は傾いて。
夕方には海から撤収して、宿を一部屋取った。金銭的に余裕はあるが、一部屋でいいらしい。安全面を考えても、そっちの方がいいとのこと。
その後宿で少し休んだら、もう外は暗くなった。
「さて、そろそろ食事行きましょう、レイ」
「いや、すまん、今日は遠慮しとく」
「へ?」
素っ頓狂な声を上げるエル。少ししておきたいことがある。
「メグのこと頼んでいいか?」
「それはいいですけど。一人で大丈夫ですか?」
「過保護すぎるだろ。問題ない。メグが嫌なら、まあ行くが」
出会って間もない二人だ。大事なようでもなし、気まずくなりそうなら俺もついて行く。
「え・・・・・・・えっと」
「昔のレイのこと、教えますよ、メグさん」
「え?・・・・・・・」
「レイがいないほうが、話せますよ」
小声でメグをたぶらかす。俺にもバッチリ聞こえているんだが。
そしてどう見てもたぶらかされてるメグ。
「・・・・・・・うん」
「と、言う事で、夕ご飯は私たちで行きます。少し残念ですが」
「ああ、じゃあ頼んだ」
俺の意を汲んでエルが説得してくれた。いったい俺のどんな話をされるのかは分からないが、まあそれは許容するとしよう。
そういうことで、メグたちとは宿の前で別れて、俺は一人で人気のない方に向かう。
暗い路地を通って、数分。開けたところに出る。
周りに人はいない。ここなら大丈夫そうだ。
俺がしたかったのは、少しだけ感じた体の変化。その確認だ。
俺を満身創痍せしめた、魔術。俺の固有魔術。その名は『黒蝋』。
黒い実体の魔力を自在に操作して、あらゆるものを造形する。存在するものをイメージし、それによって力を増幅させる魔術。
魔力適正が足らずああなったわけだが、あの後に少し変化があったように、僅かに思った。すなわち、魔力適正の回復。
僅か、だが、少しくらいなら使えるかもしれない。
普段なら魔力の節約でこんなことはしないが、エルと合流できたなら、今出来ることはしておきたい。後々のことを考えても。
「・・・・・・・少し、少し」
したことのない調整を手元で行う。
これは出力を下げているわけではない。実際、出力は下がることになるが、その本質はまるで違う。
出力を下げるのは魔力消費を抑えるということ。だが、俺がしなければならないのは魔力適正値を下げること。いわば魔術のランク下げだ。
通常はそんなことは出来ない。自分の魔力適正を上回った魔術を使えるものがいないのだから。それは、出来ないことを検証することも出来ないということ。
つまりは、その調整が出来ることを証明されていないだけで、出来ないと決まったわけじゃない。
規格の調整。そのイメージを、集中して・・・・・・・。
「・・・・・・・・・んっ!」
前に出した手のひらから、黒いエネルギーを発生させる。炎とは違うようで、不思議に揺らめくそれこそが、俺の黒蝋。
「・・・・・・・ッ!?」
膝が落ちる。いきなり耳鳴りが鳴り、視界が曲がる。
失敗か。自分の身体が動かしずらい。汗も異常なほど滲み出てきた。
いきなり成功するとは思っていなかったが、ここまでの異常が出るとは。血は・・・・・・・出ていない。
地面に尻をついて、座り込む。少し休まないと、再開できそうにない。
「くっそ・・・・・・・」
異常が出たからといって、この程度で諦めてもいられない。
今の俺にとっては、これが最善だ。魔力適正が少しだけ回復することは分かったが、それが出来る状況じゃない。何度も大怪我をして、回復してっていう時間はない。また魔力適正が回復する保証もないし、今実用的に使えるのはこの方法での運用だけだ。
この程度であんなにもきついのなら、これを無理に使う必要はないかもしれない。現状実践で使えるとは思えない。
でも、可能性はある。使える可能性。今の剣で戦うスタイルだけじゃ、俺の技術じゃ足りなくなる。そのときのために必要な力。それが見えてるのに、妥協できるはずがない。
「少しでも・・・・・・・」
そこから数時間、黒蝋を出してはヘタレるのを、何度も何度も繰り返していた。
※
レイと別れて、メグさんと二人で夜空の街を歩く。
まだまだ人通りはあって、街灯や家から漏れる光でまだまだ明るい。
何度も人とすれ違いながらテキトーに店を見て、考える。
何がいいのだろうか。私もここに来てからまだ二日目だ。この街に詳しくないし、子供が喜びそうな店なんて思いつかない。
「・・・・・・・メグさん、何か見つけましたか?」
しまいには子供に聞いてしまった。聞いても困らせちゃうだけだろうに。
でも、意外とメグさんの反応はゆったりと落ち着いたもので、少し止まって周囲を見渡して、そしてゆっくり指を指した。
その先には活気の声。
「え、ここ、ですか?」
「・・・・・・・レイカと来たことある、よ?」
冒険者ギルドだ。仕事終わりの冒険者たちが騒いで、外にまで活気が届いている。
レイ子供連れて入ったことあるのか。流石に非常識なんじゃないだろうか。
でも、メグさんに聞いてしまったわけで、ここで却下もしずらい。まあ、端の比較的静かな場所に座れば大丈夫か。話し声も届かなそうだし。
「じゃ、ここにしましょうか」
そこに決めて中に入る。騒がしい店内だが、メグさんはあまり気圧されていない様子で、大丈夫そうだ。
そのまま周りに人のいない四人席に並んで座る。メグさんは声が小さいから、こっちの方が話しやすいと思う。メグさんも嫌な顔はしなかったので、そのまま。
テキトーにメニューを選んで、それを大人しく待つ。メグさんもいるので、今日はお酒はやめておいた。
数分待って、食事が届く。メニューは春鳥の唐揚げと野菜炒め。お米に生鮮野菜盛りにお魚の塩焼き。それと飲み物二人分。少し頼み過ぎてしまったかも。でもまあ、私は問題なく食べきれる。
食事が届いたタイミングで、無言だったメグさんに話しかけてみる。
「メグさん。食事の合間でいいのですが、これまでのメグさんの旅を、私に聞かせてくれませんか?」
「・・・・・・・旅?それは・・・・・・・レイカに、聞いたんじゃ」
「はい、まあ聞いたんですが、レイが話すのは記録みたいなもので。それに、旅にはそれぞれの感じ方がある。同じ旅でも、きっと違う印象があります」
レイは良くも悪くも効率的で無駄がない。物事の事実や出来事を話すだけで、それは旅の土産話じゃない。感情とか、情景とか、そういうことは話さないし、きっと色々省いている。
「それぞれの、感じ方・・・・・・・」
「はい。それに、旅の思い出は話す本人が楽しいですから」
経験を振り返ることは大事な事で、笑顔になれることだ。辛い経験もあるし、悲しい経験もあると思う。でも、そうあるべきなのは確かだ。
「どうでしょうか?」
「・・・・・・・うん」
そこからゆっくり、食べながらメグさん自身の話を聞かせてくれた。つたない感じで話し慣れてない感じもあったけど、レイのよりはよっぽどよく出来た土産話だ。
メグさんが感じたこと、思ったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、楽しかったこと。子供の感性ならではの、カラフルな話はとても面白くて、とても感情が揺さぶられた。
いろんなことを経験したのだと分かる。子供には大きすぎる感情が渦巻いたことも。でもメグさんは、普通の子供よりも大人っぽくて、よく出来ている子だ。ちゃんと全部受け止めて、向き合っている偉い子だ。
話し終える頃に、私はメグさんの頭を撫でていた。
「・・・・・・・エル?」
「あ、すみません、なんとなく。ありがとうございます、話してくれて」
「うん・・・・・・・楽しかった?」
「はい!レイとメグさんがどれだけ頑張って来たのか、伝わりました」
楽しい話ばかりじゃなかった。メグさんの不安とか、レイが大怪我したときとか。でも、それも含めてメグさんは話してくれた。暗い顔せず、最後には笑ってくれた。
ならこれは、いい旅だったのだと思う。頑張って、いい旅にしたのだと思う。だからこれは、楽しい話だ。
「あの、ね・・・・・・・レイカは、あんまり、食べるの好きじゃないのかな?」
「これまでも、あんまり食べてなかったですか?」
「・・・・・・・なんか、ね。私が食べてるから、食べてる気がするの」
レイなら確かに、無駄は省きそうだ。魔族、特に上級魔族にとって食事はあってもなくてもいいものだ。もちろん定期的には必要だけど、人間の十分の一でも取れば十分。
一人だったら確実に食べてないかも。緊急時なのだから、当然と言えば当然だ。
「確かにそうかもしれません。でも、嫌いではないですよ。レイは食通です」
「しょく、つう?」
「食事にこだわるってことです。美味しいものが好きってことです。そうだ、レイの昔のことを話す約束でしたね」
メグさんを釣った材料のことを思い出す。レイの過去のこと、メグさんは知りたいのだろうか。
いや、見ればわかる。知りたそうにこっちを見ているから。こういうときは分かりやすい。
「レイとは、学園が違かったんですけど、あ、学園って分かりますか?子供が集まって歴史やら何やらを学ぶところですけど」
「分かる、よ」
分かるらしい。メグさんの年齢ではまだ言ったことはないだろうけど、母親とかから聞かされていたのかも。
「学園は別々でした。まあ身分が違いましたからね、当然です」
あのときは、私はただの魔族だった。上級魔族であることは変わらなかったが、追放され、魔術の使えない私は落ちこぼれだった。
「でも、レイは私に会いに来てくれたんです。一人ぼっちの私に、有名で忙しい彼がこっそり、私の秘密の訓練場に来てくれるようになったんです。優しいですよね」
最初に出会ったときは心底驚いた。私が剣を磨いているときに、偶然のように私に近づいて。
「そのとき、毎回食べ物を持ってくるんです。最初のときも。確か、パンでしたね。甘い」
シャーレたっぷりの甘いパンを三つ持って、私に一つ分けてくれた。多分三つなのは、私に意図して会いに来たことをごまかすため、だったのかな。
「ですから、美味しいもの大好きだと思いますよ、レイは」
「・・・・・・・そうなんだ」
「はい!私は、メグさんがいてくれて良かったと思ってます。きっかけがないと動かないところありますから、レイは」
なによりも効率と必要性を重視してしまうレイにはゆとりがない。たとえ好きでも、きっと何も口にしなかった。したとしても、食事じゃなく、補給をしていたと思う。
だから、食事が必要なメグさんが、レイに食事をさせる機会を与えてくれた。きっとそれは、少なからずレイにいい影響を与えたんじゃないかと思う。
「じゃあ何か・・・・・・・持ってってあげたい」
「いいですね!そうしましょう!」
そういう発想はなかった。きっと私がそれをしても、煙たがられると無意識に思ってしまっていた。彼がしたがらないなら、しないでおこうと。
メグさんは、きっと構って欲しいんだ。子供として当たり前の行為で、彼女が出来なかったこと。
レイは向かないけど、親代わりなんだ。難しい子供と難しい親、色々大変そうだ。
「・・・・・・・エル。もっと・・・・・・・聞かせて?」
「はい!もちろんっ!」
多分、メグちゃんはただの女の子だ。綺麗な銀髪と透き通った瞳を持った、可愛い女の子だ。多分問題があるのはレイなんじゃないかと思う。子供の扱いは苦手そうだし。
きっとメグちゃんとは仲良くなれそうな気がする。いや、仲良くなりたい。レイカの情報を使って、だけど。
でも、だからこそ。いつまでも一緒に旅は出来ない。私とレイの行く先は、血生臭い道だろうから。
この子には笑顔でいて欲しい。平和に似合う無垢な顔を見て、私はそう願った。