16話 ピンクの魔女
「あ、おかえりなさい。ん?どうしてそんなに濡れてるので?」
「いえ、ちょっと川の方にいまして、お気になさらないでください」
結局メグとエレシアに濡らされて、びしょびしょの状態で昼を食べて、また出発する羽目になった。馬車を濡らすほどじゃなかったのは不幸中の幸いか。いや、普通に不幸しかないな。
だが、その後は何事もなく、予定も遅れることなく通常運行で馬車は進んだ。馬車の中も、エレシアがメグの相手をしてくれるお陰で、俺はほぼずっと本を読んで過ごせた。進みが遅いのは仕方なしだが。ちなみに内容の記憶はぼんやり。
朗報は、傷の治り具合だ。もう八割がた治って、アイテムボックスを普段通り起動できるくらいには、魔力に余裕が出来た。
もう一晩超えて、その日の昼。ようやく馬車はレクタに到着した。
「お疲れさまでした、お客さん」
「いえ、ありがとうございました」
「御者さん、ありがとうございました!馬車の旅、実に楽しかったです!」
「・・・・・・・ありがと、ございました」
馬車を降りて、ここまで運んでくれた御者に挨拶をする。エレシアは元気そうだな。メグも明るいような印象だ。まあかくいう俺も、行きよりは元気だが。
「いえ、恐縮です。お二人はよい旅を。エレシア様はお仕事頑張ってください!」
「はい、御者さんもお体に気を付けて!」
その言葉を最後に、馬車と別れた。ずっと座って気疲れしたが、どうにか次の街だ。
レクタの街も、エルドの街とさほど変わらない印象だが、家が密集しているように感じる。人の通りも負けず劣らずって感じだな。
「やっと着きましたね。どうです?レクタの街は」
「なんというか、あんま変わらないな」
「そうですね、確かに似たような風景ですよね、ここは」
行く先々に、違う街の風景が広がってるとか、そんな多文化的な世界じゃないだろうしな。初めに中世世界の街並みを見たときはそれなりに感動したが、もう見慣れた景色で、今更だ。
「レイカ、あれ」
「ん?あれは・・・・・・・ワイン、か?」
店頭でワイン売ってるだなんて、珍しいな。
「そうですね!この街レクタは、お酒の街なんですよ!」
「お酒、か」
「はい!レイカさんはお酒どうなんですか?」
「興味ないな」
昔からワインもビールも苦手だったな。高い酒も強い酒も。大事な席では出されるものだが、ほとんど手を付けなかった。
弱いわけではないが、単純に好きじゃなかっただけだ。
「そうなんですか。でも今度一度、一緒にお酒飲みましょう!」
「飲める歳なのかよ」
「私もう十七ですよ?」
確か、この世界では飲酒は十六から出来る。確かに可能だが、人間には毒だと思う。
「ま、名産なら、少しは嗜んでみるかな」
「そうしてください。・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
一時の沈黙。それが意味するのは別れ時。
「・・・・・・・寂しく、なりますね」
「俺は何とも」
「つれないですね」
俺からすればエレシアは鬱陶しいだけだ。メグの相手をしてくれたので、少しくらいは役に立ったが。
「でも、それなりにいい旅だったよ」
「それはよかったです!私も楽しかった。連れてきてくれて、ありがとうございました!」
「勝手についてきただけだろ」
言いくるめられて仕方なく、同行を許可しただけだ。
「それでも、感謝は言いたいんです!メグさんも、ありがとうございました」
「・・・・・・・ん、私も、楽しかった、よ」
エレシアには慣れたようで、メグも少し表情が柔らかい。あれだけ二人でチェス囲んでればな。
「次も、負けませんからね」
「・・・・・・・次は、勝つもん」
チェスの結果はエレシアが全勝したらしい。まあ歳の差を考えてもそれが普通だ。その割にはメグは頑張ったように思う。対局時間も長かった。
「次会うときを楽しみにしてます」
「・・・・・・・・・次」
エレシアは何気なく言ったのだろうが、メグに対してその言葉は正しいのか。メグに次はあるのかどうか。親が見つかったときには、俺とも別れてしまうのだから。
「・・・・・・・ま、お互い生きてたらな」
「不吉なこと言わないでくださいよ」
不吉なことには変わりないが、冗談でも何でもない。エレシアはともかく、俺には何があるか分からないから。少なくとも、多くの難問にぶち当たることは間違いないわけだし。
「怪我の方は」
「問題ないよ。ずいぶんよくなったし、痛みも引いた」
「そうですか。でも、安静にしてくださいね」
「ああ。じゃあ」
「はい、またどこかで!」
「・・・・・・・うん」
そうして、俺とエレシアは別れを終えた。直感だが、またどこかで会える気がする。だから別れはシンプルに。その方が、別れのときはいいと聞く。
そして、俺とメグは街に繰り出していった。
酒の街レクタ。
周囲の店頭や窓枠の奥に様々なお酒が見える。流石はお酒の街といったところか。酒しかないと言うほどではないが、視界のどこかには入るくらいは見える。
とりあえずの方針は、宿で療養だ。魔力回復を待って右腕の再生の術式を起動させる。もちろん魔力偽装の結界も同時に張らないとバレるのでそれも。それをしないことには、安全を確保できない。
問題は再生の術式の方だ。生命力をそのまま魔力に変える術式なんて使ったのは初めてだ。再生の魔術に手を加えて術式を編み直さなければ使えない。編み直す作業に時間がかかるようなら最悪、腕をえぐり取ってから使わなきゃいけなくなる。
そうなったらさらに魔力を食う。それを踏まえると、かなり時間を取られてしまうことになる。
現状時間のなさは死活問題だ。ここでたまたま魔族最高の魔術師であるグランと会えればと思ってしまうが、そんな偶然あるわけもない。
「・・・・・・・どうしたものかな」
ため息とともに独り言が漏れる。人混みに紛れて、宿を探しながら進んでいく。メグはいつも通り、はぐれないようにローブを掴んでいる。
というか、ローブの中に納まって隠れている。この街じゃメグが喜びそうなものはなさそうだし、新しい街だし仕方ないか。
とりあえずは宿見つけるまでぶらぶらしてるか・・・・・・・・・。
「・・・・・・・メグ、歯噛んどけ」
「ん?え?」
メグを脇に抱えて家と家の隙間、路地に入る。
(ほんの少しの気配で。やっぱ只者じゃなさそう)
そんな思惑を知る由もなく、路地に入って足を早める。
視線の気配を察知して、路地を素早く駆ける。住居が密集しているだけあって、結構入り組んでいる。
明確な位置が察知できない。直接ではなく、魔術での監視か。誰に、何故見られてるかは知らないが、とりあえず振り切らなければ。
魔力反応のある場所を避けて、路地を曲がる。
ごちゃごちゃしてる細い道を、速度下げることなく走る。メグにも気を遣って、ローブも引っ掛けないように。
・・・・・・・振り切れない。ことごとく進行方向に魔力反応が発生していく。それを避けて進むしかない。
まるで誘導されているようだ。このまま進むのはまずいか。
「ひっ」
曲がった先の路地の様子を確認して、少し速度を下げる。跳躍して、壁キックで上へ。壁のでっぱりや足場になりそうなものを使って、屋根の上までジャンプする。
(たいした魔術なしであの身のこなし!やっぱ間違いじゃないかも)
そのまま屋根を進んで距離を取る。足音と気配を消して、出来る限り人の通りから見えずらい場所を進んでいく。
屋根は目立つ。誰かに目撃されるのは避けたい。
少し進んで、また路地に飛び降りる。しっかり着地してまた走る。
視線は感じない。魔力反応も。だが、撒けたわけではなさそうな感じだ。
魔力に敵意や害意とかは不思議と感じない。だからと言って受け入れるのは違う。それらがなくとも、自分にマイナスな事が起きないとは限らないから。
なんか、微妙にずれた嫌な予感がする。といっても、第六感的予感で今は走る以外選択肢がない。
・・・・・・・なんで来て早々でこんな目に合ってる。最近運が悪すぎる気がする。これは、メグの運の悪さだと思う。俺は運良い方だったし。
「・・・・・・・なっ」
急ブレーキをかける。さっきまではただの路地だったのに、いきなり周囲全体に薄い魔力反応が。
とりあえず進路を変えないと。そう思って後ろに戻ろうとしたが、足が止まった。
背後にいきなり現れた、人の気配。いや、これは魔族か。なんにせよ、敵意は見せないほうがいいか。
「・・・・・・・追ってきてたのはお前か」
「そう正解!というかこの状況で私以外いるわけないよね!」
明るい女性の声。その気配はなんだか特殊な感じだ。
そして何より、凄い魔力量だ。
「・・・・・・・何の用だ」
「用じゃなくて、気になったから私の家に招待したかったの!剣聖の家系の人と一緒にいたしー、なんというかもうオーラが只者じゃないーって感じだったしー、ああもちろん危害を加えようとか思ってないから!ただただ私の興味というかー、そして何よりっ!」
一人で全部言ってくれる。が、口を止めて俺の目線の前まで回ってきて、ぐいっと顔を近づけてくる。
「ごめんごめんまた一人で立ち話しちゃった!とりあえず入って入って!お茶しよ!ここは私の領域だから安全だから!色々話聞かせてよー、お茶とお菓子も出すよー」
ピンク色の長い髪が揺れてなびく。その頭の上に編まれた団子と同型同色の瞳は、光を反射してキラキラ光っている。
「ほらほら早く!」
「人の招待の仕方間違ってるだろ」
「まあいいでしょー、人を招待したことないからさ、仕方ないじゃん!」
人を招待したことなくても、これが非常識なことくらい分かるだろ。こいつには常識はないのか。
「俺ら親子に水差すなよ」
「変な事言うね、親子じゃないでしょ」
やはり俺が人間でないことはバレてるか。人間である偽装は施しているものの、今の魔力では相手によっては気付かれる。
「それより何この子!可愛い子ー!なでなでしたい!なでなで!」
「・・・・・・・いや」
「えー!まあいいや、早く早くー!」
忙しない、落ち着きがないな。
俺のローブを手に取って引っ張ってくる。抵抗しても無駄か。メグを地面に立たせて、大人しくついて行く。
「紅茶もコーヒーも、チョコもクッキーもあるよー!ケーキも作ればあるし、遊び道具もたくさんあるよー!」
「なんかテンション高くないか?」
「そう?でも嬉しいの!お客さんなんて初めてだから!嬉しい!」
強引に連れてきただけだろ。にしても、どうして俺を連れてきたかったのか。俺が分かったのなら、面倒ごとの塊みたいな感じなのに。
それに、お客さん初めてって、この性格でどうしてなのか。少なく見積もっても二十年は生きてるだろうに。
「・・・・・・・引っ張らなくていい。付いてくから」
「そう、でも、早くー!」
「引っ張んなくていいって、速度上げんな」
彼女の事情や、ついでにこの街の情報まで引き出せば、いい近道になるか。
彼女は今の俺より強いだろうが、でも逃げるだけなら多分いける。それ以前に、敵意を持つ気配はなく、好奇心と好意を強く感じる。それなりに安全そうだ。
彼女が領域といったこの空間も、上等な結界だし、利用できるものは利用させてもらうか。
少し進むと、路地は開けて不思議な空間になった。
緑色の空間。一面に芝生が敷かれて、町の一角とは思えない自然さ。その広い草原に真ん中に、木造の家がある。あれが、こいつの家か。
「ほら、あれだよ!私の家!中と外どっちにする?どっちでもお茶できるよ!どうするどうする?」
「騒がしい奴だな、全く。どっちでもいいよ」
「じゃあ外!天気もいいし、外でお話しよう!」
今日は雲のない晴天だ。日差しは強いが、過ごしやすい陽気だ。肌寒くもなく、暑過ぎずもない。
「紅茶でいい?コーヒーがいい?お茶菓子はどうする?甘いもの?それとも、」
「何でもいい、好きに頼む」
「りょーかい!でもでも、その子は?紅茶とコーヒー飲める?果物のジュースの方がいい?」
「テキトーに用意してくれていい」
「そかそか、じゃあ甘い紅茶用意するね!そこの椅子座って待ってて!」
「ああ」
そう言われて、白い椅子に腰掛ける。メグも隣に座らせる。
・・・・・・・疲れた。深く椅子に寄りかかる。
身体の痛みと疲労感が凄い。走力やジャンプ力も通常よりも落ちていたし、体調不良、運動不足の身体みたいなものか。
だが、頭の方は大丈夫だ。頭は回る、思考は巡る。普段通り、万全とは言い難いが、致命的に痛みに邪魔されることはない。
こと、話し合いの席で不備は見せない。やることやって、先に進む。
「おっまたせー!いやはや、待たせたね!」
「早えよ」
本当に早い。元々準備してたんじゃってくらい。
「魔法でちょちょいってやつだよ!君も知ってるでしょ?」
まあ確かに、以前は手よりも魔法を使うほうが多かったな。動かずとも物を取れるわけだから、もの凄く便利だった。
「このお菓子たちは保存してたやつだけど、まだ大丈夫だからね!遠慮なく食べてね、甘いし美味しいから!」
お皿に盛られたのはクッキー。文字通り、盛られている。乱雑に、山盛りだ。
一緒に持ってきたのはティーカップにティーポッド。中は紅茶のよう。
「もう少し綺麗にできんかな」
「たくさんあったほうがいいでしょ?たくさん!」
「ま、上品とは無縁だから別にいいが」
その山からクッキーを一つ取って口に運ぶ。
「・・・・・・・ん、普通だ。美味しい」
食感、味、ともに申し分ない。毒とか、料理苦手属性とか持ってたらと危惧したが、やはり必要なかった。
俺の反応を見てから、メグも手を伸ばした。そして小さく一口。
「・・・・・・・美味しい」
分かりずらいが、表情がほころんでいる。口に合ったようだ。
「でしょでしょ!美味しいでしょ!私の手作り美味しいでしょ!」
「分かってるから、見ればわかるよ。落ち着けって」
「ああごめんチョコ忘れてきたー」
「要らんから!とりあえず座ってくれ」
「そう?了解しました!座ります!」
すぐさま椅子を引いて、ザッと座った。口も挙動も騒がしい奴だな。
でも、割と素直なところがなんか不思議だ。
「とりあえず。俺はレイカだ。レイカ=アルス。こっちは、」
「・・・・・・・メグ、です」
俺の視線に気づいて、躊躇いながらも自分で挨拶した。クッキー貰ってるからかな。
「レイカにメグね!私はシャルロットっていうの!よろしくね、二人とも!」
「ああ。で、なんで俺を追ってきたんだ?」
即本題に入る。なんで俺は追われて、こんな疲れることになったのか。
・・・・・・・いや、なぜ目をつけられたのか。まずは、それを知らないといけない
「ん?それはさ、君剣聖の女の子と一緒にいたし、普通じゃないオーラとか、」
「それは聞いた。それだけじゃお前は動かない。この結界、偽装の術式が組み込まれてる。いや、正確には認識阻害の。だったら、そんな曖昧な理由じゃ、あんなことはしない。第三者に気づかれる可能性があるから」
確かに微小な魔力反応だったが、それでも痕跡が残る。この結界は町の一角の空白を無視させるほどの、かなり強力なものだし、そんな危険なことは出来ないはずだ。
「やっぱ凄いね!普通は分からないよ。えっとね、私が君とお話ししたかった理由はね、その腕」
「腕?これのことか?」
ローブをめくってやせ細った左腕を見せる。この腕がどうしたのか。
「そうそう!よくそんなことになっちゃったね!?どうしたらそんな状況になんの?」
「・・・・・・・命の危機が来たら、出来ることはなんだってするだろ」
「命の危機が来たの?どうして?誰かに命狙われてんの?自分より強かったの?負けたの?」
「・・・・・・・言わんといかんかね」
正直言えないんだが。言うとしても、話が長くなるから嫌なんだが。
「まあいいや。でもそれ凄く痛いよね?よく動けるね?大丈夫?倒れない?」
こいつ、うるさいな。騒がしいと思ったら質問三昧か。
なんかもう面倒くさいな。この質問を終わらす一言を思いついた。
「・・・・・・・大丈夫だ。というか、俺魔王だから」
「え?魔王?」
「魔王だ。質問の答えはそれでいいか?」
言わないほうが安全かもしれないが、こいつなら言っても問題はないはずだ。
「魔王なの!?凄い魔王だ!サイン!サインちょーだい!」
「サインはない。し、すぐ信じるのな」
「え?嘘なの!?」
「いや本当だが」
「本当じゃん!すご、魔王に会っちゃったよ!どうしてこんなとこ来たの?」
疑ってる様子はないし、恐怖の色すらない。まるで純粋な子供みたいだな。好奇心旺盛っぽいところも含めて。
「まあ色々あってな。話を戻すぞ。どうして腕壊れてる俺を追っかけたんだ?」
普通は腕壊れてる奴を追っかけ回したりしない。
「えっとね!痛そうだから治してあげようと思って」
「どうして?」
「ん?今言わなかった?痛そうだからって」
「いやそうじゃなくて。お前に何の得がある」
シャルロットにとってどういうメリットがあるのか。それとも俺に何かを求めてるのか。
「ん?私に、得?んー・・・・・・・」
初めて黙ったな。大人しく返答を待つ。
「よく分からないけど、困ってる人いたら助けるのって当然でしょ?」
「全くもって当然ではないな」
「そうなの?ん?・・・・・・・」
また黙った。なんか様子がおかしいような。
にしても、こんなやつこの世にいるのか。疑わしい発言だが、下心を持ってるようには見えない。俺の見抜く能力よりも、隠す能力の高い奴にも見えない。
「あーそういうこと。分かった!レイカ!」
「ん?」
椅子から立ち上がって俺に向きなおる。そして、俺を指差して、自慢げな顔で言った。
「君のその腕治してあげよう!しかーし!」
この後の展開、普通に読めた。
「この私と勝負して、勝てたらだけどね!」
なんでこいつ思い出した受け売りみたいに言うんだろうか。
「とりあえず指差すのやめろ」
シャルロットの指を折る。いや、折れる方向に、だ。
トレーに乗っている紅茶を手に取って、一息つく。こっちもちゃんと美味しい。
「・・・・・・・無理だ。今の俺の魔力じゃ」
「大丈夫だよ、それは。私も白兵戦で行くから!」
空中戦で戦えないから、普通にやったら勝てない。が、地上で白兵戦だったら戦えるかもしれない。
「・・・・・・・魔術に長けてるように思ったんだが」
「私はそうだけどね。それに・・・・・・・私も魔術は使う」
「?私もって」
なんか、雰囲気が変わった。し、目の色も蒼色に変わっている。こいつ、もしかして。
「お前誰だ?」
「・・・・・・・驚いた、すぐに分かっちゃうんだ。でも、私もシャルロットだよ。それは変わらない」
二重人格者。内側に二つ目の意識があって、それを自由に切り替えれるのか。記憶も共有している上に、内側で会話も出来るっぽい。初めて見たな。
「で、やるの?やらないの?少なくとも君には有益だと思うんだけど」
「・・・・・・・やるよ」
最後にクッキーを一枚つまんで、席を立った。
かなり後になりそうだった左腕の回復をしてもらえるのなら、やらない手はない。魔力も少しは回復して、使える分は少ないが使用できる。良いリハビリだと思えばいい。
現時点の魔術で負けていても、白兵戦の訓練に手を抜いた覚えはないからな。